SB国際会議2024東京・丸の内
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Day1 ブレイクアウト
SB国際会議2024東京・丸の内のテーマは「Regenerating Local」。企業やブランドが関わる地域から、環境や社会の“リジェネレーション(再生)”に取り組むことで、自社やブランドを変革しその価値を創造するという意味が込められている。では、地域の再生に向け企業が果たすべき役割や、発揮できる価値とは何なのか。また、企業にとって取り組む意義はどこにあるのか――。実際に地域に飛び込んで事業を展開する3社が集い、地域再生を全国に広げるヒントを探った。(横田伸治)
ファシリテーター
足立直樹・サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー
パネリスト
浦嶋裕子・MS&ADインシュアランスグループホールディングス サステナビリティ推進部課長
小野英雄・MEC Industry 代表取締役社長
友保悟郎・竹中工務店 まちづくり戦略室 室長
友保氏
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- プロジェクト対象地から地域に貢献――竹中工務店
竹中工務店は、「まち×イノベーション」を意味するプロジェクト「MACHInnovation(マチノベーション」の一環として、長野県塩尻市の奈良井地区で、空き家となっていた酒蔵を拠点とした小規模分散型ホテル「BYAKU Narai」を整備している。本館、客室、離れを地域に点在させることで観光客の地域回遊を狙うほか、地域内で新たにスモールビジネスを立ち上げたい若者層の支援も手掛けるなど、地域全体の活性化を見越した事業だ。
同社の友保悟郎氏は、「地域の再生は企業だけで始まるものではない」と前置きしつつ、「企業はプロジェクト対象地を事業領域と考えがちだが、(より広い)地域・国土の明るい環境づくりにも貢献しなければならない」と意気込みを語った。
浦嶋氏
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- マーケットが持続的に成長するために――MS&ADホールディングス
MS&ADインシュアランスグループホールディングスが進める「MS&ADグリーンアースプロジェクト」は、生物多様性の保全活動を基盤としながら、自然環境が持つ機能を活用することで、防災をはじめとするさまざまな課題解決を目指す事業だ。実際のフィールドとなっているのは、宮城県南三陸町、千葉県の印旛沼流域、熊本県の球磨川流域の3箇所。それぞれ、湿地保全により治水力向上や、藻場の再生による脱炭素推進など、地域資源と課題に合わせたテーマが設定されている。
同社の浦嶋裕子氏は、自然災害の激甚化が保険料支払い額の上昇にもつながっている現状から、防災は本業のビジネス維持にも必要と説明する。さらに、「損害保険会社は地方に多くの営業所や代理店を持っている。マーケットが持続的に成長するためにも地方創生が重要」と意義を強調した。
小野氏
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- 林業の「全体最適型」を目指す――MEC Industry
MEC Industry(鹿児島県湧水町)は、三菱地所や竹中工務店などの企業の出資を受けて設立された総合林業事業会社だ。工場は、湧水町にあった廃校跡地を活用して設立した。従来の林業が伐採・製材加工・組立・販売をそれぞれの事業者が担う「部分最適」モデルだったのに対し、「木材の調達から商品販売までを、一気通貫で手掛ける全体最適型」とすることを目指している。
オフィスやホテルなど、非住宅分野で積極的に木材を活用。またこれまでは利用頻度の低かった、幹が太い「大径木(たいけいぼく)」を使用することで、森の適正な循環も促す。こうした課題解決によって地域林業全体を活性化し、担い手不足にも対応していく計画だ。地域の雇用創出やイベント等での地域との交流も活発であることを踏まえ、同社の小野英雄氏は「事業を通してまちと森の架け橋になりたい」と展望を述べた。
足立氏
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- 地域での取り組みを経て、企業自体も「再生」する――足立氏
ファシリテーターの足立氏は、3社に対し「こうした地域再生の動きには、時代に応じた『必然性』があるのではないか」と問いかけた。
友保氏は、木材の価格上昇や林業の担い手不足で、従来の事業モデル維持が難しくなっていることに触れ、「地域に飛び込んでみたことで、建設会社を持続可能にするために必要な課題がここにあったと分かった」と話した。小野氏も物価高騰に言及しつつ、「欧米の事例を見て、日本でも木材を使ったオフィスビルなどの建築ができるのではないかと発想した」という。
浦嶋氏は、「『何かあったら保険を提供する』だけでは活力のある社会にならない時代。どこにリスクがあるかを伝えたり、そもそもリスクを未然に防いだりすることで、レジリエントな社会にしなければいけない」と同社の事業に引き付けて語った。
さらに足立氏は、企業と地域の協働事例を一般化し、全国に広げることへの展望も尋ねた。友保氏は「(ある地域でのプロジェクトが)軌道に乗って、地域の担い手に任せられるようになれば、次の地域に経験を展開していける」と語り、成功したスキームは他社にも開示し、モデル化する必要性を併せて訴えた。
足立氏は改めて、地域再生に企業が関わる価値を「企業が持っている力は大きく、プロジェクトがスケールアップすれば、企業にとってもビジネスになる可能性を秘めている」と評価。さらに、「再生(リジェネレーション)という言葉は、以前あったものをそのまま再生するということではなく、どうしたら地域や地域産業が経済的に息を吹き返すのかという問いだ。ここへの取り組みを経て、企業自体も『再生』していくのではないか」と締めくくった。
横田 伸治(よこた・しんじ)
東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、サステナブル・ブランド ジャパン編集局デスク・記者。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。