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  • 公開日:2024.11.12
  • 最終更新日: 2025.03.27
米サステナブル・ブランドの新CEOに聞くーー「あらゆる成功事例から学び、企業ブランドの意義を追求する」

    10月に開かれた「SB国際会議2024サンディエゴ」に登壇した、米サステナブル・ブランドの新CEO、マイク・デュピー氏

    サステナビリティの分野で会議や情報発信を通じて世界のコミュニティをリードする、米サステナブル・ブランド(SB)で今年4月、マイク・デュピー氏が、創設者であるコーアン・スカジニア氏の後を継いで新 CEO(最高経営責任者)に就任した。豊富なビジネス経験を持つデュビー氏は、企業のサステナビリティのあり方について、「あらゆる成功事例から学び、利益を求めると同時に、事業においては社会的にも適正な役割を果たすべき」と力説する。SBジャパンでアカデミック・プロデューサーを務める青木茂樹氏が10月に行われたSB国際会議2024サンディエゴに合わせて渡米し、SBへの思いや今後の方針についてデュピー氏に聞いた。

    経済と自然のシステムを調和させる必要性が切迫している

    青木茂樹(以下、青木):今春、SBの CEOに就任されました。そのきっかけは何だったのでしょうか?

    マイク・デュピー(以下、デュピー):2つの契機がありました。1つ目はかつてのSBにおけるコミュニティでの経験です。私がグリーンマウンテンコーヒー・ロースターズにいた2007年でしたが、SBで設けられた初の企業会員のうちの1社に加わりました。SBは他の会議などと比べて全く違うコミュニティであり、企業の責任者らが集まってサステナビリティの問題について話し合っていて、非常に多くのことを学びました。

    2つ目は、私たちの経済システムを自然システムと調和させる必要性が切迫していることです。そのためには変革が不可欠です。SBは常に変革を扱ってきましたが、ここにきてさらにその役割が重要性を増していると思ったことが、CEOをお引き受けした大きな理由です。

    青木:グリーンマウンテンコーヒー、ゴールドマン・サックス証券、鉄道自転車エコツーリズム、大学講師など幅広い経験をお持ちのようですね。あなたの専門性や強みは何でしょうか?

    デュピー:ご指摘のようにいろいろな場所に行き、多くの仕事をしました。自分のビジネスを始め、大企業でサステナビリティの仕事をし、投資銀行で働いたこともあります。私は企業の課題を理解し、企業の立場に立つことができる経歴を持っていますし、企業が抱えている課題について話すのに最適な立場にいると思っています。私はサステナビリティの面についても経験を積んできました。グリーンマウンテンコーヒーでの仕事で経験を積み、バイオミミクリー(生物模倣)の修士号も持っています。

    問題を解決し商業的にも成功している革新的なアプローチに注目

    青木:SB 国際会議は米国で2006 年から開催されています。他の似たような会議と比較して、SB 会議の独自性や特徴は何だと思いますか?

    デュピー: 3つの特徴があると思います。まず1つ目に、私たちは社会・環境に関するイノベーションのビジネス化を支援しようとしています。つまり、経済システムと自然システムを協調させるということです。これはほとんど当たり前のことのように聞こえるでしょう。しかし、それらは協調しなければならないのです。「こちらで利益を出して、あちらで正しいことをする」というわけにはいきません。「やっていることが利益を生むと同時に、正しいことでもある」という方法を見つけ、それらを結び付ける必要があります。

    だからこそ私たちは、問題を解決するとともに商業的にも成功している革新的なアプローチに注目しているのです。これが1つ目です。私たちは、単にどうやって温室効果ガスの排出量を記録するのかに注目しているだけではありません。それもサステナブルであるために重要な要素ですが、注目しているのは、温室効果ガス排出量について分かったことをいかに活用し、ビジネスをより良くすると同時に排出量も減らすことができるかということです。

    2つ目は、グローバルとローカルの結びつきです。私たちは国をまたいだ7つのSBパートナーとのグローバルネットワークを築いています。こうした世界的なリーチをもっと活用できるチャンスはたくさんあります。一方で、私たちはローカルでの影響力も持っています。SBジャパンは日本という土地で尽力していますし、トルコ、クアラルンプール、ニュージーランド、スペインなど各国のSBはローカルでも力を発揮しています。

    3つ目は、人とコミュニティとネットワークです。私たちのネットワークにはこの分野でもともと道を切り開いてきたリーダーたちが大勢いて、サンディエゴ国際会議で見られるように先進的なテーマで対話に参加しています。これらが3つの大きな差別化要因です。

    青木:現行のサステナビリティの課題における重要な論点、新たに取り組みたいテーマやセッションは何だと思われますか?

