脱炭素

Decarbonation

北村和也

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/02/26/800_1.jpg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Photo by <a href="https://unsplash.com/ja/@bweaver">Brad Weaver</a> on <a href="https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/gxmE_k37cxE">Unsplash</a></sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>このところ2022年の電力市場のまとめなどが国際機関やシンクタンクのリポートとして発表され、昨年世界を襲ったエネルギー高騰の実態が数字でも確認されることとなった。<br />
実は、昨年末から年明けにかけ、天然ガスや石炭などの化石燃料や電力の卸売市場の価格は、大きく下落している。おおよそ1年前のロシアのウクライナ侵略開始前のレベルまで下がり、高騰が緩んできているように見える。<br />
今回は、発表されたデータなどをもとに、2022年に世界のエネルギーに何が起きたのか、今年、そして今後どうなっていくのか、占ってみたい。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>緊張が緩む、日本と欧州の電力などエネルギー市場</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>まず、日本の電力のスポット市場などをまとめた、資源エネルギー庁の以下の資料を取りあげる。スポット価格(オレンジ)は、一昨年の2021年10月から急上昇して、ウクライナ侵略の始まった2月末にさらに跳ね上がっていることがわかる。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/02/26/01.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>LNGスポット価格と電力スポット市場の推移　(出典：資源エネルギー庁)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>その後、LNGの価格(青、赤)の動きに合わせるように電力スポット価格は推移し、秋以降には一転して下降を始める。そして、昨年末から年明けにかけて大きく下がった。これは、欧州でのエネルギー価格の変化とおおむね似た流れとなっている。資源エネルギー庁が認めているように、日本のエネルギー市場が欧州など世界の市場と“連動”している証左である。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>高騰の原因の再確認と日本と欧州での実態の差</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>今回のエネルギー費、特に世界的な電力価格の高騰の要因を確認しておこう。<br />
高騰の背景には、①脱炭素が急速に進行する中での化石燃料と再生可能エネルギー電源の置き換わり時期のギャップや、②コロナ禍で縮小した経済活動の急激な復活、③ロシアのウクライナ侵略による化石燃料の脱ロシア化、④温暖化の影響、などが主として考えられる。<br />
4つ目の温暖化は、昨年夏の熱波による水不足で水力発電が不振だったことではマイナスに働いているが、一方、暖冬が化石燃料の需要を減らし高騰を和らげている面もあり、より複雑化していることがわかる。</p>
<p>欧州での高騰と日本の高騰は、価格の上下の動きや時期はほぼ一致しているものの、その内容はかなり違っている。<br />
以下のグラフ(IEA「Electricity Market Report 2023」より)は、ピックアップした10の国の電力卸売市場の変化をIEA(世界エネルギー機関)がまとめたものである。濃い青色が2017年から2021年までの市場の平均値で、水色が2022年となっている。</p>
<p>いずれの国も大幅な値上がりを示しているが、国によってかなり違いがあることがわかる。左半分の5か国はすべて欧州で、激しい値上がり状況となっている。特に、イタリア、フランス、ドイツはおよそ4倍とすさまじい。前述した4つの要因などが絡み合って起きているが、欧州では、対ロシアや熱波などが特に影を落としている。また、2021年前半までは欧州の卸売市場が数円程度と非常に低かったことも、上昇率に影響を与えている。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/02/26/02.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>各国の電力卸売市場の変化、2017-2021と2022の比較 (出典：IEA)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>全体に低めである右側4か国は、水力や化石燃料などの資源保有国であり、エネルギー自給率が重要であることを示している。</p>
<p>さて、ほぼ中間に位置する日本は、欧州よりはましではあるが、それでも2倍の高騰である。過去の平均価格はどの国よりも高いものの、上昇率が低めで、結果として2022年の平均価格も欧州よりかなり低い。原因については、IEAの分析のように天然ガスの輸入契約が長期で固定されている割合が高く、スポット価格の一部の軽減につながっていることが挙げられる。<br />
このように、同じエネルギー費(ここでは電力価格)の高騰でも、各国それぞれの事情によって、中身はまだら模様である。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>今後の電力価格の見通しは</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>実態はともかく、多くの需要家が関心を寄せるのは、今後、電気代はどうなっていくのか、ということであろう。先日、参加した再生エネ拡大の道筋を議論する会議で、ある政府関係者が「神のみぞ知る」と漏らしたが、昨年の事象でさえ複雑な要素の絡み合いで生まれているように、市場の行く末を占うのは簡単ではない。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/02/26/03.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>各国の電力卸売市場の変化、2019のQ1＝100 (出典：IEA)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ここでは、ひとつのデータから想定してみる。<br />
上のグラフも同じIEAからの資料である。<br />
こちらは、各国の卸売市場の2019年第一四半期の平均価格を100とした変動を表している。昨年、特に第三四半期の欧州での上昇には驚かせられる。グラフの2023年以降の点線は先物市場の動向を示す。これによると、現時点はほぼ価格が下がりきった状態で、今年の冬にかけて再び上昇すると見られている。原発稼働の劇的な改善は難しそうなフランスや脱ロシアエネルギーにあがくドイツでは、昨年の異常な数字はないものの、この冬におよそ30円/kWh前後まで戻るという数字を示している。</p>
<p>つまり、天然ガスなどエネルギー価格の不確実性は当面続くという見立てである。ドイツのBDEW(連邦エネルギー・水道事業連名)が2月中旬にまとめた資料では、欧州の卸売市場が2021年の前半レベルまでに戻って落ち着くのは、早くても2026年以降であると読める。これは、今、EUが急速に展開する再生エネの拡大が一定の成果を出し、化石燃料からの置き換わりが進むには、まだしばらくかかるとされているからである。<br />
欧州では、当面はこの下落した現状価格をベースに、季節や景気、ウクライナ情勢などの不確定要因を加え、再び、一定の上昇局面も想定される。</p>
<p>日本では、天然ガスの長期契約が確かに価格上昇の緩和に寄与している。しかし、欧州ほどではないにせよ、欧州に連動した一定の高値安定が継続すると考えるのが自然である。電気代に影響を与える日本独自の要素は少なくないが、現在のわが国の政策を見ると、その多くが価格上昇につながる可能性を捨てきれない。</p>
<p>世界レベルで見ると、最終的にはエネルギー安保にも貢献する自国内でのエネルギー利用、つまり、再生エネの拡大だけが、価格の安定にもつながるというのが結論であろう。<br />
すでに欧米は基本的にこの路線への転換を終えようとしている。原発、水素、アンモニア、CCUS(CO2の回収・貯留・有効利用)など、日本政府がまとめた指針「GX(グリーントランスフォーメーション)の基本方針」には、多くのツールが並んでいる。あれもこれもではなく、何が主で、何が従であるかを見極めたうえで、スピード感ある対応が不可欠だと最後に提言しておきたい。</p>
</div>
<p></p>
</div>
<p></p>

