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「TOBA TOBA COLA」は、日本列島南部の喜界島で作られているクラフトコーラシロップだ。TOBA TOBAとは島の方言で“うきうき”という意味。6305人(2024年11月)が暮らす島の方言は、ユネスコにより消滅危機言語に指定されている。喜界島出身の甲原真子(こうはら・なおこ)さんと夫の和憲さんは2020年から、島で食べられずに放置されていた在来種みかん“シークー”と島のきび糖、14種のスパイスとハーブを独自に配合したTOBA TOBA COLAを作り販売している。ふたりの会社Keithland(キースランド)は、クラフトコーラの販売を通じて、人口減少が進み消えゆく喜界島の文化を島外や未来に伝え、地域活性化に取り組んでいる。
具体的な効果
・日本各地に店舗を持つ食料品店など、約50軒にTOBA TOBA COLAを納品する。
・『National Geographic』や『ELLE Japan』をはじめ、日本の有名な雑誌や新聞、テレビ番組、ラジオなどで取り上げられてきた。
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クラフトコーラを通じて離島の文化を伝え、地域の可能性を切り開く
年が明けると、喜界島ではシークーの収穫が始まる。ふたりは民家の庭先を回りシークーを収穫して買い取り、町の農産物加工センターでクラフトコーラを作って瓶詰めする。出来上がったTOBA TOBA COLAは船で11時間かけて本土に到着し、全国へと運ばれていく。
鹿児島県喜界島は、日本本土の南端から約380キロメートルに位置する。周囲48.6キロメートルの島の面積の大半は隆起サンゴ礁でできており、年間平均気温は約22度と温暖だ。島のさまざまな場所には在来の柑橘類が植えられており、シークーはその一種。香りはベルガモットに似て華やかだが、種が多く酸味も強いため流通しておらず、喜界島のみで栽培・消費されてきた。
共にシンガポールで働いていた真子さんと和憲さんは、東南アジアを旅して出会ったスパイス文化に魅了された。ふたりは日本に帰国後、真子さんの出身地・喜界島でシークーが食べられずに放置されているのを目にし、その“もったいない”シークーと、島の基幹作物のさとうきび、スパイスとハーブを使ってコーラを作り販売しようと決めた。
TOBA TOBA COLAのレシピは和憲さんが考案した。いろいろな調合を試し、シークーの爽やかな酸味と、複雑なスパイスの味わい、きび砂糖のやさしい甘さが絶妙に調和したクラフトコーラシロップを完成させた。炭酸で割るだけでなく、牛乳を混ぜるとチャイのような味になり、お酒、コーヒー、アイスクリームにも合う。パッケージデザインは、デザイナーである真子さんが手掛けた。115グラム瓶を1100円(税込)、310グラム瓶を2450円(税込)で販売している。
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折しも、TOBA TOBA COLAを発売したのはコロナ禍の2020年春。外出や営業活動が制限されるなか、和憲さんは島に最も近い大都市・福岡を車で移動販売しながら1杯ずつコーラを手売りし、事業をスタートさせた。同時に、真子さんはさまざまなメディアにプレスリリースを送った。その後、クラウドファンディングで約120万円を集め、コロナ禍の難しい時期を乗り越えた。
次第にメディアでも取り上げられ始め、各地の小売店から声がかかり、販売先も増えていった。自社のオンラインショップや、都市部でのイベントにも定期的に参加して商品を販売する。今では、島でとれた規格外のパッションフルーツを使ったクラフトコーラや、コーラの製造に使ったスパイスを再利用したグラノーラなども手掛ける。
ふたりは創業時からTOBA TOBA COLAを世界に届けることを目指してきた。2023年には、シンガポールの日系大手小売店で販売が始まり、台湾のイベントにも出展して販売した。和憲さんは「これからは海外展開にも力を入れ、越境ECも実現していきたい」と言う。真子さんは「島から世界を相手にビジネスをするのは難しいことだと思うが、それに挑戦しながら、離島からでもできることを示し、島で起業する人が増えたり、島や田舎のポテンシャルの高さを知ってもらえたら嬉しい」と話す。
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Keithland
https://tobatoba.jp/
本記事は、以下の英語原文を日本人読者向けに加筆・修正したものです。
原文:環境省『LIBRARY』
A Remote Island’s Very Own Homegrown Craft Cola
https://lla-nbs.com/a-remote-islands-very-own-homegrown-craft-cola/
Facebook Group 『LIBRARY』
https://www.facebook.com/groups/361264510101371/
日本には多様な自然環境があり、地域に土着している営みがとても多彩です。伝統技術や自然資源の活用、循環産業、地域振興などの活動をしている方や興味のある方々をつなげて、活動の魅力を発信し発展を促しています。催しの告知や意見交換などを行っていますので、ぜひご参加ください。

環境省『LIBRARY』
気候変動に脆弱(ぜいじゃく)な国や地域では、地域主導適応策 (LLA)や自然を基盤とした解決策 (NbS)、伝統的知識を活用し、地域の産業振興や雇用機会の創出など、さまざまな社会課題を解く具体的なソリューションが求められています。『LIBRARY』は、そのヒントとなるよう、多様な自然環境がある日本の地域に土着している伝統技術や自然資源の活用、循環産業、地域振興などの事例を紹介しています。