• ニュース
  • 公開日:2017.02.01
  • 最終更新日: 2025.03.21
水と塩で発電するマグネシウム電池の製品化進む

    箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

    すっきりしたデザインで家庭にもなじむ「MIZUSION」

    化石燃料に頼らず、水と塩を使って発電するマグネシウム電池を使ったLEDライトなどの製品が続々発売され、注目されている。日立マクセルは水と塩だけで約80時間連続点灯するLEDランタンを1月25日から発売した。マグネシウム電池を使った製品は、古河電池や藤倉ゴム工業(東京・江東)でも開発され、2016年にそれぞれから非常用電池が一般販売されている。どちらも海水や雨水を入れるだけで、携帯電話などを充電できる。(箕輪 弥生)

    日立マクセルが発売したLEDランタン「MIZUSION(ミズシオン)」は、その名の通り、水と塩を入れるだけで発電し、80時間連続で明かりが灯る照明器具だ。ランタンに組み込まれたマグネシウム合金「パワーバー」が陰極、空気中の酸素が陽極、加える塩水が電解液の役割を果たし発電する。

    ライトはオンオフも可能で、パワーバーを交換すれば繰り返し使える。同社宮崎淳一郎 ・ライフソリューション事業本部 事業企画部部長は、「災害時でも身近にあるもので発電できる仕組みを作りたかった」と話す。使用状況にもよるが、10年間保管できるため、非常時の備蓄用やアウトドアでの利用も可能だ。実売予想価格は3000円(税別)前後と手頃な価格に抑えている。

    同電池を使った製品は古河電池が凸版印刷と共同開発した「MgBOX(マグボックス)」が先行する。16年2月からは一般家庭向けのスリムタイプも発売。水と塩1.5Lを入れることで200wh、携帯電話20台相当をフル充電できる。

    実勢価格は1.5万円前後。特徴は紙製品のため廃棄も容易なことだ。古河電池は東日本大震災でいわき市にあった事業所が被災した経験をふまえ、同電池の開発を進めた。

    藤倉ゴム工業も同様の電池「WattSatt(ワットサット)」を16年9月から販売している。280 whと容量が大きく、携帯電話ならフル充電で30台充電できる。標準価格は4万円。

    CO2を発生させず、身近な素材だけで発電するマグネシウム電池は、充電可能な2次電池の研究開発も進んでおり、次世代電池として今後も注目を集めそうだ。

    written by

    箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

    環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。

    東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。 著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。 http://gogreen.hippy.jp/

    News
    SB JAPAN 新着記事

    鉱業の生物多様性への影響を改善するためのガイダンス ICMMが公表
    2025.04.07
    • ワールドニュース
    • #生物多様性
    水素を活用する社会の実現へ ホンダが進める多元的で多面的な取り組みとは
    2025.04.03
    • ニュース
    • #リジェネレーション
    自社の歴史から学ぶ、人の感動起点の製品開発とサステナビリティ
    2025.04.02
    • ニュース
    • #リジェネレーション
    米国の現状から何を学ぶべきか、「リジェネレーション」の可能性とは――米SBの創設者とCEOが語る
    2025.04.01
    • ニュース
    • #リジェネレーション

    Ranking
    アクセスランキング

    • TOP
    • ニュース
    • 水と塩で発電するマグネシウム電池の製品化進む