ニュース

話題のキーワード

カーボンニュートラル/脱炭素

環境 environment

エネルギー高騰の鎮静化は本物か？ 2023年以降の市場を占う

<p></p>
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<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/01/25/ev800_1.jpg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Photo by <a href="https://unsplash.com/@studiodenley?utm_source=unsplash&amp;utm_medium=referral&amp;utm_content=creditCopyText">Andrew Roberts</a> on <a href="https://unsplash.com/ja/s/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E9%9B%BB%E6%B0%97%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A?utm_source=unsplash&amp;utm_medium=referral&amp;utm_content=creditCopyText">Unsplash</a></sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>昨年の各種のデータがまとまり始め、世界的にEV(電気自動車)導入が予想をはるかに上回るペースで進んでいることがはっきりした。ところが、日本の実態は驚くほど遅い。世界で新しい乗用車の10%がEV化されているのに、日本は2%に満たない。これは、日本のEVシェアが伸び悩んでいるなあ、といったのんびりしたレベルの話ではない。<br />
そこには2つの深刻な問題点が隠れている。<br />
一つは、日本の自動車産業の将来の陰りであり、もう一つは、日本の脱炭素社会実現への危惧である。<br />
今回のコラムでは、EVに係る強い懸念についてまとめる。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>すでに世界の乗用車の新車販売の1割がBEVに</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>2022年の世界のEVの販売数はおよそ780万台で、初めて自動車販売の10%に達した。これは、イギリスの調査会社LMCオートモーティブなどによるもので、昨年比で＋68%という驚異的な伸びである。<br />
重要なのは、ここでいうEVとはいわゆるバッテリー式のEV(＝BEV)であり、HEV(トヨタが得意とするハイブリッドEV)どころか、PHEV(プラグインハイブリッド)さえも含まない数字であるということである。<br />
実は、EVの売れ行きには大きな地域差がある。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/01/25/01.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(世界の電動乗用車の地域別の販売の推移　出典：Bloomberg NEF　＊2022年は推計)<br />
</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>上記のグラフを見てみると、販売数にはPHEVなども含まれるが、半数以上が中国で、続いて欧州、北米で売れていて、ここまでで全体の9割を大きく超えている。各国内でのシェアも中国では19%、欧州でも平均11%まで上がっている。ノルウェーの9割弱は特別としても、ドイツの12月の新車販売ではEVの販売数がガソリン車を越えてしまった。<br />
日本でも昨年のEV販売が過去最高を記録したが、シェアはわずか1.7%、台数で6万台弱にすぎない。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>EVのシェア縮小は、日本メーカーの自動車全体シェアの縮小</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>EVの販売予測は当たらないので有名である。<br />
Bloomberg NEF社は毎年EVの将来予測を発表するが、いつも過小なデータしか示せずに結果として上方修正している。現状では、2030年には新車の4割程度まで伸びると予測しているが、これも前倒しで達成される可能性が高い。いずれにせよ、EVは新しもの好きの先取りのレベルは終わって、すでにごく普通の選択肢になり、遠くない将来に主流となる。</p>
<p>よく考えてもらいたい。せいぜい数%のEVシェアでの勝ち負けは気にならなくても、EVが主流となれば、その負けは全体販売での敗北となる。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/01/26/0126g.jpg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(2022年上半期、世界のBEV出荷台数トップ5メーカー　出典：Clean Technicaをもとに編集部作成)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>上のグラフは昨年上半期のBEV出荷数のトップ5メーカーである。<br />
１位のテスラはもちろんよく知られており、2位と3位は中国のメーカー、4位がドイツのフォルクスワーゲン、5位は韓国の現代自動車となっている。<br />
日本のメーカーは、統計の取り方にもよるが、10位以内あたりに日産グループがかろうじて入るだけで、トヨタははるか下に沈む。日本メーカー全体でもEVシェアは世界で5%を切っている。日本政府も含め、ハイブリッド(HEV)に固執して時流から大きく遅れたのが響いている。<br />
繰り返すが、問題はEVがメインとなる時代がそこまで来ているということである。このままでは、EVのシェアだけでなく、全体シェアも減らすことになり、日本経済をけん引してきた自動車産業が衰退していくことにつながりかねない。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>脱炭素のツールとしてのEVの重要な役割</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>EVの導入自体は、交通手段の電化でガソリンという化石燃料の利用を大きく減らすことになる。つまり、脱炭素の重要なツールであることはよく知られている。もちろん、使用する電気がゼロカーボン、再生可能エネルギー由来である必要がある。<br />
一方で、最近EVに積んだ蓄電池の利用ががぜん注目されてきている。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/01/25/03.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(EV・PHEVとV2H機器の活用イメージ　出典：資源エネルギー庁)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>上図は、EVの蓄電池を利用して、自宅の屋根に設置した太陽光パネルからの電力を充電したり放電したりして有効に使う方法、いわゆる「V2H」を示している。<br />
再生エネ電力の自家消費だけでなく、非常用電源として使ったり、また系統とつなぐことでいわゆる電力の調整力として利用したりすることも視野に入れている。<br />
EVは大型のバッテリーを載せていて、軽EVのサクラでも20KWh、日産リーフでは40KWhにもなる。蓄電池の値段はまだ高価で、単独で買ってもEV本体の値段とさほど変わらないものもある。つまり、EVは、大型蓄電池におまけで走る機能が付いたというイメージも決して間違いではない。</p>
<p>実は、乗用車は9割の時間駐車していて、その際、EVなら蓄電池は使われていない。その蓄電池をうまく利用できれば、機能の利用コストを激減させることができるのである。V2Hは原則として個々の家庭での利用であるが、系統につないで束ねて使えば、いろいろなことができる。<br />
例えば、各地で太陽光発電施設が急速に拡大し、その時の需要を大きく上回る発電量が見込まれることから、発電を止める「出力制御」がどんどん増えている。せっかくの再生エネ電源が使われずにいるのである。これを一般の蓄電池で充電することはできるが、蓄電池の価格が高くてペイしないのが実情である。再生エネが増やせない原因の一つがここにある。</p>
<p>ここでEVのバッテリーをその受け皿に使うというのが、賢い利用法となる。この使い方を「柔軟性」と呼び、再生エネ導入の鍵はこの柔軟性の拡充にもある。日本の再生エネ電源は太陽光発電が圧倒的で、夜のカバーをどうするかが課題である。EVの蓄電池が広く使えると飛躍的に状況が改善される可能性がある。</p>
<p>最近、日本でもEVの蓄電池利用を進めるシステムを構築するスタートアップ企業が増え、柔軟性拡大の技術や利用法が注目を集めている。ところが、肝心のEV導入が日本は大幅に遅れているのである。EVの一定以上の台数が存在しなければ、絵に描いた餅である。<br />
EVで後れを取る国は、自動車産業の衰退に結び付く。さらに再生エネ導入拡大が遅れることで脱炭素にも掉(さお)さすことになる。日本の抱えるEVにまつわる心配は、決して放っておくことが許されない緊急の課題である。官民挙げての素早く、実効性のある対応が望まれる。</p>
</div>
<p></p>
</div>
<p></p>

EVで後れを取る日本が、本当に心配しなければならない2つの重要なこと

<p></p>
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</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/12/20/top800_3.jpg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Photo by <a href="https://unsplash.com/ja/@cassieboca">Cassie Boca</a> on <a href="https://unsplash.com/ja/%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3/137515/Renewable-Energy?utm_source=unsplash&amp;utm_medium=referral&amp;utm_content=creditCopyText">Unsplash</a></sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ロシアのウクライナ侵略など、欧州をきっかけに世界を揺るがすエネルギー費の高騰。電気代やガス代などの急上昇は食料など生活すべてに及び、インフレなどによって私たちの生活を脅かしている。負の側面ばかりが強調されることが多いが、一方で強い再生可能エネルギーブームを呼び起こしていることを忘れてはならない。<br />
今回のコラムでは、欧州で進む、太陽光発電とヒートポンプの一大ブームについてお伝えすると共に、日本への伝播(でんぱ)、ポジティブな影響を考察してみたい。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>ウクライナショックが決定づけた、再生エネ拡大への加速</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>過去のコラムで示したように、ロシアのウクライナ侵略を端緒とする天然ガスなど化石燃料のロシア依存脱却の動きは、自国で賄えて燃料代のかからない再生エネへのシフトを急速に早めることになった。繰り返すが、脱原子力発電の延期や石炭利用は再生エネが十分拡大するまでのつなぎという考え方である。</p>
<p>IEA（国際エネルギー機関）が12月に発表した報告書「Renewables2022：2027年への分析と予測」でも、2025年の初めには、再生エネが石炭を抜いて世界最大の電源となるとしている。そして、再生エネ全体の発電容量シェアは、2027年までに10ポイント増加し38%と予測された。<br />
中でも、太陽光発電の伸長は目覚ましく、2027年に石炭を上回り電源別でトップに躍り出る見通しである。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/12/20/kitamura01.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(世界の電源別の発電容量と2027年への予測　出典：IEA「Renewables2022：2027年への分析と予測」単位GW)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>IEAの報告書では、太陽光や風力を中心に再生エネ電源は、2027年までの5年間でおよそ2400GW増えるとされている(次グラフ)。これは過去20年間の増加分に匹敵する量で、この1年間で予測自体が30%伸びている。これは、ウクライナ危機が生んだ「エネルギー安全保障」の必要性によるもので、欧州に限らず中国やインドなどでも同様の傾向にある。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/12/20/kitamura02.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(世界の再生エネ電源容量の時期別の増加量と予測　出典：IEA「Renewables2022：2027年への分析と予測」単位GW)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>欧州各国で起きる太陽光発電設置ブームの実際</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>特にロシアの化石燃料からの脱却が急がれる欧州各国では、太陽光発電急拡大の予測を裏付けるデータが次々と示されている。中でも電気代急騰に苦しむ一般家庭や事業者などの屋根上などへの設置意欲は旺盛である。<br />
イギリスで300を超える太陽光発電設置業者を束ねる業界団体ソーラーエナジーUKによれば、今年前半に住宅の屋根に設置された太陽光パネルは昨年一年分の量を超えたという。業界としても、2030年までに合計40GWの積み増しを目指している。<br />
また、需要に伴って欧州全体の太陽光パネルの輸入も増えている。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/12/20/kitamura03.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>（EUの太陽光パネルの輸入額　出典：POLITICO、BNEF 単位：ドル)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>グラフが示すように、昨年2021年の半ばから拡大が始まり、今年に入って輸入額が急激に増えている。ちょうどEUの電力卸売市場の値上がり時期と値上がり額に呼応しているように映る。卸売価格は2021年初頭の10倍規模となり、それに合わせて電気料金も今後さらなる高騰が見込まれている。太陽光パネル設置による自家消費は、明らかに電気料金削減につながる。EUとしても脱炭素実現のために再生エネ拡大を目指しており、自衛手段として設置を検討する家庭や企業のニーズと合致しているともいえる。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>熱を抜きにして語れない脱炭素とヒートポンプへの注目</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ここまで電気の話をしてきたが、エネルギーの課題として考えれば、欧州全体にとっても家庭を含む需要家にとってみても、熱を外すことはできない。特に天然ガスの用途は、家庭用ではお湯を含む暖房が圧倒的で、ドイツでは発電に使う分は10%強しかない。<br />
つまり、ロシアからの天然ガスを使わないようにするためには、熱の代替品を考えるのが合理的であることがわかる。<br />
以下の図は、ドイツの2021年の最終エネルギー消費量をセクター別に示したものである。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/12/20/kitamura04.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(ドイツ、最終エネルギーのセクター別消費量TWh　出典：Die ZEIT ONLINE)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>縦に「ガス」、「電気」、「オイル・ガソリン」と並び、横は左から需要先の「家庭」、「産業」、「商業」、「交通」を示している。一見してわかるように、天然ガスはどの需要先でもそのまま使われることが多く、実際に家庭でも産業でも熱利用が最大である。当たり前だが、ガソリンは自動車の利用が圧倒的(右下の円)で、脱炭素化に向かってEVへの転換が急激に図られている。</p>
<p>では、化石燃料に頼っている熱をどう脱炭素に転換しようとしているのであろうか。<br />
答えは、このコラムのもうひとつのテーマである「ヒートポンプ」である。<br />
ヒートポンプとは、空気中、または地中の熱を集め何倍もの熱エネルギーとして活用することができる技術である。実際にエアコンや冷蔵庫などに使われている馴染みのあるもので、例えば、現在のヒートポンプエアコンは投入エネルギー1に対して、7倍の熱利用が可能という優れモノである。</p>
<p>その仕組みを図式化したのが次の絵である。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/12/20/kitamura05.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(ヒートポンプの仕組みとパフォーマンス　出典：REN21)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>A：存在する再生エネ熱(空気、地下水、地熱など)3kWh<br />
B：熱利用のシステムを動かすための再生エネ電力1kWh<br />
C：ヒートポンプ<br />
D：利用できる熱4kWh</p>
<p>ここでは、投入エネルギーに対して4倍の利用となっている。<br />
気が付くように、システム(C)のコストがポイントで、また、熱を集めるヒートポンプを動かすための電気(B)が再生エネ由来でないと完全な脱炭素にはならない。<br />
欧州ではここにきてロシアの天然ガスを減らすことができ、さらに脱炭素にもつながる仕組みとして注目を集めるようになり、自家消費の太陽光発電と並んで大きなブームを呼んでいる。</p>
<p>次のグラフは、ドイツの暖房用システムの構成比と今後の推移を予測したものである。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/12/20/kitamura06.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>(ドイツ、暖房用熱供給システムの構成と将来予測　出典：Agora Energiewende)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>一番左の現状のシステム(2016～2020)は、グラフ下部の暖房用オイル(濃緑)と天然ガス(薄灰緑)の化石燃料利用が全体の3分の2を占めている。しかし、すでにヒートポンプ(薄紫)への転換が急激に始まっていて、2026年以降では7割以上がヒートポンプになると予測されている。<br />
実際に、ドイツのテレビなどではヒートポンプの特集が組まれたり、設置のやり方の動画が頻繁にWEBサイトにあげられたりしている。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>日本への影響とブームの予感</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>日本でも電力が高騰しているため、対策としての太陽光発電の自家消費需要やコーポレートPPAが欧州同様に急拡大している。ただし、欧州の太陽光発電ブームによって、日本へのパネル輸出や部材調達の滞りなども起きているが、時間の経過とともに解消に向かうであろう。</p>
<p>熱の話に移る。日本では残念ながら再生エネ熱への関心や理解がやや低いのが現実である。<br />
しかし、再生エネ電源の国内での確保は、日々難しくなり、時間も要している。前述した発電設備の部材調達の困難さだけでなく、取り合いになっている適地の決定的な不足、また系統連系の脆弱性などは多くの関係者の語るところである。</p>
<p>一方で、企業や自治体に対する脱炭素の要請は強くなるばかりである。脱炭素は、電力だけでなく、熱や交通などすべてで実現しなければならない。そこでは電力の確保だけでなく、できるものは何でも取り掛かるという姿勢が必要となる。これは、情報交換している政府などのエネルギーセクションの担当者の考えとも一致している。<br />
つまり、カーボンニュートラルに資する熱や交通への対応策、具体的にはEVへの転換や本コラムのテーマであるヒートポンプ利用はドンピシャの方法になり得るということである。</p>
<p>世界のヒートポンプ機器のメイン企業の一つであるダイキン工業は、50年ほど前から欧州に進出しているが、現在、化石燃料の暖房から高効率のヒートポンプ暖房への切り替え需要をターゲットに拡大を図っている。ポーランドの新工場には400億円を充てる。<br />
また、パナソニックも新しい工場の欧州での建設の検討を発表したばかりである。ヒートポンプ暖房の生産を現状の6倍の100万台に増やす目標を掲げている。</p>
<p>交通の脱炭素化はEVでほぼ決まったが、熱の転換では企業などは苦慮している。ヒートポンプはその重要な答えの一つであるのは間違いない。今後は、特に寒冷地でのヒートポンプ暖房の展開などが期待される。爆発せずともジワリとくるブームは目の前であろう。</p>
<p>また、大量の木質バイオマスを燃やして発電だけに使う専焼施設はすでに外材の高騰などで行き詰まり始めている。こちらは、小規模のコジェネ、もしくは熱利用だけの需要が膨らむとみている。</p>
<p>電気だけでは解決できないのが脱炭素である。いつまでも電気だけに拘泥されることのない多岐にわたった取り組みが、政府、企業、自治体、そして私たち個人にも求められている。</p>
</div>
<p></p>
</div>
<p></p>

