• 山岡 仁美
  • コラム
  • 公開日:2019.07.12
  • 最終更新日: 2025.03.02
G20-首脳会議での伏線・配偶者外交が功を奏すか?

    山岡 仁美(やまおか・ひとみ)

    ―初召致での思わぬ評価―

    日本にとって初召致のG20も、去る6月28-29日に、大阪での首脳会議を無事終え、「大阪トラック」「大阪ブルーオーシャンビジョン」などの宣言も掲げられました。それにより、最も大きな波は超えたようにみられます。しかしながら、宣言も含め、議長の安倍首相の言葉には“共有”“協力”などの表現が目立ち、枠組みばかりで、具体的な行動や具体策は無いに等しいと言えます。

    その一方で、海外から思いのほか、評価されていることがあります。それは“おもてなし力”です。

    一口で“おもてなし力”と言っても、さまざまな切り口があります。大阪市民の足や物流を止めた警備のきめ細やかさ、メディアセンターでの畳スペースやハンモックの設置、ペットボトルは使用せずもバリエーション豊富な缶飲料、など、細部にわたり多くの点が挙げられています。

    その中で、とりわけ、配偶者プログラムでの昭恵夫人の“おもてなし力”が、今後の外交においてボディブローのように効き、功を奏すのでは? と海外記者からの声も届き、淡い期待を持ち注視しています。

    ―人柄がもたらす配偶者外交の副産物―

    配偶者プログラムと言えば、2006年の伊勢志摩サミットの折のように、昭恵夫人を含めて参加者が4名だけという、首脳夫人外交としては機能しないものもありました。首脳陣が議論を交わしている間に、ファーストレディたちに時に贅を尽くしもてなすという、なんとも保守的で、へつらうような振る舞いも多く、かつては目に余るものがあったものです。

    しかし、今回は違いました。

    政治的な観点からは昭恵夫人に賛否両論はあるかもしれませんが、要は、良くも悪くも、垣根やバリアを掲げすぎず、屈託も駆け引きもない人間性が、昭恵夫人の持ち味だと筆者は考察しています。

    配偶者プログラムの一幕

    今回の配偶者プログラムでは、ニシキゴイの餌やり、歌舞伎鑑賞、人力車での散策やフォトセッションなどを各メディアが取り上げています。その一方で、首脳対談が実現しなかった韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の配偶者、金正淑(キムジョンスク)さんを含め、昭恵夫人は誰ひとり、隔たりを持たずに歓迎し、懇談していました。これはまさに、SDGsで言えば「誰ひとり取り残さない」という根幹に共通する感覚でもあり、昭恵夫人の持ち味が発揮されている場面でした。

    かつて、世界的NGOの代表理事と、交渉を頑なに拒絶していた世界的大企業のCEOとの交渉のテーブルで、配偶者同志の接触を機に、大きく山が動いたということがありました。NGO代表理事の配偶者がCEO配偶者との会話を経て、「○○っていう会社はすごく我慢強いみたいね」と夫である代表理事に何気なく話したことで、そんなに我慢強いなら本気で交渉を進め根競べをしてみよう! と夫のやる気スイッチを入れたというエピソードがあります。

    ただし、今回のサミットでなんらかのコトが動く外交の一助になる資質が昭恵夫人にも秘められていると仮に捉えるとして、それが本当に発揮されているか如何は、今後の動向を見守るしかありません。

    ―配偶者外交の真価を引き出す戦略を―

    シンポジウム「海は輝く命の源」

    また、「海は輝く命の源」をテーマにしたシンポジウムでは、関西在住の小学生から大学生の未来を担う世代30人を招き、各国の首脳夫人たちとともに、彼らのプレゼンテーションに熱心に耳を傾け、さらに子どもたちと首脳夫人たちとのディスカッションにも臨んでいます。

    それについては、今回のG20最大のテーマ「海洋プラスチックごみ」と関連付けたテーマでありながら、ディスカッションというよりも、各国の取り組みや状況を子どもたちに向けて、及び各国間で、情報提供するに留まっていた感が否めません。ここでは昭恵夫人の人柄が、逆に詰めの甘さとして露呈したように見受けられます。

    実際にその後の子ともたちの反応も「他の国の取り組みがわかった」「世界共通の問題として勉強になった」などでした。さらに一歩進んで、アイデア創出や子どもたちと首脳夫人たち共通のスローガンの策定など、海洋プラスチックごみ問題が前進するようなキーワードなりアクションなりが挙がるまでのファシリテートやプロデュースがあれば、枠組みばかりの具体的行動や具体策が無いに等しい中での背中の一押し、まさにボディブローとして効いてくる可能性は出てきたでしょう。

    奇しくも、安倍首相は閉会挨拶にて、「女性のエンパワーメントについても、モメンタム(勢い)を高めることができた」と明確に述べています。そうであれば、配偶者外交においても、単に一助にとどめず、首脳会談では捗らない、ひいては今回のような枠組みばかりのスカスカの着地点にならない、極めて戦略的なエンパワーメントと注力が必要なのではないでしょうか。それは同時に、私たちが持つ“おもてなし力”を最大限に活かすためにも。そして、急速に変化する地球と社会の未来に適応するためにも。

    G20も次には、9月に松山で開催される労働会議を控えています。ここでも戦略的なエンパワーメントの一端が求められることでしょう。

    written by

    山岡 仁美(やまおか・ひとみ)

    グロウス・カンパニー+ 代表取締役

    航空会社勤務を経て、人材派遣会社の研修企画担当に。その後、人材育成への意欲から、大手メーカー系列のコンサルティング会社に移り、人材育成に関する開発・販促・広報などのマネジャー職から企業研修部門の統括部長までを務める。1000社ほどのコンサルに携わった後、独立。ビジネスフィールドの豊富なキャリアで様々な人材や組織づくりと関わり続け、自身の出産・育児との両立での管理職・起業などの経験から、多様性を活かす着眼点が持ち味である。 コンサルタント、研修講師、講演と多方面で活躍中。そのテーマは「課題解決」「リーダーシップ」「アサーション」「ネゴシエーション」「キャリアデザイン」「ダイバーシティ」「リスクマネジメント」など幅広い。

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