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  • 公開日:2025.02.26
  • 最終更新日: 2025.03.28
企業は連携して生成AI利用のフットプリントを算定すべき――仏コンサルがレポートで提言

Image: Brett Sayles

仏コンサルティング会社が世界各国の経営層に対して実施したアンケート調査で、約半数の回答者が、生成AIの使用によって自社の温室効果ガス排出量が増えていると回答した。しかし、生成AIを使っている企業の経営層のうち、それに伴う環境負荷を算定していると回答したのは12%にとどまった。AIの環境負荷には、電力消費に伴う炭素排出、水などの資源消費、使用済み機器の廃棄などがある。影響を正しく把握して緩和し、サステナブルに活用するために、産業全体での協働や基準作りが必要だ。(翻訳・編集=茂木澄花)

仏コンサルティング会社の社内シンクタンク、キャップジェミニ・リサーチ・インスティテュートは、新たに発表したレポートで、企業における生成AIの導入が爆発的に増えていることを示した。生成AIの使用が環境にもたらす影響は甚大で、拡大を続けており、企業のサステナビリティ目標の達成が危ぶまれている。しかも、多くの企業がその影響を適切に把握できていないのが現状だ。AIの持つ、事業成長を加速させる力と、環境にもたらす悪影響を比較して、対応に迷っている企業もある。そうした中、今回のレポートは、持続可能で責任ある生成AI戦略を立てるための大きな方向性を示している。

生成AIはもろ刃の剣

このほど発表されたレポート「Developing Sustainable Gen AI(持続可能な生成AIの発展)」は、2024年8月に世界各国の経営層に対して実施されたアンケート調査が元になっている。対象は、北米、欧州、アジア太平洋15カ国12セクターの、年間売上高が10憶ドルを超える企業の経営層2000人。生成AIに関する自社の戦略や取り組みに加え、環境や社会に対するサステナビリティの取り組みを「適切に」「よく」または「非常によく」把握している人たちだ。

同レポートでは、生成AIの導入が急速に進んでいることが示された。以前キャップジェミニが実施した調査によれば、2023年末時点で、職能や拠点間で統合した生成AIを導入している企業は6%だった。今回、2024年10月までに、その数値が24%に上昇したことが分かった。確かに、AIは持続可能な事業成長の推進力にもなり得るため、企業はさまざまなサステナビリティの取り組みに活用している。コミュニケーションにおけるグリーンウォッシュの検出と修正、工程内で発生する食品ロスの削減、倫理的で透明性のあるサプライチェーンの構築など、活用の幅は広い。

しかし、生成AIは膨大な量のデータを処理しなければならず、相当な演算能力が必要なため、大量の電力や水などの資源を消費する。また、生成AIハードウェアの寿命は限られているため、テック産業における電気電子機器廃棄物(E-waste)問題はさらに悪化するだろう。2024年10月の調査で、生成AI関連の廃棄物は2030年までに1000倍に増えると予想されている。

今回のレポートによれば、半数近く(48%)の経営層が「AIの導入によって自社の温室効果ガス排出量が増加している」と回答した。その増加幅は今後拡大することが予想されている。すでに生成AIのフットプリントを算定している企業は、合計炭素排出量のうちAI使用に伴う排出量の占める割合が、今後2年間で2.6%から平均4.8%まで増えると予想する。この影響を緩和するため、再生可能エネルギー源への切り替えと、AIインフラの最適化を進める企業が増えている。

生成AIがサステナビリティに与える影響を考慮している企業はわずか

企業のサステナビリティ開示は、急速に進む生成AI関連のイノベーションに追いついていない。生成AIを使用している経営層のうち「AI使用による環境負荷を算定している」と回答したのはたった12%で、「環境への影響を認識している」と回答したのも38%にとどまった。また、企業が生成AIモデルを評価する際に検討する主な項目は「性能」「大規模な使用が可能かどうか」そして「費用」であり、「サステナビリティ」はあまり重視されていない。経営層の半数以上が「生成AIのベンダー選定において、サステナビリティを主要な判断基準にすることで、環境負荷を減らせる可能性がある」と認識している。しかし、生成AIモデルを選定または構築する際の上位5つの要素に「生成AIの環境負荷」を挙げているのは、全体の5分の1にすぎない。

生成AIを選定または構築する際、現時点では金銭的な費用が最も重視されているかもしれない。しかし、今回のレポートは、生成AIモデルによる資源消費が、自社の利益に与える影響を理解することが重要だと指摘する。