再生可能エネルギー

欧州、「空前の太陽光発電とヒートポンプブーム」が日本に与える前向きな影響

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/11/27/COP270800_1.jpeg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>COP27の最終日11月20日に「損失と損害」に関する新基金の設立が決まった(COP27<a href="https://cop27.eg/#/">オフィシャルサイト</a>より)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>エジプトで開かれていたCOP27は11月20日、前回のCOP26同様に延長の末に閉幕した。総意として、温暖化防止が地球的な重要事項であっても、個別の課題、例えば、化石燃料の取扱いなどは個々の国の利害などで簡単にはまとまらないことを示している。底流にあるのは、主として先進国と途上国との間の争いである。</p>
<p>今回はメディアでも中心的に取り上げられたように、温暖化による「損失と損害」に対する途上国への支援が争点となり、まがりなりにも基金の設立が決まった。結果を途上国の勝利と見る向きもある。しかし、重要なのは、個々の課題の解決・未解決より、「フェーズ転換」の認識である。</p>
<p>脱炭素は、目標設定などの合意を巡るやり取りから、待ったなしの実行の段階に完全に入ったと言ってよい。カーボンニュートラル宣言の国が急増し、実現の年が早まっていったこの数年間を経て、どうやって本当に脱炭素化するのか実効性が問われている。</p>
<p>これは、各国の政府のレベルはもちろん、すべての企業や個人にも求められる重い責任である。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>画期的だった、気候変動による損失と損害をカバーする基金設立</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>今回のCOP27の結果は、大きく2つに絞られる。<br />
まずCOP26で事実上合意した、温度上昇1.5度の抑制を維持したことである。ただし、前回踏み込んだ石炭火力発電に対する段階的削減の強化はなく、前進とはいえないものであった。<br />
もう一つが、「損失と損害」の議論である。<br />
進む気候変動のために起きる世界各地での災害の頻発は、日本も含め実感レベルに達している。以下のグラフで示すように、今年の初夏から夏にかけては東アジアや欧州を中心に世界的な熱波が発生した。<br />
例えば、欧州では水不足によって水力発電が極端に不振で、電力供給が危機的状況となった。一方、特に災害の予防に十分な費用を割くことができない途上国での被害は、国の存立を揺るがすまでになってきている。パキスタンの大洪水では国の3分の1の面積が水没した。数百万人が被災し、いまだに継続中である。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/11/27/kitamuracop01.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>2022年の6月から8月にかけての熱波(出典：Berkeley Earth)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>損失と損害の問題は、長く温暖化の中心議題となってきた。“先に経済発展を果たし温暖化を招いた先進国”と“その被害を受けるだけの途上国”という対立の歴史でもあった。<br />
今回、激しい議論と会期延長の末、「損失と損害にフォーカスした基金を2023年のCOP28に設立する」ことが決まった。画期的な成果といってよい。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>地球上すべての存在が、責任として問われる脱炭素の実行</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>基金設立に至った最大の背景は、気候危機といわれる温暖化の強烈な悪影響である。このまま放ってはおけない状況という危機感が、最終的な妥協を生んだと考えられる。<br />
カーボンニュートラルを達成するには、すべての国が参加しなくては意味がない。それは、財政的に余裕のある先進国であろうと、ウクライナ情勢が招いたエネルギーと食糧の高騰の激しい影響にさらされる途上国であろうと同じである。頻発する温暖化による災害は、途上国のさらなる国力劣化を呼んで“脱炭素どころではない”状況に突き落としている。基金の設立は、おこがましい言い方ではあるが、損失と損害に苦しむ途上国を、脱炭素実施のステージに引き上げるために必要なものである。そこまでの状況に人類は追い込まれている。</p>
<p>COP27の成果は、単に途上国と先進国の間での有意な合意というだけではない。脱炭素化策の実効性を担保し、地球上のすべてのプレーヤーが目標に向かってそれぞれ努力を行うことを迫っている。脱炭素の宣言や表明だけでは責任は果たせず、実施が必須となる新しい段階に入ったことになる。<br />
例えば、基金については、先進国に加え新興国である中国にも拠出が求められることになる。もちろん、日本の財政的な負担もすぐに俎上に載ることになる。<br />
地球上で温暖化の影響を受けない所はなく、脱炭素への取り組みを除外される対象も存在しない。政府だけでなく、民間のすべての企業や各種の団体、そして学生や個人などあらゆるものの取り組みがチェックされることを忘れてはならない。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>必須となる自らの脱炭素行動のチェック</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>その観点からみると、私たちの現状の行動はあまりに緩く、甘いと言わざるを得ない。現在、先進国でさえエネルギー高騰を中心としたインフレに苦しみ、かろうじて先進国に踏みとどまる日本に余裕はない。そんな中で果たして政府や企業、個人が、脱炭素に本当に取り組めているか、点検が必要である。仮に基金が立ち上がり、日本政府が一定額を拠出したとしても、それは単なる責任の一部を果たすことにしかならない。</p>
<p>日本政府のエネルギーに関する取り組みを見てみよう。<br />
先日、来年の2月から実施されるエネルギー高騰の新しい緩和策、需要家への電気とガスの料金支援が発表された。すでに実施されているガソリン対応に加わるものである。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/11/27/kitamuracop02.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>ガソリンの全国平均価格の推移、補助なしと補助後(出典：資源エネルギー庁)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>先に始まったガソリン代の補助額は3兆円を超えようとしており、電気代とガス代の補助は10月までと期限はついているが、こちらも3兆円規模となる。<br />
所得制限のない補助に対する非難もあるが、ガソリンの使用を維持、促進することになりかねず、脱炭素に反するといった声が非常に強い。特に本来起きるはずの、値上がりによる需要抑制の動きを止めてしまうというのである。<br />
政府が進めるエネルギー高騰対策は、きつい言い方をすると単なるバラマキでしかない。決定的に脱炭素の視点が抜けている。</p>
<p>この冬、夏同様の節電要請が政府から発信された。脱炭素の急激な進行とウクライナ情勢が重なった電力不足の不安解消が目的である。しかし、節電の数値目標はない。欧州では、ピーク時の5%と来年3月末までの総需要の10%カットが掲げられている。<br />
COPなどの国際的な約束と実生活との乖離(かいり)は、危機感の無さから生まれる。政府は目の前の“きれいごと”で国民に媚びを売るのではなく、将来への安心の道筋を示すために、今、耐えることの必要性を提示しなければならない。<br />
特に温暖化に関しては、私たち個人や企業も同様の責任がある。安易にエネルギーを浪費することなく、日々の節電や物を大事に長く使うことなど、いくらでもやる余地は残っている。</p>
<p>COP27は、私たちすべてに脱炭素への覚悟を求めている。</p>
</div>
<p></p>
</div>
<p></p>

