![]() |
岐阜県飛騨市の飛騨の森でクマは踊る(以下、ヒダクマ)は、クリエイティブで革新的な視点から広葉樹の活用と地域活性化に取り組んでいる。飛騨市は面積の93.5%が森林で、その68%を広葉樹が占める。しかし、飛騨の広葉樹は種類や形が多様で小径木が多いため、近年はおもに製紙・燃料用チップとして低価格で流通してきた。
飛騨市は2014年、人口減少・少子高齢化が進み、衰退する市を活性化しようと「広葉樹のまちづくり」事業に着手した。広葉樹の新たな活用方法を生みだし、価値を高めることで、地域や産業、内外の人々の交流を活発にし、森林を持続可能な方法で管理しながら地域資源を次世代に引き継ぐことに取り組んでいる。
広葉樹のまちづくりを推進するため、2015年に、飛騨市と東京に拠点を置くクリエイティブカンパニーのロフトワーク、森林を通じた地域づくりを行うトビムシの3者が設立したのがヒダクマだ。ヒダクマは地元の林業・木工業者などと連携しながら、それまでになかった視点から広葉樹の活用を進めている。
地域にもたらした効果
・ヒダクマの事業を通じて、飛騨市の広葉樹は全国の企業、大学、展示会などで家具や什器、建材として使われ、地域の森林資源や経済の新しい循環が生まれている。
(飛騨市では「広葉樹のまちづくり」事業を立ち上げたことで、かつては伐採された広葉樹の93%が製紙・燃料用チップに、7%が家具に使われていたが、現在は約20~30%が家具などとして使われ、木材価値が高まっている。)
・ヒダクマは、プロジェクトのみならず、カフェの運営や、森や地域の文化を体験し、学べるイベントやツアー、研修の開催により、飛騨市や広葉樹の森に関わる人口、移住者を増やしてきた。
ヒダクマ共同代表の岩岡孝太郎さん
|
![]() 森の端オフィス(左)の隣には広葉樹専門の材木屋と製材所がある
|
2022年、飛騨市の山のふもと、広葉樹専門の材木屋と製材所が集まるエリアに、ヒダクマの「森の端(は)オフィス」が誕生した。森の端とは森とまちとが接する場所のことだ。一般的には建物の主要構造に使われることのない広葉樹を主要構造材や内装材、断熱材、家具など建物全体に使い、広葉樹の新たな可能性を追求した建築だ。
飛騨市の広葉樹は冬の積雪により曲がったものが多く、針葉樹を使う建築に比べて、広葉樹を使う建築には工夫が必要だ。建築家とヒダクマのメンバーが市所有の山で選定したブナ、ミズナラ、ホオノキ、ヤマメザクラ、ミズメ、クリなどの多様な木を、構造計算に基づき安全性を確保しながら組み合わせることで、飛騨の広葉樹の豊かさや魅力を伝えるオフィスを完成させた。
![]() |
|
ヒダクマ共同代表の岩岡孝太郎さんはこう話す。
「森の端オフィスを実現できたのは、多様な広葉樹があり、広葉樹専門の集材所、製材所、木工所、木材乾燥施設が揃っている飛騨市だからです。ここは、まちと森とが交わるちょうど境界にあります。まちにいる人たちに森に近づいてもらい、飛騨の森を知ってもらい、好きになってもらい、木を使ってみたいと思ってもらえるようにしていきたいです」
ヒダクマは、これまでにない形で各事業者をつなぎ、新しい価値や機会、挑戦、連携を生みだしてきた。それは、飛騨市が目指す「飛騨市に知恵や人材が集まり、日本の広葉樹活用の中心地になる」という目標達成への大きな力となっている。
![]() |
ヒダクマはこのほか、森の端オフィスから約1キロ離れたまちの中の築100年の古民家でFabCafe Hidaを運営している。そこでは、3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタルファブリケーション(デジタルデータをもとにして創造物を制作する技術)や木工設備で広葉樹を使ったものづくりを体験したり、宿泊したりすることができる。カフェでは、飛騨市のクロモジを使ったコーヒー、地元食材を使った料理などを提供する。
岩岡さんは、「木は木材ではなく、森も木材ではありません。森に足を運んで木を見るのと、木材になった木を見るのでは異なります。森の木には本当にさまざまな魅力があります。木の可能性、森の可能性、地域の可能性、脈々と継承されてきた日本人の暮らしの可能性から、新しい価値を生み出すことに挑戦していきたいです」と語る。
![]() |
|
![]() |
![]() 飛騨市の広葉樹を使った店舗(写真:表萌々花)
|
![]() 飛騨市役所の応接室(写真:長谷川健太)
|
![]() FabCafe Hida
|
飛騨の森でクマは踊る
https://hidakuma.com/
本記事は、以下の英語原文を日本人読者向けに加筆・修正したものです。
原文:環境省『LIBRARY』
Promoting the Use of Broad-leaved Trees via Creative Ideas
https://lla-nbs.com/promoting-the-use-of-broad-leaved-trees-via-creative-ideas/
Facebook Group 『LIBRARY』
https://www.facebook.com/groups/361264510101371/
日本には多様な自然環境があり、地域に土着している営みがとても多彩です。伝統技術や自然資源の活用、循環産業、地域振興などの活動をしている方や興味のある方々をつなげて、活動の魅力を発信し発展を促しています。催しの告知や意見交換などを行っていますので、ぜひご参加ください。

環境省『LIBRARY』
気候変動に脆弱(ぜいじゃく)な国や地域では、地域主導適応策 (LLA)や自然を基盤とした解決策 (NbS)、伝統的知識を活用し、地域の産業振興や雇用機会の創出など、さまざまな社会課題を解く具体的なソリューションが求められています。『LIBRARY』は、そのヒントとなるよう、多様な自然環境がある日本の地域に土着している伝統技術や自然資源の活用、循環産業、地域振興などの事例を紹介しています。