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  • 公開日:2023.10.10
  • 最終更新日: 2025.03.02
日本の30by30達成へ サントリー天然水の森など122カ所を国が「自然共生サイト」の第一弾に認定

「自然共生サイト」の第一弾に認定された、神戸市北区の里山林や棚田、ため池が広がる約181.8ヘクタールの区域

環境省はこのほど、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全しようとする国際目標「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」の達成に向け、企業が有する森や里山、都市の緑地など全国35都道府県の122カ所を「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を指す「自然共生サイト」の第一弾として認定した。サントリーホールディングスの水源涵養林や、神戸市北区山田町の里山林や棚田など、大企業の工場敷地内の森林をはじめ、地域の里山やビオトープなど、さまざまなエリアが選ばれた。いずれも生物多様性保全上の重要性が既に認められ、且つ、希少な動植物種が生息・生育しているか、その可能性が高い場所だ。

今後はこの中から、国立公園など法律に基づく保護地域と重複しない区域を「OECM(Other Effective area-based Conservation Measures:保護地域以外で生物多様性保全に資する区域)」として国際データベースに登録し、その面積を増やすことで、民間の保有資産をグローバルな課題解決へと直結させていく。(廣末智子)

30by30は、昨年12月に開催された生物多様性条約の第15回締約国会議(COP15)で採択された新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の主要な目標の一つ。G7各国はそれ以前の2021年6月のG7サミットで自国での30by30を目指すことを約束していた。

これに関し、日本は国立公園などの保護地域の拡充に加え、企業有林や都市の緑地などを自然共生サイトとして個別に認定し、そこからOECMの登録区域を広げることで達成する方針を早い段階で決定。2021年時点で陸域20.5%、水域13.3%の保護地域を2030年までにそれぞれ30%にするロードマップを描き、今年3月に11年ぶりに改訂した「生物多様性国家戦略」の中でも30by30を重点項目に位置付けている。

生物多様性のための 30by30 アライアンスのロゴマーク

こうした流れに基づき、今年4月には、環境省と有志の企業や自治体、団体による「生物多様性のための30by30アライアンス」が発足。生物多様性を強力に推進することは、人と自然の結びつきを取り戻し、企業価値の向上や地域活性化にもつながるアプローチだとして、自然共生サイトへの申請を呼び掛けた。環境省によると、企業や団体、自治体を中心に申請があり、この中から、有識者による審査を経て、まずは令和5年度前期として認定されたのが122カ所だ。

今回、認定された122カ所の合計面積は東京23区の大きさを超える約7.7万ヘクタールで、国土の約0.2%にあたる。環境省は現在、本年度後期の申請を受け付け中で、来春には合計約170カ所と、さらに広大な面積が自然共生サイトして認定される見込みとなっている。

認定のポイントは、それぞれの場所が「どのように生物多様性を守ることに役立っているか」。例えば、サントリーホールディングスが水源涵養林として所有・管理する「サントリー天然水の森」は、長期の活動計画や科学的知見に基づき、森林の管理やモニタリングの活動を行っていること、そして、地域性に合った多様で健全な生態系があり、そこにフクロウやサシバといった希少な動植物種が生息・生育していること等が評価され、東京都あきる野市や兵庫県西脇市、栃木県日光市など5カ所で認定を受けた。

自治体の一例としては、都市近郊に里山が広がる神戸市北区の里山や棚田、ため池の計約181ヘクタール(東京ドーム約40個分)が挙げられる=冒頭の写真。同市がここをモデル地区として土地所有者のみならず、学生や市民団体、大学などと連携して樹木の伐採による森の再生や生物調査に取り組み、棚田やため池には多様なトンボが飛び交い、さまざまなカエルが生息する、希少な動植物の宝庫になっているという。

環境省によると、今回認定された122カ所、約7.7万ヘクタールのうち約5万ヘクタールが、国立公園などの保護地域ではない、OECMに該当する見込みで、さらに精査した後、今年度中に国際データベースへ登録する。

OECMはもともと、2010年に名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で、主催国である日本が、里山のような「人の適切な営みによって、結果、自然が守られている場」の重要性を提起する中で生まれた概念で、2018年のCOP14において、国際的に定義がなされた。環境省の説明によると、グローバルでの30by30達成に向け、「先住民族の管理している土地など法令による規制ではなく慣習や生業によって守られている場所を、地球の生態系を守るための場所としてきちんとカウントしていくことができる仕組み」だ。

このほど開かれた記者会見で、伊藤環境大臣は、第一弾の自然共生サイトの認定について、「2023年中に100カ所以上を目標としていたが、最初の申請受付で達成した。多くの民間企業等から強い関心が示されており、ネイチャーポジティブに向けた社会の変革を感じている」などと述べた。

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