気候変動/気候危機

新しいフェーズに入った脱炭素～COP27が私たちに迫る効果的な実現策

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/11/20/ferdinand-stohr-eBOqEYcqWzQ-unsplash800_1.jpg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Photo by <a href="https://unsplash.com/ja/s/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E9%A2%A8%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB?utm_source=unsplash&amp;utm_medium=referral&amp;utm_content=creditCopyText">Unsplash</a> on <a href="https://unsplash.com/@fellowferdi?utm_source=unsplash&amp;utm_medium=referral&amp;utm_content=creditCopyText">Ferdinand Stöhr</a></sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>11月1日に、政府によって第二回目の脱炭素先行地域20カ所が選定された。<br />
2030年に向け一定地域の電力を100%脱炭素化する自治体中心の提案が、最終的に全国で100カ所超選ばれる。先行地域には再エネ交付金が上限50億円支援され、熱心な取り組みを進める市町村は少なくない。政府の進めるカーボンニュートラル実現への目玉政策であり、今後の日本の脱炭素実現の鍵ともなる仕組みと言ってよい。今回のコラムではそこで求められる連携を企業など需要家の立場も含めて考えてみる。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>脱炭素先行地域に込められたモデルとしての役割</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>脱炭素先行地域は、政府が決めた脱炭素ロードマップに組み込まれたモデル地域のことである。今年4月に発表された一回目は26地域が選ばれており、合計46提案となった。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/11/20/01.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>脱炭素先行地域の選定状況　第1回＋第2回　(出典：環境省）</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>全国1741自治体に比すればほんの一部であるが、札幌市や横浜市、川崎市、名古屋市などの大都市が水素利用などの先進技術を掲げて選ばれる一方で、山村や離島などの選定もある。<br />
他の地域への波及モデルと考えれば、バリエーションは重要となるが、単に技術などの先進性だけを意味しない。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>地域経済循環、地域活性化への貢献が選定の必須条件</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>脱炭素先行地域は、調査や実証ではなく実施事業であり、実現可能性が最も求められる。ただし明確な条件がある。選定作業を行った評価委員会は、第二回総評の評価基準で「地域経済循環への貢献」が選定条件のひとつだとはっきりと示している。</p>
<p>再生エネは分散型であり、広く地域に存在している。その資源は原則として地元に帰属する。しかし、2012年に始まったFIT制度では中央からの企業が資本力に乗って地域の再生エネ適地を押さえるケースが圧倒的であった。ところが近年は、大規模開発による災害などのリスクが表出し、地域での反対の動きが盛んになってきた。<br />
四国や東北地方で、地域外の事業者による大規模な風力発電計画がとん挫し、地方のメガソーラーが強い住民の反対に合うケースが急増している。特に、地元事業者が入らず、地域に利益をもたらさない“よそ者のプロジェクト”は嫌われる。</p>
<p>脱炭素先行地域が条件として強調する地域経済循環は、そんな地元の意識の変化に対応しているといえる。脱炭素は、どの場所でも必ず実現されなくてはならず、莫大な費用もかかる。やらなければならないという義務が「ムチ」なら、先行地域で得られる補助や支援は「アメ」であろう。また、地域が主体となって再生エネ事業が進めば、さらなる経済効果が地元に見込めることになる。<br />
その実施の仕組みは、地域主導をうたう政府の脱炭素ロードマップ(下図参照)の中にある。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/11/20/02.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>脱炭素ロードマップが示す地域の実施体制構築　(出典：環境省）</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>このように地方自治体・金融機関、中核企業等が主体的に参画し、地域の各種ステークホルダーと連携する実施体制が推奨されているのである。さらに、そのような仕組みでなければ、地域で支持されず、再生エネ拡大につながらないと考えられている。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>先行地域で生まれる再生エネ拡大の基盤</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>これは、実際の選定結果にも表れている。<br />
提案は自治体が主体であるが、地元企業などの共同提案が認められる。第一回、二回を通して顕著だったのは、地域新電力などの地域エネルギー会社と地域金融機関との共同提案である。<br />
地域エネルギー会社のケースは、合計10提案、12社あった。また共同提案ではないが、提案書での協力などの記載まで含めると全体の6割の27社となる。地方金融機関は、合計6提案に載った、山陰合同銀行、中国銀行、岩手銀行、滋賀銀行、大和信用金庫、山口銀行である。こちらも表には出ていないが、実際に協力している地銀を複数確認している。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/11/20/03.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>山陰合同銀行の発電事業子会社「ごうぎんエナジー」のスキーム(出典：山陰合同銀行)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>上記の図は、今年5月に設立された山陰合同銀行の発電子会社のスキーム図である。昨年の銀行法改正によって、地銀などのつくる子会社の事業範囲が飛躍的に広がり、成長分野である再生エネ発電事業に進出する地銀が増えている。<br />
これは、第一回の脱炭素先行地域に選定された鳥取県の米子市、境港市が示した提案とほぼ重なる。図で連携相手とされる市町村(米子市、境港市)、地域新電力(ローカルエナジー)と親会社の山陰合同銀行は共同提案者となっている。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>排除ではなく、連携の広がりこそが必要</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>地域脱炭素もそうであるが、地域主導の再生エネ拡大とは、地域外を排除することではない。地元を無視し、地元が参画しない事業や資本が嫌われているのである。地域には外から進出している企業も多い。雇用が生まれている現実があり、彼らは脱炭素を達成するための仲間でもある。<br />
また、再生エネをより多く導入するために必要な各種の技術などを地域内だけでカバーするというのは現実的でない。<br />
例えば、国内最大規模のバイオマス由来の熱供給施設を使って大型のシイタケ温室栽培を行っている岩手県久慈市の地域熱供給会社、久慈バイオマスエネルギーは、技術を保有する東芝の関連会社が資本参加している。ちなみに、久慈市は自治体新電力の久慈地域エネルギーと岩手銀行と組んで、第二回の脱炭素先行地域に選定されていて、この熱供給システムもその中に組み込まれている。<br />
また多くの地方銀行が、脱炭素化に必要なCO2排出量把握のためのアプリケーションを融資先の中小企業などに紹介しているが、提供するいくつかのベンチャー会社は必ずしも地元の会社ではない。<br />
さらに、先行地域で共同提案する地域エネルギー会社にサポート役として地域外の資本が入っていることも珍しくない。</p>
<p>重要なのは、再生エネ拡大と地域経済循環の基盤が、地域にあるかどうかである。地域外の企業などすべて含めて、脱炭素は日本全体で達成しなければならない。そこでは排除の思想ではなく、いかに地域に基盤を作り外部も含めて協力していけるかの連携の思想が必要となる。<br />
地域の再生エネ資源の取り合いが各地で見られる。これからは争って自分だけが獲得するのではなく、いかに協力して再生エネを増やしていくかというパイの拡大が需要になる。脱炭素先行地域は、そのためのよきサンプルでもある。再生エネ資源不足に頭を悩ませる需要家が多いこともよく知っている。地域を支援することこそが、結果として再生エネ獲得の近道であると感じ取ってもらいたい。</p>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>関連記事<br />
・<strong><a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1211648_1534.html">エネルギー課題解決の大前提は冷静な議論――必須となる各種データと予測、そして論点の整理</a><br />
・<a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1210999_1534.html">欧州を襲うエネルギー費高騰の嵐　原因と緊急対応の実際と日本への影響</a></strong><br />
・ <strong><a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1210948_1534.html"><strong>地域金融機関が目指す、脱炭素と経済循環の両立　秋田・北都銀行の取り組み</strong></a></strong><br />
・ <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1210102_1534.html"><strong>自治体に求められる</strong> <strong>“</strong> <strong>地域の脱炭素経営</strong> <strong>”</strong> <strong>　ノルマではない前向きなカーボンニュートラルとは</strong></a><br />
・ <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1209451_1534.html"><strong>脱炭素と</strong> <strong>“</strong> <strong>グリーンウォッシュ</strong> <strong>”</strong> <strong>リスク　失敗しない取り組みとは</strong></a><br />
・ <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1208399_1534.html"><strong>エネルギー価格高騰への対応は短期、中長期の総合対策で</strong></a><br />
・ <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1208951_1534.html"><strong>企業に迫る国際的な脱炭素圧力と弱い政府の支援</strong></a><br />
・<strong> <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1207953_1534.html"><strong>ドイツ、脱炭素への厳しい道のり</strong><strong>①</strong> <strong>再生エネ拡大のチャレンジは成功するか</strong></a></strong><br />
・<strong> <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1208049_1534.html"><strong>ドイツ、脱炭素への厳しい道のり</strong><strong>②</strong><strong>ロシアに頼ったエネルギー政策の失敗</strong></a></strong></p>
</div>
</div>
</div>
<p></p>
</div>
<p></p>

