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  • 公開日:2024.10.11
  • 最終更新日: 2025.03.07
豊かな自然と人々の暮らしの共生を目指して――nestが企画した日帰り檜原村ツアー

細い山道に立って檜原村の山々を見る東京チェンソーズの吉田尚樹さんと参加者

都心から1時間半ほどで行ける、東京都檜原(ひのはら)村が開催した「払沢(ほっさわ)の滝ふるさと夏まつり」に合わせて、サステナブル・ブランド ジャパンのユースコミュニティ「nest」と東京都立産業技術大学院大学が、主にZ世代を対象に、豊かな自然と村の人々との交流をテーマにした体験ツアーを実施した。

nestが企画した「暮らしと自然のつながりを感じる 日帰り檜原村ツアー」は、第2期(2023年) nest action「交流の “タネ”〜おまつりでつくる地域革命〜」プロジェクトから始まった。地域創生に関心のあったnestメンバーの土岐厚博さんが「消滅可能性自治体」に分類された檜原村を訪れ、その自然の豊かさに感動。Z世代の価値観と地域資源(自然・伝統文化)との接点を見出し、将来的な交流・関係人口の拡大に向けた検証を行う、今回のツアープログラムにつながった。

「日帰り檜原村ツアー」は、いずれのツアーも多くの人が参加し、笑顔で体験を楽しんでいた。当日実施された3つのプログラム「森林ハイキング」「フィルムカメラ体験」「くらし体験(畑仕事とお菓子作り)」をレポートする。

健全な森林管理が、自然と人との共生の第一歩

雨上がりの道を登っていく参加者

森林ハイキングツアー
檜原村の森の中で、森の価値を考える

人口約2万人の檜原村は、周囲を急峻(きゅうしゅん)な山地に囲まれており、全面積の9 割以上を山林が占めている。また多摩川水系の秋川が流れ、いくつもの渓流があり、多くの動植物を育んでいる。古くは森林を生かした「炭づくり」が盛んであり、今でも自然を生かしながら暮らす村の姿には、日本の原風景が残っている。

檜原村の森林を案内するのは、東京チェンソーズの吉田尚樹さんだ。同社は檜原村の森の中に拠点を置き、村や町単位ではなく、川の流域単位で地域を考える「流域思想」を掲げ、森林の価値を上げようと取り組んでいる。森林ハイキングツアーの参加者はまず、古民家を利用した同社の事務所で、吉田さんから森林の現状と課題を聞いた。

吉田さんははじめに、林業の特徴として、収穫するまでに時間がかかること(例えばトマトは3カ月で収穫できるのに対し、木は70年)を挙げた。また森林には、土砂崩れを防ぐなど「環境林」としての機能があり、「森林を適切に管理することで、環境林としての役割を果たすことができる」と森林管理が重要だと強調した。

だが、森林管理にはさまざまな課題がある。「全部話すと数日かかってしまう」と苦笑しつつ吉田さんは、手入れする人の数は減っていること、だが木材の需要はほとんど変わらず、自給率が低いので輸入に頼っていることを説明し、「その構造がずっと続いていることが問題だ」と指摘した。

森林の現状と課題を学んだ後、参加者は、東京チェンソーズが所有する山へ移動。それまで降っていた雨が上がり、ほのかに木の香りが漂う澄み切った空気の中、急な上り坂を1列に並んで登って行った。草むらを抜け、道幅1.5メートルほどのやや傾斜のある山道に出ると、まっすぐに伸びているスギの木が並んでいた。吉田さんは、人工林のスギやヒノキは、まっすぐ伸びるようにわざと苗同士を近くに植え、その後、10~20年のサイクルで間引きながら太らせることが、健全な管理方法だと説明した。

「森林の課題解決の正解はなく、模索している」と吉田さん
東京チェンソーズが管理しているスギ林

そして森を健全に管理するために、吉田さんは、「多くのプレイヤーを巻き込むこと」「森林の価値を可視化し、それをどう最大限に引き上げてマネタイズしていけるか」が重要だと考えているという。そのために「10年後の自分たちがどのような生活をしているか想像しなくてはいけない。長いスパンで取り組まなくてはいけないことで、正解はない。皆さんと一緒に森と流域の共生を考えていければ」と話して、約1時間のハイキングを終えた。

林業に興味があるという小学生の男の子と参加した母親は、「今は吉田さんの話が分からなくても、ここに来たことが思い出になり、大きくなったときに『檜原村の森に行ったな』と覚えていてくれれば」と感想を話した。またイベント会社に勤めているという女性は、「森林の課題解決には、いろいろな領域から関わることが大事だと思うので、ワークショップや体験ツアーなどを企画してみたい」と早速“行動”につながったようだ。

カメラは想像力を養ってくれるもの――人生の先輩から学ぶフィルムカメラの楽しみ

真剣な面持ちでカメラを向ける

フィルムカメラ撮影会ツアー
白黒写真で味わう檜原村の魅力

フィルムカメラ撮影会ツアーの“先生”を務めるのは、天然水を使ったコーヒーを出している「カフェせせらぎ」のマスター・幡野庄一さん。現在80代半ばの幡野さんは、中学生のころからカメラを趣味とし、いつの間にか100台くらいのカメラが集まった。