    デュピー:やはり関心事項は気候変動の問題です。ただし、SBの論点から申しますと、他のあらゆることと気候との交わりです。企業コミュニティでは、気候や生物多様性といった問題との間の交わりについて、現在多くの議論があると思います。今年、特に米国では、気象変化の切迫度は増すばかりです。気候問題は確実に懸念事項です。

    もう1つはコミュニティだと思います。SBで、どうすれば私たちはより良い成果を上げられるのか。米国のネットワークの中だけではなく、世界的な課題です。どうしたら、学び、行動を起こせるよう、本当に人々をつなげることができるのか。力を与え、養い、活気づけることができるのか。なぜなら、それが変化を促進するものだからです。誰も1人で舞台に立つことはできず、規則が整うまで待ってもいられません。ビジネスは世界で最も力強い勢力です。私たちが全ての人に自分たちで変化を生み出すための正しいツールを持たせることができれば、大きな変化を起こせるでしょう。

    各国の情報を共有しながらSBグローバルコミュニティを目指す

    青木:気候変動に関する国際会議は数多くあります。しかし、SBの国際会議はコミュニティを作るという独自性がありますね。日本、クアラルンプールなど、世界中のSBとどうすればコミュニケーションを取り、他国のアイデアから新しい戦略を作り出すことができるでしょうか?

    デュピー:それこそまさに、現在、各国のSBパートナーたちと取り組み、話し合っていることです。より良い成果を上げ、各国のパートナーを巻き込めるよう、私たちは計画のプロセスを発展させるために取り組んでいます。来年のSB2025のイベントを計画し、デザインするにあたっては、全員の足並みを揃えられるよう、各国のパートナーと協力していきます。これは、全ての国のパートナーが同じ話題について発表するということではなく、全てにつながりがあり連続性があるということです。

    年が変わる前に、各国パートナーと米国のコミュニティの間での情報交換をより活発にし、誰かを動かせると信じ、非常にわくわくしています。多くの米国の企業会員は多国籍企業なので、アジア太平洋や欧州の動向に興味を持っています。私たちは、各国パートナーから多彩な動向について話を聞けるよう、ウェビナーのようなオンラインの議論を企画しています。これはきっと意識を高め、SBのパートナーによる世界各地域への参入を増やすことにつながるでしょう。私が望んでいるのは、これが2026年までに、多くの情報が共有される世界的なSBグローバルコミュニティとして実際に機能すること、そして人々がさまざまなイベントに参画し、多くのアイデアや人々が行き交うことです。

    青木: それらの論点やテーマを意識しながら、新CEOとして、SB自体をどう運営していきたいと思っていますか?

    デュピー:明らかにやるべきなのは、あらゆる成功事例から学び、もっと良く実行できる点を見つけようとすることです。私はフォーマルなビジネスの訓練をたくさん受けてきましたので、ビジネスの基本的なことは上手くやれると思います。成功の根源は、組織をコミュニティのように運営する方法にあります。しっかりとしたビジネスにするためには、注意を払うべきことを無視しないことです。コミュニティのように運営し、インプットやフィードバックを取り入れてアイデアを生み出すことで、コミュニティ内の全員がコミュニティの成長という成功を感じるだけでなく、その一部になることができるのです。

    今年の国際会議ではニール・シース博士に登壇いただき、複雑系について話してもらいました。複雑系においては、数少ないルールの組み合わせでも、地球規模での影響を考えると、非常に大規模かつレジリエントな組織を生み出すことにつながっているという内容でした。社会として、そしてビジネスコミュニティとして、私たちはそれをどのようにまねできるか、学ぶべきことは多いと思います。