脱炭素先行地域が目指すもの～カーボンニュートラル実現に必須な連携

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/10/26/kawamura800_1.jpg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>ドイツ・ラインラントプファルツ州の風力発電(Photo by <a href="https://unsplash.com/@markkoenig?utm_source=unsplash&amp;utm_medium=referral&amp;utm_content=creditCopyText">Mark König</a> on <a href="https://unsplash.com/ja?utm_source=unsplash&amp;utm_medium=referral&amp;utm_content=creditCopyText">Unsplash</a>)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ここにきてエネルギー費の異常な高騰、燃料の不足、ロシアの起こした侵略の中での脱炭素。百年に一度のことが、集中して発生し、地球を脅かしているといっても過言ではない。この1～2年のエネルギーに関する私たちの決断は、人類が持続的に生きていけるかの分かれ目になるかもしれない。</p>
<p>危機に瀕すると冷静さを失いがちである。しかし、こんな時こそ、できるだけ落ち着いた議論を行って、よりましな選択をしなければならない。私たち、特に日本人は、エネルギーできちんと議論ができているのだろうか。短期的な事象にとらわれていたり、雰囲気に流されたりしていないだろうか。今回のコラムでは、改めて根本から立ちはだかる課題解決について考えてみたい。必要なのは、データと予測と多角的な論点の整理である。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>議論のベースが、きちんと提示されているか</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>筆者は、2年ほどドイツに住んだ経験がある。その後もドイツの再生エネに強く関心を持って繰り返し訪れ、エネルギー関連のアドバイスを日本で生業(なりわい)としてきた。そのため、本コラムを含め、執筆やセミナーのためドイツのエネルギーに関する研究や資料に当たることが多い。その時、いつも感心していたのが、各種のまとめを行う官民の研究機関やシンクタンク、行政機関などの存在の多様さとその報告のボリュームである。</p>
<p>例えば、以下のグラフを見てもらいたい。ドイツにおける、風力発電と太陽光発電の将来予測である。まとめたのは、AEEという、再生エネの効率的な使用を促進することを目指すドイツの民間企業で、政治的中立性を掲げたうえで、自治体や建設業界などの民間企業などにコンサルティングなどを行っている。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/10/26/kawamura01.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>グラフ1：ドイツの風力、太陽光発電の将来予測(出典：AEE)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>グラフ1そのものは、2030年、2050年に向けての両発電の大きな伸びを示している。ここで、注目してほしいのは、横軸の「データ元」のリストである。2030年の予測を見ると、7つの機関による棒グラフがあり、ばらつきも大きい。元のデータを作成したのは、再生エネに関連する公共機関やシンクタンク、研究所などで、独自の調査や検討に基づいて予測を行っている。それを、AEEが一つのグラフに取り込んでいるのである。</p>
<p>例えば、BMWK(ドイツ連邦経済・気候保護省)の予測(右から2番目、斜線入り)は、ロシア侵略後に政府が緊急提案したエネルギー施策「イースターパッケージ」で、太字で取り上げられている。この他、BEE(ドイツ再生エネ協会)やエネルギーシフトを目指すシンクタンクdena、ベルリンにある再生エネ専門の研究機関Agora Energiewendeなど著名な組織が並んでいる。</p>
<p>ドイツのエネルギーの報告書などで、このように複数の研究結果が並列されるのは珍しくない。読む側は、各種の研究結果を比べることで多様な判断材料を得ることができる。<br />
この他、このグラフにはないが、エコインスティテュートやドイツ最大の研究機関であるフラウンホーファー研究所など研究調査機関は枚挙にいとまがない。特にフラウンホーファー研究所ISEは前年の電源別の発電量とその分析を毎年、年明け1週間以内に速報する。一年前の統計が出てくる日本に比べて、そのスピード感は驚くほど違う。なにより、データや予測を発表する機関の数が日本では少ない。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>日本のエネルギー高騰対策に欠ける論点とは</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>エネルギー自給率が、わずか10%あまりの日本は、当然、欧州などでの高騰のあおりを受け、電気もガスも大きく値上がりしている。さらに激しい円安が追い打ちをかけている。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/10/26/kawamura02.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>グラフ2：電気料金単価の推移(出典：資源エネルギー庁)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>日本の資源エネ庁が作成した上のグラフはまだ昨年の“おとなしいレベル”である。2022年に入って情勢はさらに厳しくなった。すでに旧一電系の小売電気事業者は燃料費の高騰に耐え切れず、燃料調整費の上限撤廃や市場連動プランへの切り替え、需要家の緊急避難となる最終保証供給(送配電事業者との契約)価格の実質値上げなどに踏み切っている。</p>
<p>こんな中、岸田首相は突然、原発推進に舵を切る。小型原発の新設に加え、すでに運転期間の上限60年の撤廃の検討にはいった。</p>
<p>筆者は、原発の推進に懐疑的ではあるが、議論はすべきだと繰り返し各所で書いてもいる。<br />
欠かせないのは、論点の整理であり、そのためにはデータや予測などが必須となる。今、進むのは、「エネルギー費の高騰で大変➡欧州も原発に頼り始めた➡安定的な電源として日本も原発を」、という危うい雰囲気である。多くの日本のマスコミも、ドイツが残りの原発運転延長を決めた、岸田さんが原発推進に転じた‥などの「現象」をほぼ追うだけで、議論のベースとなるデータやファクトの提示などをあまり行っていない。これでは、まともな議論の無いまま、情勢に流されかねないと筆者は心配する。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>欧州とドイツの脱ロシア依存と原発利用に関する論点</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ここで、欧州、特にドイツの原発利用の論議を整理しておこう。原発利用の是非ではなく、どのような議論で現状の施策に至ったかを見るためである。(下線が基本的なデータや施策)</p>
<p>〇ロシアからの天然ガスが入ってこないなど使えない状況への対策：<br />
もっとも影響を受けるのは、家庭の暖房利用、化学工業などであり、発電に使う分は10％強しかない。また、<u>原発延長の効果は、天然ガスの1％を節約できる程度</u>である。一方、<u>節ガスが広がって、家庭では20%を大きく超える使用削減結果</u>が出ている。それでも、<u>短期的には、停電などのリスクが排除できないため</u>、延長に踏み切った。</p>
<p>〇短期的な対応：<br />
原発の運転延長は、来年4月中までに限定している。それは、現在の<u>天然ガスのドイツ国内貯蔵率が95%を超えていること</u>、来年には<u>LNG基地の新設などが見込まれていること</u>などが理由である。</p>
<p>〇中期的な脱ロシア施策：<br />
欧州全体の新しいエネルギー施策<u>「RePowerEU」では、現状の天然ガスのロシア依存(左：黄土色がロシアからの輸入、青色が非ロシア)を2030年にはゼロにする目標</u>を立てている。それまでの<u>不足分を、米国やノルウェーからの追加分やカタールからのLNGでカバーする計画</u>である。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/10/26/kawamura03.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>グラフ3：欧州の天然ガスのロシア依存と2030年に向けての調達先転換(出典：Ember)</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>〇長期的な展望：<br />
<u>欧州各国は、緊急かつスピード感を持った、圧倒的な再生エネ、特に電源の拡大</u>を目指している。冒頭のグラフ1は、そのためのドイツの<u>再生エネ電源の中心となるVRE(太陽光と風力発電)の拡大予測</u>である。<br />
つまり、原発の運転延長はこれらのデータや施策に基づく論点の整理(下線部分)からみると、つなぎであることがよくわかる。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>日本で抜けるコストの議論と運転延長によるリスク</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>なぜ、欧州が原発に頼りきれないかは、その持続性にある。</p>
<p>一つはコスト高である。事故への不安は、地震の少ない欧州でさえも残る。その分、施設の安全性向上のための建設費が跳ね上がっている。ドイツの運転延長議論でも、燃料確保や延長で増加する核の廃棄物の処理費増などのコスト増加が問題となった。明らかに高くつくが、短期的なエネルギー不足リスクを他の電源では補えないとの結論になったと想像される。注目すべきは今、欧米では原発を安いとする議論はない。特に新設での競争力は厳しい。原発を新しく作るのでは、運転まで10年程度かかり即効性がない。よって、運転延長を考えるのだが、フランスの原発の10基以上が設備の腐食問題で今年稼働していないことを考えると、そちらのリスクも大きい。これが、二つ目の問題である。</p>
<p>前項のまとめともなるが、天然ガスのロシア依存問題は電力の高騰につながるほどの悪影響を及ぼし、その結果、つなぎとして一定の期間、原発にも頼ることになったといえる。知られているように、イギリスやフランスは長期的な観点で、原発の新設計画を進めている。</p>
<p>ただし、フランスは6基新設を計画するが、建設中のある原発は10年前に動くはずが15年かけても完成せず、経費は計画の4倍となっている。イギリスは今後10年程度で現在稼働している13基のうち12基を閉鎖する。少し前に新規原発の不採算コストを、当時建設を請け負うことになっていた日本企業に大きく転嫁しようとしていたことを思い出す。</p>
<p>振り返って、日本の原発推進とは、いったいどういうことなのだろうか。<br />
短期的には、再稼働しか対応できないが、中長期はどうするのか。地震頻発国として長期運転のリスクについての議論は当然含まれなくてはならない。さらに、コスト論議には正直なデータの提示が必要である。すでに、原発推進の原資を法人税の値上げでまかなう話も出ている。何のために、原発をどう使うのか、リスクやコストの負担はどうするのか、論点は山ほどある。</p>
<p>今回は、原発の話を例としたが、再生エネをはじめとしたエネルギーや特に電源に関しての議論は、データを欠く話も多く、他の国の例も自分の論に都合の良いところを引っ張ってくるケースが後を絶たない。自前で議論のベースとなるデータなどを提供できる各種の機関が日本には不足していると感じる。</p>
<p>一方で、ガソリン代の補助が、3兆円になろうとしている。これに電気代とガス代の補助が数兆円加わる勢いである。長期の補助は、不要な車の運転を無くし、節電や節ガスによって脱炭素に貢献する道を自らふさごうとしていることになる。財政赤字が突出し、円安が急進行する国が取る政策なのか。行き当たりばったりの施策を取っている余裕は日本には無いはずである。各種のデータや予測をベースにした、冷静な議論を避ける先に希望の未来はやって来ない。</p>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>関連記事<br />
・<a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1210999_1534.html">欧州を襲うエネルギー費高騰の嵐　原因と緊急対応の実際と日本への影響</a><br />
・ <strong><a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1210948_1534.html">地域金融機関が目指す、脱炭素と経済循環の両立　秋田・北都銀行の取り組み</a></strong><br />
・ <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1210102_1534.html"><strong>自治体に求められる</strong><strong>“</strong><strong>地域の脱炭素経営</strong><strong>”</strong><strong>　ノルマではない前向きなカーボンニュートラルとは</strong></a><br />
・ <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1209451_1534.html"><strong>脱炭素と</strong><strong>“</strong> <strong>グリーンウォッシュ</strong><strong>”</strong> <strong>リスク　失敗しない取り組みとは</strong></a><br />
・ <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1208399_1534.html"><strong>エネルギー価格高騰への対応は短期、中長期の総合対策で</strong></a><br />
・ <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1208951_1534.html"><strong>企業に迫る国際的な脱炭素圧力と弱い政府の支援</strong></a><br />
・<strong> <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1207953_1534.html">ドイツ、脱炭素への厳しい道のり① 再生エネ拡大のチャレンジは成功するか</a></strong><br />
・<strong> <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1208049_1534.html">ドイツ、脱炭素への厳しい道のり②ロシアに頼ったエネルギー政策の失敗</a></strong></p>
</div>
</div>
</div>
<p></p>
</div>
<p></p>