20~30代の参加者を前に、幡野さんは「スマホで撮って失敗してもやり直しができるが、フィルムカメラはそれができない」「写真として出来上がるまで一週間ほどかかるが、その一週間が非常に楽しみ」と温和な表情で語った。また、コロナ禍以前のテレビ番組の取材エピソードを披露。出演していたアイドルの男性がカメラ好きで、「好きなのをあげると言ったら30万くらいのいちばんいいカメラを持って行った」と話し、続けて、その場面が放送され反響が大きく、お店にたくさんの人が来るようになり「30万円の元が取れました!」と茶目っ気を見せ、参加者は声を上げて笑っていた。

「スマホとは違う写真を楽しんでほしい」と幡野さん

場が和んだところで、参加者一人ひとりに1台ずつ、幡野さんのカメラが貸し出された。幡野さんのレクチャーを受けながら、フィルムを入れていく。しかし、参加者のほとんどはフィルムを入れた経験がなく、悪戦苦闘。幡野さんや、フィルムカメラを使ったことのある人から教わりながら、準備を整えた。

撮影に向かう前に、幡野さんは、「カメラは『メカ』で、想像力を養ってくれる。これから滝を撮りに行くが、滝は誰にでも撮れる。その下に流れている水の中に変わった石を見つけて、自分が何を想像するか?」が大事だと話した。

フィルムを入れる作業は、参加者のほとんどが初体験だった
熱心に滝に向かってレンズを向ける参加者

参加者は、東京都で唯一「日本の滝百選」に選ばれた払沢の滝へ。流れ落ちる水の音を聴きながら、思い思いに気になったものを熱心に見つめ、フィルムカメラのシャッターを切っていた。

種まきから調理まで、自給自足の暮らしを体感

檜原村産の小麦粉でお菓子づくり

檜原村のくらし体験ツアー
畑しごとからおやつ作りまで! 檜原村を丸ごと味わう

檜原村の暮らしを体験するツアーを案内するのは、NPO法人さとやま学校・東京の理事長を務める川上玲子さんと、同NPO職員やボランティアスタッフ、そして檜原村藤倉地区にお住いの住民の皆さんだ。

参加者はまず、さとやま学校・東京が、保全・改修した旧藤倉小学校で、顔合わせ。この木造校舎は、体験、学び、交流の場として2022年夏に開業。玄関から入って一番奥に本棚が並ぶ食堂・カフェがあり、宿泊スペースなどを設置している。

食堂・カフェスペースで顔合わせ
さとやま学校・東京の川上さん(右)

参加者は長袖の服に着替え、軍手をはめるなどして、いざ出発。傾斜がある険しい道を、約15分歩いて畑に到着した。畑は、さとやま学校・東京が地元住民から借りているもの。30度ほどの傾斜があり、慣れない参加者たちは恐る恐る立っていた。

畑で育てているのは雑穀だ。「昔は自給自足をしていたが、今は米を買ってきて雑穀を混ぜるのがこの地区の食卓」と川上さん。寒暖差があるので、育った作物は甘くなるという。「今はそばをまく時期なのでそれを今日は体験してほしい」と参加者にそばの種を配った。参加者は、息を切らし「東京にこんなところがあるなんて、すごい」などと話しながら、楽しそうに種まきを体験した。

体のバランスを取りながら種まき
出来上がった「たらし餅」を食べながら会話が弾む

再び旧校舎に戻り、野外でおやつ作りを体験。さとやま学校・東京が栽培した無農薬の麦から作った小麦粉を使い、水で溶いてそのまま焼く「たらし餅」というシンプルなお菓子を作る。「耳たぶより柔らかくこねてください」「弱火でじわじわと火をとおして」と川上さんや住民からアドバイスを受けて、参加者は思い思いに「たらし餅」づくりを始めた。

できたばかりの「たらし餅」は、住民と一緒にテーブルを囲んで品評会。食べながら、あるテーブルでは、当時の藤倉小学校の様子や、炭を作るのに大きな木を窯で焼いたことなどを住民が語り、参加者が耳を傾けていた。

畑仕事を体験し、自分で作った「たらし餅」を食べながら、住民の方の思い出話を聴く。参加者は檜原村の「豊かな暮らし」を満喫したようだ。

子どもたちに木に触れてもらいたい

バードコールづくりのワークショップを開いたnestのブース

nestは3つのツアー企画のほかに、檜原小学校を会場にした「払沢の滝ふるさと夏まつり」にブースを設け、バードコールづくりのワークショップを開催した。「バードコール」は、木と金属のパーツで摩擦を起こし、鳥の鳴き声のような音を出すアイテムだ。森の中で鳴らすと、鳥が実際に鳴き返してくれたり、鳥が集まって来たりするという。

木のパーツは、森で捨てられていたヒノキやスギの枝から切り取ったもので、東京チェンソーズが提供した。nestのメンバーは、「森林は、水を貯めたりする環境林としての役割や、経済的な役割どちらも失われつつある。まず森林のことを知ってもらうために、子どもたちに木に触れてもらいたいと考えた」と話した。

澄んだ夜空に打ち上げられた花火

村外からも多くの人が訪れた檜原村の夏祭りは、盛大な花火の打ち上げで終了した。多くの人の協力を得ながら、地域活性化を目指したnestの今回の初めての試み。メンバーは「子どもにも大人にも、自然と触れ合い、実際にその“暮らし”を体験できるいい機会を提供できた」と手応えを感じたようだ。nestは、「日帰り檜原村ツアー」の結果を踏まえて、今後も地域創生の取り組みを進めていく。

関連記事=nest企画「暮らしと自然のつながりを感じる 日帰り檜原村ツアー」参加者募集中!

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