生成AIの影響を適切に算定・報告するために、産業全体でサポートが必要

生成AIが環境に与える影響への認知拡大に伴い、3分の1近く(31%)の企業が、生成AIのライフサイクルにサステナビリティ施策を組み込もうと、取り組みを進めている。また、半数以上がすでに比較的小規模なモデルを使用しているか、生成AIのインフラに使用する電力を再生可能エネルギーで賄っている(12カ月以内に再生可能エネルギーに移行予定の企業を含む)。

しかし、経営層が生成AIの環境負荷問題に取り組もうとしても、AIモデルを提供するパートナー企業に依存する部分が大きい。ゼロから自社用モデルを開発している企業はたった4%で、(パートナー企業の)事前学習済みモデルを使用している企業が4分の3以上だからだ。実際、約4分の3の回答者が「AIの環境負荷を算定することは難しい」と考えている。その理由は、パートナー企業からのデータ提供が不足していること、透明性が不十分なこと、業界に環境負荷を算定する方法論がないことだ。

世界的な物流会社であるキューネ・アンド・ナーゲルの最高デジタル責任者(CDO)兼シニア・バイスプレジデントであるニクラス・スンドベリ氏は次のように指摘する。「コパイロットやチャットGPTに『最近入力したクエリのカーボンフットプリントは?』と聞いてみることはできますが、今のところ、その質問に答えてくれるツールはありません」

グーグルは、同社の2024年版環境レポートで「AI使用の増加を支えるためにデータセンターを拡大したことが原因で、排出量が4年で48%増加した」と明らかにした。このため、同社の事業活動とバリューチェーン全体で2030年までにネットゼロ排出を達成するという目標はすでに「非常に野心的な目標」となっており「(グーグルは)非常に不確実な状況の中を進んでいかなければならない」ことも認めている。

グーグルはレポートの中で次のようにも述べている。「グーグルは、前向きな変化を促進するというAIの可能性に、引き続き楽観的な見解を持っています。一方で、AIが環境に影響を与え得ること、そして変化し続ける状況の中で前進するには協力が必要であることもよく分かっています。AIが環境に与える影響を、責任をもって管理するために、私たちは(1)モデルの最適化、(2)効率的なインフラ、(3)排出削減という3つの戦略に取り組んでいます」

サステナブルで責任ある生成AI使用のための指針

「生成AIを持続可能な事業価値を生み出す力にしたいなら、データの協働について、市場の議論が必要です。AIの環境負荷を算定して報告する方法について、産業全体での基準を作成すべきです。それによって企業のリーダーたちは、多くの情報に基づいた責任あるビジネス上の意思決定をすることが可能になり、影響を緩和することができます」。こう話すのは、キャップジェミニでグローバル・サステナビリティ・サービスおよび企業責任部門の責任者とグループ執行役員を務めるシリル・ガルシア氏だ。「このレポートでは、ビジネスリーダーたちが生成AIなどのテクノロジーを最大限活用し、組織、社会、そして地球に良い影響を与えるために取るべき実践的なステップを示しました」

同レポートは、SustainableIT.orgの「責任あるAIの枠組み」にも通じる部分があり、企業に次のようなことを提案している。

・生成AIのプロジェクトを開始する前に、その財務的なROIと環境負荷の両方を徹底的に評価すること。生成AIアプリケーションのROIを計算する際には、資源消費も関連する要因として考慮すべき。

・細かく調整した小規模なモデルを選ぶことに加えて、現状において、生成AIが必要かどうか、それとも生成AIほど資源を消費しないテクノロジーで事足りるのか検討すること。複数のモデルを用いることで、レイテンシー(待ち時間)、正確性、カーボンフットプリントを幅広く使い分けることもできるだろう。エージェント型AI(自律的に判断する機能を持つAI)を使用することによっても、費用を最少化し、エネルギー使用を抑えられる可能性がある。

・AIのライフサイクル全体を通して賢く選択し、サステナブルな使い方をすること。ハードウェア、モデルのアーキテクチャ(設計・仕様)、データセンターのエネルギー源、持続可能な使用方針など。

今回のレポートでは、生成AIが環境に与える影響をしっかりと把握し、緩和することの重要性が強調された。また、サステナブルな生成AI使用を実現するためには、効果的な使用方針と、生成AIに関わる産業全体での協働も重要だ。金銭的な費用と炭素による影響は密接に関連している。その両方に対策を講じることで、イノベーションを促し、業績を改善し、生成AIを真に持続可能なツールにすることができる。

※出典:Capgemini Research Institute

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