エネルギー課題解決の大前提は冷静な議論――必須となる各種データと予測、そして論点の整理

箕輪弥生

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/10/22/denmarkwindpowerc800_1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>欧州はロシアによる天然ガス輸出制限により、深刻なエネルギー危機に陥っている。デンマークは日本と同様、70年代石油危機を経験したが、そこから自然エネルギーに舵を切り、現在は電力の半分以上を自然エネルギーで発電し、他の欧州諸国よりその影響が少ない。豊富な風力発電を軸に、電力の余剰分から水素やバイオガス、メタンなどを作る「Power-to-X」の動きも活発だ。政府は公共施設の室内温度を19℃に設定するなど節電や省エネを推奨し、市民も生活の中で工夫する。デンマークがエネルギー危機を回避するために行ってきた政策や今後の方針について、クリストファー・ベッツァウ エネルギー庁長官の講演やデンマーク在住のジャーナリスト北村朋子さんへのヒアリングからレポートする。 (環境ライター箕輪弥生)</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>オイルショックを機に自然エネにシフト</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>「省エネのためのニュースがぐっと増えた」。デンマーク、ロラン島に20年以上在住するジャーナリスト北村朋子さんはこのところのデンマークの変化をこう話す。</p>
<p>「高速道路はできるだけ低燃費で走るために、スピードを出す車はぐっと減ったし、冬の前に薪ストーブをつける人も増えている」</p>
<p>このような変化をとらえて北村さんは「70年もこんな感じだったのでないか」と想像する。1970年代、デンマークは日本と同様オイルショックに直面した。その頃のデンマークはエネルギーの99％を輸入化石燃料に頼っていた。そのため週に1度はノーカーデーとして車の運転を制限したほどだった。</p>
<p>「今は50年前に比べるとデンマークのエネルギー状況は安定している。それは自然エネルギーを大量に導入して、変動型であったとしても自立性が確保できているからだ」</p>
<p>自然エネルギー財団が主催したイベント「自然エネルギー大量導入を実現する電力システムと市場」で登壇したクリストファー・ベッツァウ　デンマーク エネルギー庁 長官はそう話した。</p>
<p>同国は、80年代までは石炭、ガス、石油への依存度が高く集中型発電システムに頼っていたが、自然エネルギーの導入が増えるにつれ、分散独立型になった。送電網も拡充し、他国との連携線も増やしている。</p>
<p>70年代のオイルショック時は、デンマークも原子力発電の導入を検討していた。しかし、原発の是非を国民全体で10年をかけて議論し、導入しないことを決めた。</p>
<p>この議論では環境NGO「OOA」(Oplysning om Atomkraft原子力発電情報協会）の役割が大きかったと、団体を取材してきた北村さんは言う。</p>
<p>原発のメリット、デメリットや賛成・反対の双方の研究者の意見を入れたパンフレットをつくり、各家庭に配り、国民がエネルギー源を自分たちで選べるような情報提供を丁寧に行ったのだ。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/10/22/stekkar.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>70年代の原発の是非を問う運動のシンボルマーク</sup> </div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>組織はヒエラルキーをつくらず、超党派で活動し、フラットでオープン、透明性の高い組織として国民から政治家にも信用された。国民が、原発や他のエネルギー源について理解し、議論を深める装置を数多くつくった。</p>
<p>日本は同じ70年代に原発に舵を切り、今また電力ひっ迫を理由に、政府が新たな原発の創設を進めようとしているが、「国民に対してもメディアに対しても透明性を保った上で、なぜそういう判断なのか説明責任とヒアリング、議論の期間が必須だ」と北村さんは言う。 </p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>電力をバイオガスへさまざまな「Power-to-X」が脱炭素を可能にする</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/10/22/island800.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>デンマークが計画するエネルギーアイランド（Danish Energy Agency）</sup> </div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>現在、デンマークは電力の50%以上を再エネで発電し、エネルギー自給率は6割を超える。</p>
<p>自然エネルギーを導入するにあたって重要なのは「柔軟性」だとベッツァウ長官は強調する。今は天気予報が以前より正確になってきているので、48時間前にエネルギー生産量が予測できる。そのため風力や太陽光の発電量が足りなければコージェネによる発電所を稼働させたり、他国の電力を電力マーケット、もしくは連携線によって調達できる。</p>
<p>もちろん、電力価格も変動するので、「電力供給をベースロード電源を基本に考えるのではなく、バランシングで考えることが重要だ」とベッツァウ長官は強調する。</p>
<p>ガスについては、デンマークで流通するガスの割合の4分の1がバイオガスで構成されるのに加え、備蓄量も95％と豊富にあるので他国よりは余裕がある。ロシアへのガスの依存度は10～15％程度なので、ドイツなどに比べれば少ない。それでも「エネルギー価格は以前の3〜4倍になっている」と北村さんは話す。</p>
<p>デンマーク政府は、10月から公共施設の室内温度は19℃に設定し、室外の不必要な照明も消灯することを決定した。更に、電力市場のセーフティネットを拡充するために1,000億デンマーククローネの国家保証を決定するなど、素早い対応を行っている。</p>
<p>また、力を入れているのが電力をバイオガスなど他の形で使う「Power-to-X」だ。風が強く吹く時などには、余剰電力から水素をつくったり、水素と二酸化炭素からメタンガスをつくったりと違う形にして使う。「ロラン島では、余った電気を熱の形にして玄武岩に貯めて、必要な時に放電するなどの実証実験もまもなく始まろうとしている」と北村さんは話す。</p>
<p>「Power-to-Xが進むと、電力を他のエネルギーの形にして暖房やモビリティにも使うセクターカップリングも広がっていく」（ベッツァウ長官）。</p>
<p>さらに、今後10年をかけて同国はエネルギーアイランドをつくる構想をもっている。北海の人工島に2030年までにまず3GWのウインドファームをつくり、最終的には10GWの洋上風力をつくり、ベルギーなど近隣諸国とつなぐ予定だという。島には、港、ヘリポート、エネルギー貯蔵システム、Power-to-Xシステム、高圧直流送電、宿泊施設などが装備される予定だ。</p>
<p>「エネルギーアイランドと洋上風力を組み合わせることで、グリーン燃料への変換も強化し、自動車、飛行機、船、重工業などこれまで脱炭素が難しかった分野の転換を進めていきたい」とベッツァウ長官はビジョンを語った。</p>
</div>
<p></div>
<p></p>

