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  • 公開日:2024.12.11
  • 最終更新日: 2025.03.27
デューデリジェンス義務化で「スマート・ミックス」が焦点に――国連ビジネスと人権フォーラム2024開催

    Image credit:Landiva Weber

    今年も11月下旬に、国連ビジネスと人権フォーラム2024がスイス・ジュネーブで開催された。初日には、デューデリジェンス義務化について、企業の自発的取り組みと法的措置を組み合わせる「スマート・ミックス」のテーマが焦点となった。登壇者からは法律による強制を伴わなければサプライチェーンにおける人権は改善しないという声が上がるなど、熱心な議論が展開された。初日セッションの概要を報告する。(翻訳・編集=遠藤康子)

    今は亡き国際政治学者ジョン・ラギー氏は2019年、ビジネスと人権尊重の両立を目指して、企業の自発的取り組みと法律による強制的措置を賢く組み合わせる「スマート・ミックス」というコンセプトを打ち出した。これにより、この問題を巡って企業と他の利害関係者の間に横たわっていた数十年に及ぶ根深い対立は終結へと向かった。ラギー氏は、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」の起草者でもあった。

    2024年11月25~27日に第13回目となる国連ビジネスと人権フォーラムが開かれた。初日のセッションでは、ラギー氏が提唱したこの「スマート・ミックス」というコンセプトそのものが再検討された。そして、デューデリジェンス義務化という大きな世界的流れによって、これまでのコンセンサスが危うくなるのではないかという問題提起がなされた。

    ところが、このセッションで、世界的サプライチェーンにおける人権の尊重を確実なものにするためには、新たな規制こそが企業にとっての次なる正しいステップだと断固主張したのは、他ならぬビジネスリーダーたちだった。

    最も声高に主張したのは、米アパレル会社コトパクシのインパクト&サステナビリティ担当上級ディレクター、アニー・エイグル氏だ。「こうしたことをあまり言いたがらない企業もありますが、私はここではっきりと申し上げたい。サプライチェーンは不正や虐待だらけで、改善すべき点がまだまだあります」。コトパクシは大量生産で生じた余剰素材を利用するアウトドアブランドだ。

    企業が個別に制度上の問題を解決しようとしても絶対にうまくいかない、とエイグル氏は主張。企業努力だけでなく、政府による強制的措置を組み合わせたスマート・ミックスがどうしても必要だと訴えた。

    「私たち企業は、それぞれ特定の状況において改善を目指し努力してきました。それでも結局は2年前に、前進するためには志を同じくする企業が結集して事業者団体と協力し、政府に労働法の強化を迫るしかないとの決断に至りました」とエイグル氏は振り返る。そして、自社製品を生産する台湾メーカーを例に挙げ、移民を搾取する強制労働という問題に企業が独力で対応するのは難しく、政府レベルでのみ解決が可能だと述べた。

    これと同じ考えを表明したのは、国連グローバル・コンパクト事務局長サンダ・オジアンボ氏だ。デューデリジェンス義務化への動きは「否定し難い」ものであり、「インパクトを推進するのは厳格な措置だ」と主張した。同氏はフォーラムの席上で、「障壁の先を見据え、機に乗じなくてはならない」と訴えた。

    初日セッションの主なテーマ

    政府によるデューデリジェンス強化か否かを問う議論に加え、次のような主要テーマも取り上げられた。

    必要なのは法の整合性と適用時の国際協力

    デューデリジェンスを義務付ける新たな法律について理解を深め、より効果的に実装していくため、ならびに規制適用にあたって国際協力を拡大していくためには、パッチワークのような寄せ集めではなく、整合性のある法律が必要だという声が繰り返し上がった。

    欧州連合(EU)の「企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)」は、欧州議会内で紛糾していたにもかかわらず、「最終決定」として提示された。適用の開始は2025年7月の予定だ。

    欧州委員会のディディエ・レンデルス司法担当委員(11月末で退任)はこのフォーラムにビデオメッセージを寄せ、欧州企業は公正さを欠く契約を盾にして責任転嫁することができなくなると主張した。また、大企業は自身のバリューチェーンに投資することと、欧州内外の小規模企業がCSDDDを順守できるよう支援することが求められると述べた。

    レンデルス氏はさらに、EUが自ら率先して国際パートナーと手を組み、CSDDDを実施していくと約束した。新たなデューデリジェンス規制を巡っては、国際協調が次なる段階で重要な役割を果たすことになるだろう。

    さらに経済協力開発機構(OECD)は、デューデリジェンスを効果的に実施する上で認証制度やほかの持続可能性イニシアチブが果たす役割をまとめた新文書を公表した。また、デューデリジェンスに関する包括的な「協力政策プラットフォーム」の新設を発表した。世界各国政府に開かれたプラットフォームで、2025年3月に初会合が予定されている。

    OECDの責任ある企業行動センター(Center for Responsible Business Conduct)を率いるハンナ・ケップ=アンドリュー氏は、新たな規制の動きに関する議論の中で、すでに順守を求められている原則を企業が一層着実に実施することが重要だと主張した。

    国連ビジネスと人権に関する指導原則、ならびに『責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス』は、自発的措置と強制的措置の共通土台となっている。これは変わっていません」とケップ=アンドリュー氏は述べた。

    持続可能な発展への訴え

    初日セッションの最後には、コンゴ民主共和国の人権相シャンタル・ムワヴィタ氏が、グローバル・サウスにおける人権の尊重は貿易関係の改善を伴うものでなければならないと強調し、新たな重要課題を提示した。また、国連人権高等弁務官ヴォルカー・ターク氏も、「人権経済」をテーマにしたスピーチを行った。

    いま、フォーラムの直前に開催された国連気候変動枠組条約第29 回締約国会議(COP29)では、気候資金を巡る先進国と途上国の溝があらわになり、失望が広がった。それを踏まえると、人権と経済を巡る議論はまだまだ続いていくだろう。

    広がるデューデリジェンス義務化への支持

    全般的に見ると、企業に人権デューデリジェンスを義務付ける新時代で何よりも重要となるのは、「有効性」だとする考えが広く支持されているようだ。

    企業がデューデリジェンス義務化に反発する方向へと後退する可能性については、議論されるべき点でありながら、取り上げられることはなかった。スマート・ミックスのさらなる進化に希望が持てるかたちで、初日セッションは幕を閉じた。

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