    青木:サステナビリティや地球の変化などに関する国際会議はたくさんありますが、SBは一方で、Sustainable Brandsという名称をつけているように、企業ブランドにも焦点を当てています。「ブランド」についてどうお考えですか。

    デュピー:ブランドの定義については、もっと広く捉える必要があると思います。ブランドを作るときには人々との関係性も作っているのです。期待できることや何を得られるかについて、意識的でもそうでなくても、人々にメッセージを送っています。

    SBの活動は20年前の認識のもとに作られています。おそらくこれは直観と良識であり、データに裏付けられたものではなかったと思います。現在、私たちが住む世界・社会において、環境的にも社会的にも本当に深刻な課題があると認識する消費者、人々がどんどん増えているのが分かります。人々はそうした課題に取り組んでほしいと思っています。企業がただ参加するだけでなく、消費者が本当にしたい選択をできるようにすることを求めています。平均的な消費者が循環型経済に移行するための支援をもっとしたいと思っても、何をすればいいか分からないかもしれません。かけられる時間がないかもしれません。投資できる余裕があるほど多くの収入がないかもしれません。

    だから人々は、それを解決してくれる企業を探しています。そこにブランドとのつながりが出てくるのです。おいしい飲料を、好きな場所で、手頃な価格で、均一な品質で買えると分かっている飲料メーカーがあるかもしれません。ですが私たちが目指すのは、消費者がおいしい飲み物が冷たく、手頃な価格で買えるということ以上のことを把握することです。最低でも「この飲み物を買うときに、世界に悪影響を与えていないか」ということでしょう。

    しかし、本当に知ってほしいのは、むしろ良い影響を与えているということです。そこがブランドとの交わりです。私たちがやろうとしているのは、それを上手くやっている人たちに焦点を当てること、ストーリーを共有すること、他の人たちがそこから学びを得るのを助けること、そして願わくは、私たち全員の基準を上げていくことです。

    インタビュアーを務めたSBジャパンのアカデミック・プロデューサー、青木茂樹氏(左)、米SBの前CEO、コーアン・スカジニア氏とともに

    青木:私がコーアンさんと初めて会ったとき「ブランドとは何ですか?」と聞きました。ブランドはただのロゴか、パッケージか。コーアンさんは「会社の哲学」だと言いました。コーアンさんの思慮深さとあなたのビジネス的な考え方の連携に大いに期待したいです。
    ブランドの関連でさらにお聞きしたいのですが、米国はマーケティングの手法が豊富です。マーケティングは消費者のライフスタイルに変化を起こします。マーケティングの視点からはどんなお考えをお持ちですか。

    デュピー:私たちは実はマーケティングについてあまり語りませんし、マーケティング一辺倒ではありませんが、私たちが本当になりたい姿は、サステナビリティとマーケティング、イノベーションとが交わる部分です。私たちが対象とするのはマーケティング担当者だけではありません。デザイナー、研究開発担当者にも関わってほしいのです。私たちのところにはサステナビリティ関係者やマーケティング関係者が集まりますが、デザインの視点についても、もっと取り組まなければならないと思います。

    青木:最後にひと言、日本についてのご感想・要望についてですが、日本のSB については何を期待されていますか?

    デュピー: SBジャパンは最も古くからのパートナーの1つです。これまで日本で築いてこられた多くの活動に対し、非常に敬意を払っています。ぜひSBジャパンにはコミュニティの中のリーダーであり続け、真のグローバルコミュニティに向けた次の進化に向けて、私たちに協力してほしいと思っています。先ほども言ったように、人とアイデア、会員が行き交うことを楽しみにしています。来年3月に東京・丸の内で開かれるSBジャパンの国際会議に参加することが待ち遠しいです。これまでやってこられた素晴らしい成果を私がどのようにサポートできるか考えたいと思います。

    編集局注:米SBの前CEO、コーアン・スカジニア氏は、Founder & Chief Catalyst and Community Builderとして、今後もSBグローバルのコミュニティ拡大に注力する

    翻訳:茂木澄花 文・構成・写真:サステナブル・ブランド ジャパン編集局

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