70年代オイルショック以来、デンマークがエネルギー危機に備えてきたこと、備えること

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/09/26/kitamurasantop.jpg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Image credit: <a href="https://www.istockphoto.com/jp/portfolio/Kapook2981?mediatype=photography">Kapook2981</a></sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ロシアのウクライナ侵略が拍車をかける欧州のエネルギー費高騰が止まらない。</p>
<p>長くロシアからの化石燃料、特に天然ガスに頼ってきた欧州のエネルギー事情とコロナ禍からの経済復調などを背景に価格爆発の様相を呈している。</p>
<p>来年には、英国の一般家庭では、ガスと電気代が年間100万円を超えるという予測が出ている。また、再生エネ電力が半分を占めるドイツでさえも託送料の値上げなどを含めると1kWh当たりで100円という凄まじい数字さえ聞こえてくる。この事態に欧州委員会は緊急対策に着手し、これまでの市場の在り方を覆すドラスティックな提案まで示している。</p>
<p>今回のコラムでは、日本にはあまり伝わっていない高騰の本当の原因と今後想定される日本への影響などを合わせてまとめる。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>止まったロシアからのガスパイプラインと月3万円超えの電気代</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ロシアの天然ガスに頼っていた国の代表格としてドイツがある。2021年の天然ガスのロシア依存度は55％という高さであった。ロシアからの天然ガスは、ノルドストリーム1をメインとするガスパイプラインを通して直接ドイツに運ばれていた。しかし、ロシアはドイツの首根っこをエネルギーで押さえておく脅しとして、送るガスの量をだんだん減らし、8月末にはついにゼロとした。ドイツは、他の欧州諸国に歩調を合わせ、ロシア以外への輸入先転換と需要の削減を進め、下記のグラフのように、8月時点でロシア依存を9％(グラフ最下のえんじ色)にまで減らしている。ちなみに、ノルウェーからが38%、オランダからが24%と共に大きく伸ばしている。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/09/26/kitamurasan1.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>ドイツの天然ガスの輸入先2022年4月〜8月　出典：ARD</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>ドイツ国内の天然ガスの用途は、家庭での暖房などの熱利用と工業用とで合わせて7割を超え、発電に使うのはやや減って12％程度である。それでも、天然ガスをはじめとした化石燃料の高騰などの電気料金への跳ね返りは驚くべきものがある。</p>
<p>ドイツでは、税金など付随する徴収分が大きく、もともと家庭の電気料金は欧州で2番目に高いものであった。値上がりを押さえるために、政府はドイツ版のFIT制度に関する賦課金をゼロにするなどの措置を講じたが、それでも7月の電気料金は、1kWh当たり37.3ユーロセントと軽く50円を超えている。さらに、実勢価格として9月18日時点の料金(新規契約でのkWh価格)は55.6ユーロセントで、ほぼ80円である。</p>
<p>年明けには、系統整備に必要とされる託送料が3倍になるとされていて、これを加えると冒頭示した1kWh100円を軽くオーバーする。標準家庭で年間3500kWh程度(2017年度の日本の一世帯あたりの平均電力消費は4322kWh)の電気を使うとすると、年間35万円以上、つまり毎月3万円を電気だけに支払うことになる。当然ながらガスの料金も上がっていて、もう支払えないという声が現実味を帯びて聞こえる。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>高騰の要因となった、気候変動と原発の発電不振</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>欧州の電力卸売市場は、昨年前半までは非常に落ち着いていた。例えば、2019年の平均の価格が、ドイツで1kWh、3.8ユーロセントと5円強であり、他の欧州諸国もせいぜい6円～7円であった。ところが、それが2020年の後半から激変する。</p>
<p>コロナ後の経済回復や脱炭素の急進行による化石燃料の不足などで、卸売市場は上昇しはじめ、今年2月末のロシアの侵略でさらなる急騰を迎える。夏にはそれが加速して、50ユーロセントが常態化して時に80から100ユーロセントをつける事態になった。つまり、市場価格が10倍以上になったのである。</p>
<p>ベースにあるのは、ロシアを排除することによる天然ガスの“不足”であるが、この夏の高騰要因には温暖化の影響が色濃く出始めていた。何度か日本のニュースでも取り上げられた、欧州を襲った熱波がそれである。</p>
<p>エアコンの普及率が10％台しかない欧州で40度を超える高温が発生し、干ばつまで招いた。水不足は、欧州全体の発電の屋台骨の一つ、水力発電に大きな影響を及ぼすことになる。下の図は、欧州27ヵ国の発電量を、電源別に2021年(1月～8月)と比較したものである。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/09/26/kitamura2.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>EU27ヵ国の発電量(1月〜8月まで)、2021年と2022年の差　出典：Ember</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>左から2番目の水力(青)が21年に比べて62TWh減ったことを示している。最大の水力発電国、ノルウェーへの影響にとどまらず、各国の水力発電は軒並み発電量を減らした。</p>
<p>もうひとつ、発電量がマイナスになった電源が最も左の原発(紫)で、さらに大きい70TWhの減である。それらを太陽光と風力発電の再生エネ電源(緑)が半分カバーしている。また、茶色の石炭とグレーの天然ガス発電も電力量補填の重要な役割を果たしている。ところが、この化石燃料が、ロシア制裁などの絡みで暴騰しているのはご承知の通りで、今年の夏に暴発した価格の要因となったのである。</p>
<p>では、原発からの電力が減ったのはなぜであろうか。</p>
<p>欧州最大の原発大国であり、電力輸出国であったフランスの原発(合計56基)が故障続きで、半分以上が点検や修理で稼働していないことが主たる理由である。このため、フランスは周辺諸国からの電力輸入に頼ることになり、市場価格をさらに押し上げている。</p>
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/09/26/kitamurasan3.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>フランスの原発による発電量2020,21,22　出典：IWR、ENTSO-E</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>上図でわかるように、2022年のフランスの原発による発電量は昨年、一昨年をかなり下回っている。フランス政府は、年末までの回復を目指すが、どうやら思うような復帰は見込めないという声がすでに出ている。</p>
</div>
<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>欧州の緊急対策と日本への影響</h2>
</div>
</div>
<div class="elem_paragraph">
<p>国民が支払えないような光熱費が迫る中、各国政府や欧州委員会も対策を打ち出し始めている。生まれたばかりのイギリスの新政権は、現状の光熱費をこれ以上は上げないとし、そのためにおよそ25兆円を拠出すると発表した。</p>
<p>また、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、以下のような提案を示している。</p>
<p>①卸売市場での再生エネと原発電源の取引に上限を設定(1kWhあたり18ユーロセント)<br />
②超過利益をあげているエネルギー企業に、一定割合の利益の拠出を求めること<br />
③全電力需要の10％削減とピーク時の5％削減</p>
<p>これらを合わせてうまれるおよそ20兆円の収入を、各国の企業や家庭などの支援に用いるとしている。これらが実施されれば、例示したイギリスやドイツなどのエネルギー費の上昇は緩和される可能性がある。</p>
<p>日本への影響は主に、2つの方向性の中にある。</p>
<p>一つは、エネルギー価格への影響である。</p>
<p>欧州で起きたこの夏の高騰要因は、熱波と原発の発電不振とヨーロッパ固有のものでもあった。しかし、ロシアからの天然ガスの代替として欧州諸国は別の輸入先を求めて、すでにアジアのLNG市場などにも手を伸ばしており、今後天然ガスの奪い合いは、苛烈を極める可能性が高い。つまり、熱波などの季節要因が取り除かれたとしても、天然ガスの価格が大きく低下することは期待しにくい。さらに、日本には円安という固有のマイナス要因が存在する。</p>
<p>もう一つは、欧州が取る高騰対策である。</p>
<p>市場価格の上限設定や過剰利益の拠出など自由市場から離れる施策は、一時的な緊急対策とされている。しかし、今後、日本の電気代などエネルギー費がさらに上昇する可能性は高く、その時に先例の対策として比較されることになる。</p>
<p>いつまでもガソリン代の補填(ほてん)のようなバラマキと脱炭素に逆行する施策だけを続けることは不可能であろう。日本でも、財源を含めた高騰対策の要請がもう目の前に迫っている。</p>
</div>
<div class="elem_block">
<div class="inner">
<div class="elem_paragraph">
<p>関連記事<br />
・ <strong><a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1210948_1534.html">地域金融機関が目指す、脱炭素と経済循環の両立　秋田・北都銀行の取り組み</a></strong><br />
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・<strong> <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1208049_1534.html">ドイツ、脱炭素への厳しい道のり②ロシアに頼ったエネルギー政策の失敗</a></strong></p>
</div>
</div>
</div>
<p></p>
</div>
<p></p>

