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  • 公開日:2022.08.23
  • 最終更新日: 2025.03.28
創業100年のディベロッパーとZ世代、「互いにないものを持ち寄る価値の交換」で共創へ
    • 横田 伸治

    伊達敬信氏らZ世代が2022年3月にオープンさせたコミュニティカフェ「um(あむ、編む)」(東京・六本木)。Z世代ならではの未来視点を生かしたこの試みについてサステナブル・ブランド国際会議2022横浜では、不動産開発業の立場からumを支えた東京建物の青山周吾氏、内装デザインを手がけたオンデザインパートナーズの櫻井彩氏に加え、伊達氏とともに運営に携わるサステナブルライフクリエーターでモデルの前本美結氏が集い、共創にかける想いを明かした。(横田伸治)

    ファシリテーター:
    山岡仁美・サステナブル・ブランド国際会議 D&I プロデューサー 
    パネリスト:
    青山周吾・東京建物 都市開発事業部 課長
    櫻井彩・オンデザインパートナーズ
    伊達敬信・NPO法人UMINARI 代表理事兼CEO
    前本美結・サステナブルライフクリエーター/モデル

    サステナビリティをはじめ、さまざまな価値観をオープンに話せる空間を目指したカフェ「um」は、伊達氏が東京建物から街づくりに関するヒアリングを受けたことがきっかけで共創がスタート。各ステークホルダーが構想段階を「カオス」と表現するように、従来の街づくりや都市開発と異なり、Z世代の「わくわく感」を軸に、様々な試行錯誤のもと自由に意見を交換しながらコンセプトや内装のデザインが進められた。
    伊達氏は構想の出発点について「高校生から『SDGsの話を安心してできる場所が欲しい』という声を聞いていたし、周囲の仲間からも『SNSでの発信だけでは、(情報や意見の)発信者と受け取り手の間に分断が起きるから、リアルの場所が必要』と言われていた」と振り返る。
    一方、創業100年を迎えた東京建物の青山氏も、「従来の街づくりは、建設フェーズでは地域にとっては水面下で進行し、竣工時に突然建物が現れて、運営のフェーズになると徐々に元気がなくなる。そうではなく、右肩上がりでサステナブルな街づくりができないか」との問いを持っていたことを明かした。

    伊達氏は「重要なのは、多様なメンバーが集まっているということ」と断言。ディベロッパー・地域の二軸ではなく、コンセプトづくりやデザイン、設計といった建設フェーズから、Z世代が意見を出し合うプロセスを広く発信してきたと振り返る。
    模型を活用したディスカッションも印象深かったようだ。櫻井氏は「模型により、イメージの解像度を上げるプロセスを共有できた」と話す。実際のアイデアの擦り合わせは、「みんなの個性が凄くて、本当にカオス」(青山氏)だったというが、伊達氏は「そのカオスな風景を発信すると反応もたくさんあった。カオスをあえて見せることで、『自分も関わりたい』と思ってもらえた」と話す。最終的には、「はだしの場所が欲しい」「目線の高さを場所によって変えたい」など、Z世代による要望を設計に落とし込むことができたという。

    ヴィーガンの思想や行動を発信するインフルエンサーとしても活動する前本氏は、umでカフェ運営を担当するにあたり、「(ヴィーガンは)分断を目指しているわけではないのに、炎上しやすい。でも、対話をすれば絶対に悪いイメージは持たせない自信があるから、プラントベースのカフェにしよう」と決意したという。
    伊達氏は「画面越しではなく、直接コミュニケーションを取る街づくりは、東京建物にとって参考になるし、オンデザインは空間設計のノウハウをためられる。それぞれの価値を大切にしながら、全員にとって持続可能な価値も生む。お金のやり取りではなく、持っていないものを持ち寄り、共創すればいい」と意義を強調した。さらに青山氏の課題感への回答として「Z世代の強みを生かして、どんどん試行錯誤して、失敗もどんどん発信していく。それが建設フェーズのわくわく感を生む」と持論を展開した。

    セッションの参加者からは「結局は『意識が高い人』中心の場所になるのでは」という質問も。伊達氏は「サステナブルを前に出すつもりはない。ただのカフェであり、六本木にただある場所」としながらも、さらに「カオス的に展開すると、排他的になり得るのでは」と質問が挙がると、「カオスすぎると入りにくいということは、もしかしたらあり得るかもしれない。今後考えていきたい」と質問に感謝を述べる場面もあった。

    最後に、ファシリテーターでサステナブル・ブランド国際会議 D&I プロデューサーの山岡仁美氏が「共創に必要なものとは?」と投げかけると、伊達氏は「場、コミュニケーション、リスペクト。分断され、カテゴライズされている状況ではリアルな場が必要だし、そこで互いを認めるリスペクトを持って対話することが重要」と語った。

    written by

    横田 伸治(よこた・しんじ)

    サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

    東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、現職。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。

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