![]() Image: Bluewater Sweden
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仏トゥールーズ大学の新たな研究によると、同国の10種類のペットボトル飲料水とトゥールーズの水道水に含まれるマイクロプラスチックの98%が、EUの飲料水規約の基準(20~5000マイクロメートル)では検出されない小さなサイズであることがわかった。直径1~20マイクロメートルのマイクロプラスチックは腸を通って血液や臓器に達する可能性がより高く、健康リスクも高まることから、研究者らは基準の見直しを求めている。(翻訳・編集=小松はるか)
今年1月、水資源や水文学など水に関する学術誌『PLOS Water』に警戒すべき研究が掲載された。フランスの飲料水は、20マイクロメートル未満のマイクロプラスチックで飽和状態だという。このような微粒子は、人間の血液や臓器に浸透するのに十分な小ささでありながら、EUの「飲料水指令2020/2184」における現在の検出方法の閾値を下回っており、水の安全規制に重大な見落としがあることを示している。
トゥールーズ大学の生物多様性・環境研究センターと地球科学環境研究所による調査は、10ブランドのペットボトル入り飲料水とトゥールーズの水道水のサンプルを分析。1リットルあたり19〜1154個のマイクロプラスチックを検出したという。
最も一般的なポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリアミド6(PA6)を含む17種類のポリマーが特定され、製造や水をくむ過程で混入していることが分かっている。容器に使用されているポリエチレンテレフタレート(PET)は10ブランドのうち7ブランドのペットボトル飲料水に含まれていたが、その量は大抵少なく、ボトル自体がマイクロプラスチック汚染の主な原因ではないことを示していた。
調査によると、トゥールーズで販売され、飲まれている11の飲料水サンプルに含まれるマイクロプラスチックの98%は直径20マイクロメートル未満で、水の安全性に関するEUの指令では小さすぎて検出できず、さらにその存在や健康リスクがかなり過小評価されていることが明らかになった。
静かな健康危機
トゥールーズ大学の研究はフランスに焦点を当てているが、マイクロプラスチック汚染は世界的な問題だ。2023年のある調査によると、171兆個のマイクロプラスチック粒子が、海の環流から淡水湖にいたるまで世界の河川に浮いていると予測される。マイクロプラスチック粒子は、大きなプラスチックくずや合成繊維、パーソナルケア商品に含まれるマイクロビーズなどのさまざまな発生源が分解されることで生じ、環境中からの回収・除去が難しいことで知られている。
オーストラリアのニューカッスル大学がWWF(世界自然保護基金)のために実施した2019年の研究によると、平均的な人間は毎週およそ5グラムのプラスチックを摂取しており、それはクレジットカード1枚分に相当する。研究者は、人間や動物の健康、環境の健全性への影響を研究し続けているが、マイクロプラスチックは身体の自然防御機能を突破し、重要な臓器に蓄積し、炎症や毒性、慢性疾患を引き起こす可能性がある。
この研究結果に対し、家庭や企業向けの浄水器・ろ過装置のメーカーのブルーウォーター社(スウェーデン)は、世界中の政府や規制当局、産業界に対して公衆衛生を守るために断固とした態度をとるよう呼びかけている。ブルーウォーターの創業者でありCEOのベント・リトリ氏は、こうした問題に対応しないことは、人の健康や環境の安定性に壊滅的で長期的な結果をもたらす可能性があると警鐘を鳴らす。
「極小マイクロプラスチックによる人間の腸や血液、その他の臓器の汚染を止めるための取り組みが機能していなければ、規制基準や公衆衛生の保護に対する疑問を直ちにもたらすことになります。これは極めて重大な結果を伴う目に見えない危機です。EUやその他の国・地域の時代遅れの検出基準は、数百万人の命を危機にさらしています。私たちは有害性に関するさらなる証拠が出てくるまで何もせずに待つことはできません。さまざまな研究から、世界的には、プラスチックのうちリサイクルされているものはわずか9%しかないことが分かっています。マイクロプラスチックは飲料水にも食事にも空気中にも存在します。今こそ行動する時です」
ブルーウォーターは、世界的な飲料水のマイクロプラスチック汚染と闘うための、緊急かつ全面的な改革を呼びかけている。
検出基準を更新する
EUや他の国・地域の機関は、20マイクロメートルより小さな微粒子も含まれるようにマイクロプラスチックの検出閾値を下げ、飲料水の包括的な検査を義務づけなければならない。
高機能のろ過技術を採用する
マイクロプラスチックを除去できる、ろ過技術を備えた実証済みの課題解決型の商品が、家や職場、公共の場における水の安全性を確保するための業界基準になるべきだ。
国民の意識を高める
消費者は自らが飲んでいる水の中に何が入っているかを知る権利がある。政府や産業は透明性を優先し、リスクや解決策について啓発する必要がある。
ブルーウォーターは国際的な規制機関に対しても同様の措置を講じ、利便性よりも公衆衛生を優先するよう呼びかけており、より厳格な基準や革新的な水処理技術への投資を働きかけている。
リトリ氏はさらに「各国の政府は、清潔で安全な飲料水はぜいたく品ではなく、基本的人権であると認識すべきです。これはフランスやEUだけの問題ではありません。世界規模での行動を呼びかけたいと思います。いま人や地球の健全性を守るために動かなければ、私たちにとって最も重要な資源である水を、健康を害するものに変えてしまう危険性があります」と語っている。