欧州を襲うエネルギー費高騰の嵐　原因と緊急対応の実際と日本への影響

<p></p>
<div class="blockTemplateArea"></p>
<div class="elem_paragraph right">
</div>
<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/09/22/kitamurasantop.jpg" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>Image Credit：<a href="https://www.istockphoto.com/jp/portfolio/nattya3714?mediatype=photography">nattya3714</a></sup></div>
</td>
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</tbody>
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<p>脱炭素社会に向けて、先進企業は国際的な競争から取り残される危機感に迫られ、「脱炭素経営」に大きく舵を切り始めている。一方で、前回お伝えしたように、地方自治体の中には脱炭素へのモチベーションが高まらず、何から始めるかさえ迷っているところも珍しくない。</p>
<p>突破口の一つは、政府が示す「地域脱炭素ロードマップ」にある。地域内の金融機関や中核企業など自治体と連携する地域内での実施体制が鍵となる。</p>
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<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
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<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/09/22/kitamurasan1.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>脱炭素ロードマップの「地域の実施体制構築」 出典：国・地方脱炭素実現会議</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
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<div class="elem_paragraph">
<p>今回のコラムでは、秋田県の地銀である北都銀行の地域のカーボンニュートラルと経済循環に向けた取り組みをご紹介する。これこそ、地域でのソリューションの有効な実例である。</p>
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<div class="elem_heading_lv2">
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<h2>県人口が100万人を割る危機感と再生エネのポテンシャルへの期待</h2>
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<div class="elem_paragraph">
<p>北都銀行は、130年近い歴史を持つ秋田市の地銀である。預金等残高、貸出金残高共に県内比率が9割を超え、まさしく地域に寄り添う金融機関である。</p>
<p>秋田県を巡る各種の統計は、急激に悪化している。2020年に人口100万人を割り込み、逆に高齢化率は40％に迫る。県内の事業所数は、21世紀に入り3割程度も減っている。地域経済の縮小はそのまま地域金融機関の衰退につながると、北都銀行地方創生室の責任者は、危機感を持って語る。この根源的な地域課題の解決には、地域で持続可能な新しい産業の創出を行うことが必要だと確信したという。同行では、秋田県の持つ優位性の一つである再生可能エネルギーのポテンシャルにその思いを託した。</p>
<p>その結果、北都銀行の再生エネ事業へのプロジェクトファイナンスはこの10年で大きく増加し、融資残高の比率は全国の地銀の中でも突出して高い14％である。</p>
</div>
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<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/09/22/kitamurasan2.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>再生エネのプロジェクトファイナンスと融資残高：北都銀行資料</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
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<div class="elem_heading_lv2">
<div>
<h2>発電事業会社「ウェンティ・ジャパン」の設立と成果</h2>
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<div class="elem_paragraph">
<p>特徴的なのは、自らが出資をして、風力発電の事業会社を立ち上げたことである。10年前の2012年9月に、同社のグループと地元の設備関連の企業などと一緒に、風力発電事業会社「株式会社ウェンティ・ジャパン」を立ち上げた。日本海側の優れた風を利用して、風力発電の開発、運営、管理などを行うことを目的としている。地域資源の有効利用と地域内での経済循環を起こすことが、人口が急減する秋田県の地方銀行としての重要な役割であるとの強い考えが風力発電事業会社に行き着いたのである。</p>
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<table class="elem_pik_box" summary="">
<tbody>
<tr>
<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/09/22/kitamurasan3.png" alt="" /></div>
<div class="m_paragraph"><sup>ウェンティ・ジャパンがメイン参加する「秋田潟上ウインドファーム」 撮影：筆者</sup></div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
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<div class="elem_paragraph">
<p>事業は順調に進んでいる。秋田県内の36基を含む、風力発電38基をすでに稼働させ、合計の発電能力は100MWを超えた。中でも秋田市から潟上市にかけての風力発電プロジェクト「秋田潟上ウインドファーム」では、合計22基が海岸沿いに並び、66MWの発電能力を誇っている。事業主体のSPC(特別目的会社)への出資比率は、ウェンティ・ジャパンが51％、残りは三菱商事の関連会社などとなっている。</p>
<p>このほか、先日、三菱商事が中心となって落札した洋上風力プロジェクトの一つ、秋田県由利本荘市沖の事業主体にも参加し、別に市民出資による風力発電事業も積極的に進めている。</p>
<p>重要なポイントがある。</p>
<p>脱炭素の達成には再生エネの拡大が必須であるが、事業の仕組みによっては、地域経済への効果が高まらない可能性がある。再生エネ事業を行うプレーヤー(事業者、建設、ファイナンスなど)の大半が地域外であれば、多くのお金は地域に落ちない。</p>
<p>こんな例の挙げ方で申し訳ないが、青森県の風力発電で説明しよう。青森県の風力発電の導入や発電実績は確かに、日本1、2位であるが、事業者の97％は県外のため、地域への経済効果は大きくない。</p>
<p>北都銀行が進める秋田県での風力発電のプロジェクトの参加者の多くが地元で、もともとの目的「地域で持続可能な新しい産業の創出」に合致したものであるのと対照的である。</p>
<p>また、北都銀行は、一民間企業として銀行自身の脱炭素にもたいへん熱心に取り組んでいる。2021年1月には、地方銀行で初めて、また、秋田県でも初となる『再エネ100宣言 RE Action』に参画し、2050年までの再生エネ電源への転換を表明している。</p>
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<h2>次々立ち上がる、地方銀行による再生エネ発電会社</h2>
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<p>この春から、再生エネ発電を行う事業者になぜか地方銀行の子会社が次々と加わっている。この背景には、昨年に銀行法が改正されて、銀行の業務範囲が大きく変わったことがある。</p>
<p>5月以降、島根県の山陰合同銀行、茨城県の常陽銀行、長野県の八十二銀行が小会社として発電事業会社の設立を発表するなどし、先日は群馬銀行が地元の再生エネ事業者などと共同出資での設立を終えた。</p>
<p>今後、脱炭素ロードマップにあるような、国も求める、地域主導の再生エネプロジェクトは、ますます増えることになるであろう。脱炭素と地域活性化の二兎を追うことは、決して珍しいものではなく、地域での主流になることを期待したい。</p>
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<p>関連記事<br />
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・<strong> <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1207953_1534.html">ドイツ、脱炭素への厳しい道のり① 再生エネ拡大のチャレンジは成功するか</a></strong><br />
・<strong> <a href="https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1208049_1534.html">ドイツ、脱炭素への厳しい道のり②ロシアに頼ったエネルギー政策の失敗</a></strong></p>
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地域金融機関が目指す、脱炭素と経済循環の両立　秋田・北都銀行の取り組み

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<tbody>
<tr>
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<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/08/15/minowasan.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>写真：Oran Viriyincy</sup></div>
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<div class="elem_paragraph">
<p>6月末の観測史上初となる猛暑で、東京電力管内では「需給ひっ迫注意報」が発令された。今年3月に次ぐ電力ひっ迫だったが、供給側の対策に加えて、需要側の調整によるデマンドレスポンス(DR)が大きな効果を生んでいることがわかった。WWFジャパンが主催したウェビナー「電力需給ひっ迫にどう対応するか？」では、システム技術研究所(東京・文京)による気象データのシミュレーションの分析などから、再生可能エネルギーへの移行期の即効薬としてDRが重要であることを明らかにした。鉄鋼メーカー東京製鐵は、電力ひっ迫を避けるために実際に行ったDRの方法や効果を発表した。電力の余剰時にはたくさん使い、不足時は節電するシンプルな方法ともいえるDRは、大きな投資や新たな設備増設を必要としない一方、効果は明確で、電力不足を回避する方法として見直されている。(環境ライター 箕輪弥生)</p>
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<h2>年に数時間の電力ひっ迫回避のために原発が必要か</h2>
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<p>世界的な気候変動、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響により、電力不足が懸念されている。経産省は6月27日から30日まで「需給ひっ迫注意報」を発令したが、この原因を分析してみると、いくつかの予期しない事情が重なったことがわかった。それは、記録的な空梅雨と6日連続で猛暑が続いたことに加え、7～9月の電力需要期を前に、多くの発電所が補修点検中だったことだ。</p>
<p>需給がひっ迫したのは東京の夕方から夜にかけての数時間だけだった。昼間に電力ひっ迫が起こらなかった理由は、太陽光発電の普及が大きい。太陽光は昼間に多く発電し、日中ピーク時の太陽光からの出力は1300万kWを超えて主要な供給力となっているからだ。</p>
<p>3月のひっ迫時は地震による648万kWの発電所停止や連携線のトラブル、異常低温などが重なった。この際、デマンドレスポンスによって最大352万kWが節電され、中でも高圧産業用電力の節電量は85万kWh、節電率は7％と高かった。節電量が最大だったのは17 時～18 時の間で約8％の節電だった。</p>
<p>システム技術研究所の槌屋治紀所長は、全国842カ所のアメダスのデータを使った電力需給シミュレーションによって、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが多く導入されると、夕方に数時間電力不足が起こりやすくなることをすでに2013年から予測していた。槌屋所長は「まずは揚水発電によって夕方の電力不足をカバーすると同時に、太陽光発電予測の精度向上とDRによってリスクを回避することが重要だ」と話す。</p>
<p>ウェビナーを主催したWWFジャパンの小西雅子 環境・エネルギー専門ディレクターは、「年間数時間だけのために、原発や火力発電所を新増設してまで用意しておくのは高価な対策になり、それは結局国民の負担になる」と説明する。</p>
<p>現在、岸田政権は、今後できるだけ多くの9つの原発を稼働させる予定だが、「これらの原発はすべて西日本にあり、東日本の冬の電力ひっ迫には間に合わない」(小西ディレクター)。</p>
<p>そもそも、電力消費量は省エネの推進により2010年比で10%削減しており、さらなる省エネや地域間連系線の増強による広域運用、デマンドレスポンス、自家発電の活用などにより、再生可能エネルギーを中心とする電源構成までの移行期を乗り切れるはずだというのがWWFジャパンの分析だ。</p>
<p>これを裏付けるのが、システム技術研究所の槌屋所長らの再生可能エネルギーの導入シミュレーションだ。同研究所によると、1日の中では日中、季節では春夏に発電量の多い太陽光発電と、その反対に1日中平均して発電し冬に発電量が増える風力発電を組み合わせると、電力の供給が安定し、不足が生じる可能性は少なくなるという。</p>
<p>槌屋所長は「それぞれの地域で風車と太陽光発電を活用すると、日本全体で均一化されていく」と予測する。</p>
</div>
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<table class="elem_pik_box" summary="">
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<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/08/15/minowasan1.jpg"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>太陽光発電と風力発電はお互いを補完する発電システムとなる (グラフ：システム技術研究所)</sup></div>
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<h2>需要側のDRに対するインセンティブを明確に</h2>
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<p>鉄鋼メーカーの東京製鐵はこれまで電力料金の安い夜間や休日に集中的に電気炉を稼働させていたが、九州電力から太陽光発電量が増える春や秋の昼間の余剰電力の利用をリーズナブルな価格で提案され、2018年から「上げDR」(電気の需要量を増やすこと)を行っている。昨年はこの調整により累積で540万kWhの余剰電力を吸収した。</p>
<p>今年3月22日の電力ひっ迫時には、東京電力から前日の昼に節電の要請があり、緊急対応で操業のスタートを数時間遅らせ、使用する電力量を落とした(下げDR)。この日の操業抑制によって生まれた10万kWhのDRは管内の節電量の0.3%に相当したという。</p>
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<div class="elem_pik_box full">
<table class="elem_pik_box" summary="">
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<td class="elem_pik_box">
<div class="pik"><img decoding="async" alt="" src="https://cms.sustainablebrands.jp/article/story/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/08/15/minowasan2_1.png"/></div>
<div class="m_paragraph"><sup>資源エネルギー庁「2022年3月の東日本における電力需給ひっ迫について」資料より</sup> </div>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</div>
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<p>東京製鐵は電気炉で鉄スクラップを溶かして鉄鋼製品を製造・販売するメーカーだが、比較的柔軟な生産体制で、1日、1時間単位で操業を調整できる。「製品の納期や品質は守らないといけないが、脱炭素や電力系統の安定に寄与するメニューであれば今後もDRに協力していきたい」と同社の奈良暢明取締役は話す。</p>
<p>その場合、「経済的なメリットがあることによって、需要側が経済面と環境面を両立していけることが必要だ」と奈良取締役は訴える。</p>
<p>WWFジャパンの小西ディレクターは「企業は需要調整をビジネス価値としていく発想が重要だ」と話し、同時に需要側のインセンティブがきちんと制度化されることの必要性を指摘した。</p>
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