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  • 公開日:2025.03.11
  • 最終更新日: 2025.03.28
宮城・石巻工房、被災地の復興支援から始まった家具づくり 市民のための公共工房から家具ブランドへ

環境省『LIBRARY』

宮城県石巻市にある「石巻工房」は、2011年3月に発生した東日本大震災の復興支援から生まれた家具ブランドだ。石巻は当時、地震と津波により甚大な被害を受けた。石巻工房の共同代表で建築家の芦沢啓治さんは、復興支援のために東京から石巻へと通うなか、住民自らが家の修繕や家具を作れるよう支援することを決めた。

同年7月、芦沢さんは知人のデザイナーらと共にDIYのための道具や木材、ノウハウを提供する地域のものづくりの場として石巻工房を設立。その後、石巻工房はDIYとデザインの力によって家やまちの復旧・改修を手掛けてきた。

さらに被災者向けに家具づくりのアイデアやスキルを習得できるDIYワークショップも実施。やがて石巻工房の家具を買いたいという声が生まれ、石巻工房は「社会問題をデザインの力で解決する」というスピリットに共感する、国内外のデザイナーらが設計した家具を手作りして売り始めた。

工房長は、石巻の元寿司職人で、震災をきっかけに市民向けのワークショップなどに携わるようになった、共同代表の千葉隆博さんが務める。

工房長の千葉隆博さん

取り組みがもたらした効果

・国内外の30人以上のデザイナーと協業し、50種類以上の家具を生み出してきた。
・木材は、初期には提供してもらったカナダ産レッドシダーを使っていたが、現在は宮城県産を中心とした国産材が9割を占め、木材の地産地消に取り組む。
・DIYワークショップを国内外で30回以上実施してきた。

創設の原点と精神を大切に、デザインの力でDIYの可能性を広げ、地域を活性化する

石巻工房は被災した商店街にあるブティックだった建物から始まった。東北地方の太平洋沿岸部にある石巻市(約13.4万人)は東日本大地震で最も被害の大きかった地域で、市内は73平方キロメートルが浸水し、全壊した家は約2万棟、死者は3400人以上(震災関連死を含む)に上る。2011年に石巻市民のものづくりの場として誕生した石巻工房は、2014年3月11日に法人化。現在、従業員は職人を中心に3人だ。

石巻工房の家具は主に2×(ツーバイ)の規格材を使った直線的な家具。“シンプルで頑丈、機能的で、素朴でどこか愛らしいデザイン”を理念に、家具は国内外の一流デザイナーらが設計してきた。

DIYできるように作られた同社の家具は、比較的平易な加工と技術で作れるそうだが、家具職人が手づくりすることで高品質で洗練された家具に仕上がっている。あえて規格材を使うのは、被災当時に寄付してもらった、手に入る限りの材料で家具を作ってきた石巻工房の原点に由来する。

千葉さんは、2024年までの石巻工房の歩みを「石巻工房という“飛行機の部品”を組み立てながら、飛び続けられるように努力し、前に進んできました。生き残ってこられたのは、被災地支援のための助成金をほとんど受け取らず、自力で事業を続けてきたからです」と話す。

石巻工房は原点とその精神を大切にしながら、常に人に寄り添い、これまでなかった新しい家具を生み出し、それを届けるために挑戦を続けてきた。

その挑戦の一つが「Made in Local」。同社の思想とデザインを世界に広げる事業で、海外(ロンドン、ベルリン、デトロイト、マニラなど)のパートナー企業が石巻工房の家具を現地生産し、石巻工房はライセンス料を受け取る。

2020年には、工房の近くにショールームやカフェ、ゲストハウス、ものづくりの場を兼ね備えた「石巻ホームベース」を建て、石巻に人が集まる場所をつくった。

石巻ホームベース

2011年から続けてきたDIYワークショップは、国内外で今もなお継続する。さらに同社はハーマンミラーやカリモクといった大手家具ブランドと協業もするなど、創設以来、他者と協力・連携することを大切にしている。

売上高は卸・直販・コントラクト事業が3本柱。石巻と東京にショールームを持ち、自社のウェブサイト、他社の通販サイトでも家具を販売する。またコントラクト事業を通じ、店舗やオフィス向けなどオリジナルデザインの家具を販売している。これまでの経験から、千葉さんは「現場の問題解決から生まれたデザインが長く生き残る商品になっています」と言う。

昨年、法人化から10年を迎え、石巻工房は経営体制を強化しながら、新たな事業を立ち上げる準備を進めている。石巻を拠点に、デザインの力で日常に新しい価値をもたらし、環境と共生する家具を提供し、世界各地のローカルを活性化するという、石巻工房の挑戦は今後も続く。

Ishinomaki Laboratory
https://ishinomaki-lab.org/

本記事は、以下の英語原文を日本人読者向けに加筆・修正したものです。
原文:環境省『LIBRARY』
Furniture Manufacturing Starting from Support for Reconstruction in Earthquake-Stricken Areas
https://lla-nbs.com/furniture-manufacturing-starting-from-support-for-reconstruction-in-earthquake-stricken-areas/

Facebook Group 『LIBRARY』
https://www.facebook.com/groups/361264510101371/
日本には多様な自然環境があり、地域に土着している営みがとても多彩です。伝統技術や自然資源の活用、循環産業、地域振興などの活動をしている方や興味のある方々をつなげて、活動の魅力を発信し発展を促しています。催しの告知や意見交換などを行っていますので、ぜひご参加ください。

written by

環境省『LIBRARY』

気候変動に脆弱(ぜいじゃく)な国や地域では、地域主導適応策 (LLA)や自然を基盤とした解決策 (NbS)、伝統的知識を活用し、地域の産業振興や雇用機会の創出など、さまざまな社会課題を解く具体的なソリューションが求められています。『LIBRARY』は、そのヒントとなるよう、多様な自然環境がある日本の地域に土着している伝統技術や自然資源の活用、循環産業、地域振興などの事例を紹介しています。

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