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人材のダイバーシティ(多様性)をお互いにインクルージョン(包摂)することが持続的成長の原動力であることはもはや常識となり、多くの企業キャリア・年齢・性別・国籍・障がいの有無など、さまざまな制限を受け入れ巻き込む仕掛けも稼働しています。
ただ、その多くは制度や施策、オフィス環境の改善など、会社の一員として、仕事を効果的に取り組めるものです。しかし、真のダイバーシティを考えれば、会社の一員であることに留まらず、社会の一員・ひとりの人としての充実度を高める仕掛けも然りです。
例えば、凸版印刷では昨年、東京23区内に独身寮を新設しました。
雇用している従業員の家族に関係する育児や介護などに手厚い施策を講じる企業は多くありますが、凸版印刷では、独身者に注視したことが特徴的です。
同社の独身寮は、都内23区内に所在するということで、まず長時間通勤を是正することが可能です。したがって、通勤にともなうストレスを軽減したり、自分ならではの時間をもてワークライフハーモニーにつながる機会を創出します。
さらに、シアタールームや共有ラウンジを設け、入居者同士がコミュニケーションを楽しめられる工夫をしています。その建材や素材には、自社商材の木目ルーバーやガラス壁の液晶調光フィルムなどを用い、自社商材に親しんでもらおうという狙いもあります。
ある程度の社会経験を経たら結婚をするという、かつて一般的であった生き方は、今や、結婚をするのは当たり前と考える人は3割強。一方、必ずしも結婚はしなくても良いと考える人が6割近くと厚労白書でも報告されています。
結婚するのも、家庭を持つのも選択肢のひとつ、それもさまざまな形があり、もちろん、独身でいるという生き方を望んでいる人も多くいるのです。このような変容に、戦略的に適応できなければ企業としては痛手になることでしょう。
凸版印刷のこの独身寮は、「働き方改革」の一環と、かつてプレスリリースもされていました。l確かに、従業員の住環境への寄与は、生産性向上や定時退社などの促進にもつながりそうです。
しかし、それ以上に、旧定義ではなく、新たな価値観に基づいた独身者のエンゲージメントを引き出す仕掛けとして、興味深いものです。
ストレスフリーやワークライフハーモニー、入居者同士の新たなコミュニティ、さらには、日常的に自社商材を身近に生活する。きっと、従業員は自社を身近に感じ、やがて愛情を感じることでしょう。
エンゲージメントとは「個人と組織が一体となり、 双方の成長に貢献しあう関係」。私はよく「企業と従業員の相思相愛」とも言っています。つまり、従業員への仕掛けの軸足には、企業側が従業員を大切にし、愛することが絶対条件です。社会や時代、環境の変化に適応し持続可能性を実現するには、もっとも身近な社会である自社内・従業員たちに目を向けることは避けられません。

山岡 仁美(やまおか・ひとみ)
グロウス・カンパニー+ 代表取締役
航空会社勤務を経て、人材派遣会社の研修企画担当に。その後、人材育成への意欲から、大手メーカー系列のコンサルティング会社に移り、人材育成に関する開発・販促・広報などのマネジャー職から企業研修部門の統括部長までを務める。1000社ほどのコンサルに携わった後、独立。ビジネスフィールドの豊富なキャリアで様々な人材や組織づくりと関わり続け、自身の出産・育児との両立での管理職・起業などの経験から、多様性を活かす着眼点が持ち味である。 コンサルタント、研修講師、講演と多方面で活躍中。そのテーマは「課題解決」「リーダーシップ」「アサーション」「ネゴシエーション」「キャリアデザイン」「ダイバーシティ」「リスクマネジメント」など幅広い。