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  • 公開日:2021.03.23
  • 最終更新日: 2025.03.28
公民連携の「卓球カフェ」で地域を元気に!――健康調査で卓球の効果を実証

松島 香織 (まつしま・かおり)

上段左から堀田氏、伊藤氏、嘉納氏、下段左から竹田氏、長谷川氏、河村氏

三重県桑名市は、卓球とカフェを結び付け住民の健康増進を図る「卓球カフェ」で地域の活性化に取り組んでいる。卓球カフェは企業、団体などからの企画提案から始まっており、桑名市の伊藤徳宇市長は「卓球カフェの提案は行政では出てこない発想。民間のアイデアを生かし、市民サービスを向上させたい」と話す。参画している桑名市総合医療センターは、卓球カフェが与える身体的、精神的な影響を科学的に検証し「高齢者の活力、心の健康に良い影響がある」と発表。地域活性化の一端となっていることを実証した。(松島 香織)

ファシリテーター:
岡山 慶子・朝日エル 会長
パネリスト:
伊藤 徳宇・桑名市 市長
竹田 寛・桑名市総合医療センター 理事長
堀田 康広・桑名市総合医療センター 糖尿病・内分泌内科 医長
長谷川 恭子・桑名市総合医療センター 栄養管理室
嘉納 未來・ネスレ日本 コーポレートアフェアーズ統括部 執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長
河村 建夫・衆議院議員・自民党 自由民主党地方創生実行統合本部長

地域創生として期待される「卓球カフェ」

ファシリテーターを務めた岡山氏

総務省の「社会生活基本調査」(平成23年、平成28年)によると、卓球は、日本人の15人に1人が平均月2回以上行うスポーツであり、65歳以上ではもっとも愛好されているスポーツだ。また、ほどよい競争心をもたらすスポーツであり、世代を超えて楽しめ、高齢者の体力づくりに適していると、卓球カフェの企画提案者の一人である朝日エルの岡山慶子会長は強調する。さらにネスレ日本が協働し、コーヒーを提供するカフェを設けたことで、卓球カフェは健康増進だけでなく地域の新たなコミュニティとしての役割を担うことになった。

2019年3月に卓球カフェがオープンした桑名市は、公民連携を重視し、民間からの企画を受け付ける窓口「コラボ・ラボ桑名」を設置している。「役所内からの企画であれば、なぜ野球でないのかなど、しがらみが出て来る。民間からの提案だからこそスピード感をもって取り組めた」と伊藤市長は経緯を明かした。市ではかねて、各地域にある地区市民センターや公民館などの活用方法が課題になっており、市民からは「活動する場所がほしい」との声が上がっていたという。また卓球という敷居の低い活動で参入しやすく、中学生と高齢者が一緒に卓球を楽しむなど交流が生まれており、市は地域創生の取り組みとして期待している。

健康づくりとかかりつけ医を見つける機会に

桑名市の卓球カフェに参画している桑名市総合医療センターの竹田寛理事長は、医療が関わる意義として、「住民自身の健康づくり(予防医学)」、「住民がかかりつけ医を見つける機会の提供」を挙げた。ヘルスケア教室や卓球後の定期的な血圧測定などを実施し、地域の基幹病院や開業医へ協力を依頼するなど連携が進んでいるという。

同センターは、2019年9月から2020年12月まで継続して卓球をした14人を対象に運動前と運動後の血糖値、体重、体脂肪、骨格筋量を比較検証した。卓球後に血糖値が平均23.0 mg /dl低下するなど「卓球をすることで食後の血糖値は下がる」傾向が見られ、「体重減少と体脂肪率減少には大きな相関関係がある」などの結果が得られたという。また測定値が変わらない人でも測定することで食生活を見直し、生活改善がみられるといった効果があり、大きな成果となっている。

さらに2020年11月から12月にかけて、4種類のアンケートを実施し、精神面の変化を調査した。その内のひとつで、世界で最も広く使われているという自己報告式の健康状態調査票「SF-36(R)(MOS Short-Form 36-Item Health Survey)」は、「活力」や「体の痛み」などの8項目の健康状態を測定するもので、0~100得点のうち日本人の平均は50点ほどだという。だが、参加者の平均値は全ての項目で50点を超えており、特に「活力」が59.73点、「心の健康」が56.69点と高かった。

このように、卓球カフェは参加者の心と体の健康に良い影響をもたらしていることが分かった。

地域貢献できると再発見―ネスレ日本

「コーヒーはココロ、からだ、つながりに働きかける有効な飲み物」だとネスレ日本の嘉納 未來執行役員・コーポレートアフェアーズ統括部長は話す。コーヒーには焙煎の仕方や香り、味覚などさまざまな楽しみ方があるが、リラックスタイムの心にはたらく力(ココロ)、体にスイッチを入れシャキッとする力(からだ)、人と人のつながりを生み出す力(つながり)があるという。

同社は2020年に約3000人を対象に、現在の暮らしを自己評価する「主観的ウェルビーイング」調査を行い、日本では「1日に3杯以上飲んでいる人がまったく飲まない人よりも人生に対する満足度が高い」という結果を得たという。

嘉納氏は、卓球カフェを通じ「当社の製品やサービスが自治体や地域のコミュニティづくりに貢献できることを再発見した。また製品と消費者の出合いの場ともなっており、事業としてベネフィットがある」と語った。

コロナ禍での地方創生のきっかけに

公益財団法人日本卓球協会の名誉副会長を務める河村建夫・衆議院議員はビデオメッセージで、「卓球は小さな子どもから高齢者まで楽しめる競技で、転倒を防ぐなど健康維持に役立ち、医療費節約にもつながる」と語り、コロナ禍では都市部への一極集中の是正が重要であり、地方創生のきっかけとして卓球カフェに期待感を示した。

朝日エルの岡山氏は、卓球カフェの参加者から「元気になれた」「地域の人と親しくなれた」など前向きな声を聞いているという。「卓球は激しいスポーツではなく『ほどよい』競争心が生まれ、『ほどよい』人間関係が育まれる。日本人の精神性に合っているのではないか」と締め括った。3月末には名古屋市で新たな卓球カフェがオープンする。

written by

松島 香織 (まつしま・かおり)

サステナブルブランド・ジャパン デスク 記者、編集担当。

アパレルメーカー(販売企画)、建設コンサルタント(河川事業)、自動車メーカー(CSR部署)、精密機器メーカー(IR/広報部署)等を経て、現職。

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