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  • 公開日:2016.04.01
  • 最終更新日: 2025.03.21
みんな電力代表「自然エネルギーに切換えは当たり前」
    • 斎藤 円華

    4月1日、電力小売の全面自由化が実現した。数多くの「新電力」が電力小売に参入する中、自然エネルギー中心の電気を販売する事業者も登場。首都圏を対象地域とする「みんな電力」(東京・世田谷)もその一つだ。2月に企業向け電力の販売を開始し、一般家庭向け販売もこのほど申込み受付を始めた。同社の大石英司代表に話を聞いた。

    自然エネ比率高める

    ――みんな電力が販売する電気における自然エネルギーの割合は

    企業向け電力では生グリーン電力が15%、FIT(自然エネルギーの固定価格買取制度)で調達された電気が55%。その他の30%が常時バックアップ用だ。4月から一般家庭向けに販売する電力もほぼ同じになる。自然エネルギーの比率は今後も高めていきたい。

    ――電気料金は従来と比べて高くなるのか

    大手電力会社と比べて、企業向け販売分は若干安くなっている。一般家庭向け販売予定分でも従来とほぼ変わらない水準の見込みだ。

    ――自然エネルギー電力は十分確保できるのか

    電力を調達するには自社による発電、取引所からの調達、新電力どうしでの融通、大手電力からの購入など、色々方法がある。われわれが特に力を入れているのは市民電力からの購入だ。3・11以降、全国各地で自然エネルギー発電事業が発足している。一つひとつの発電規模は小さいが、それらからの購入量が集まれば一定の量を確保できる。

    みんな電力が販売する電気の大きな特徴は、「発電事業者の顔が見える」ということだ。例えば市民電力や自治体など、各地の事業者の中から選んで電気を買うことができる。

    また、われわれはメガソーラーやバイオマスといった自然エネルギーの電源開発も行っている。顧客が増えて電力需要が伸びれば、自社で電源を調達することも可能だ。このほか、自治体などからの買電も予定している。

    FITに依存しない電源

    ――政策リスクも含め、安定供給面で不安はないか

    FITをめぐっては諸論あるが、私自身は公平な制度だと思っている。太陽光発電は発電コストがかなり下がっており、既存電力と発電コストが同等となる「グリッド・パリティ」は近いのではないか。木質バイオマスにしても、発電効率が高まればFITは不要だ。

    自然エネルギーの安定供給で、本質的に重要なのは技術革新ではないだろうか。技術革新が進めば、制度に依拠しなくても自然エネルギー電力は成り立つ。

    例えば、自然エネルギーではないが、使用済みプラスチックや古着を油化処理してできた再生燃料は、輸入した石油との価格差は小さくなっている。捨てられているゴミの量は膨大だが、それが再生可能な資源となるわけだ。

    夜間電力の活用も大事になる。従来、夜間電力は原発とセットに扱われてきた面があるが、風力などの自然エネルギーも普及が進めば夜間の電気はさらに増える。夜間は電気料金が昼間の半分ほどなので、これらの潤沢にある電気を夜間に蓄電して日中に使えるようになれば、電気代は劇的に下がるはずだ。分散型の蓄電ネットワークができれば実現するだろう。

    つまり自然エネルギーの普及でやるべきは、一つはFITにとらわれないエコな電源の開発。そしてFITに依存しなくても成り立つように技術革新を進めて電力単価を下げることと言える。自然エネルギーの価格を下げる努力と普及する努力は同じものだ。

    未来への長期的投資

    ――ビジネスにおいて、価格以外で自然エネルギーを選ぶことのメリットは

    価格だけで電気を選ぶとすれば、短期的な選択肢は火力と原発しかない。しかしその延長には、有限な資源の奪い合いしかないだろう。

    CSRには当然、環境配慮も含まれている。しかし価格だけをモノサシに原発や火力発電から電気を調達するとすれば、それは持続可能性と相容れない。自然エネルギーを選ぶことは未来に対して長期的に投資し、地球環境の保全に関与するのと同じだ。

    このような形での顧客との関係構築は、株価上昇をはじめ、長期的に企業価値を高めることにつながる。また、電力の地産地消を通じて地域活性化も促されるだろう。自然エネルギーの普及は、自然エネルギーを選ぶ企業がどれだけ増えるかにもかかっている。だが企業が自然エネルギー電力を選ぶことは、以上の内容から当たり前と言えるのだ。

    written by

    斎藤 円華(さいとう・まどか)

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