• 足立 直樹
  • コラム
  • 公開日:2017.10.02
  • 最終更新日: 2025.03.02
第15回:ブランドを強化するために誰と組むか

    足立 直樹 (あだち・なおき)

    こんにちは、サステナブルビジネス・プロデューサーの足立です。企業の方がブランドに興味を持つのは、最終的にはブランディングによって自分の会社やその製品をより多くの消費者に選んでもらいたい、もっと言えば商品を購入して欲しいという思いからでしょう。だからこそブランドを確立したいし、そのブランドをより良いものにしたいのだと思います。

    一方で企業が自分たちの取り組みを紹介しても、ただの宣伝だと思われてしまい、なかなか消費者には信じてもらえない、共感してもらえない、という悩みも多いようです。今回はそうしたときに企業が取り得るもう一つの戦略として、すでに確立した信頼されているブランドを利用するというやり方をご紹介したいと思います。

    最近は消費者から製品そのものの品質だけではなく、使用する原材料が作られるプロセスまで問われることが増えてきています。フェアトレードとか、エシカル消費といった言葉もいろいろなところで聞かれるようになりました。

    そうしたことを気にする消費者やNGOは企業に配慮を強く求めるので、責任ある企業はそうした声にきちんと対応し、持続可能で責任のある調達を始めています。

    ところが、そうやって慎重に選んだ材料を使っても、最終製品になってしまうと違いがすぐに分かるとは限らないのです。いえ、ほとんど分からないと言った方が正確かもしれません。

    となると企業としては、配慮をしないわけにはいかないけれど、そしてそれによって追加のコストもかかるのだけれど、それがなかなか売上にはつながらないという現実に苦しむわけです。私も本業で持続可能な調達の社内制度の構築や、サプライチェーン管理のお手伝いをしていますが、企業の担当者からはよくそういう悩みをお聞きします。

    残念ながらこうした問題をすべての消費者が理解しているわけでもありませんし、企業がそこまで配慮していることもまだあまり知られていません。その上、ある程度知っていたとしても、自分がこうした問題の解決に役立てると一般の消費者は考えないのです。

    そこでアメリカのいくつかの企業とNGOが集まって、消費者に支援を求めるキャンペーンを行ないました。One Simple Action, Profound Impact「一つのシンプルな行動が、大きな影響をもたらす」)というこのキャンペーンの映像をご覧ください。

    FSC: One Simple Action

     英語なので、以下にざっと訳を掲載しておきます。

    一本の木がある。
    森は木が育つ場所。
    自分の土地を世話する女性がいて、
    森が健康であることを確かめるために鳥の声を聞く男性。
    水質を検査する科学者がいて、
    木を伐る人、
    そしてそれを父親に教わったやり方で製材する人。

    大工も、
    デザイナーも、
    そして彼らが働く会社は使う材料を責任をもって選択し、
    そしてあなたのような人がいる。
    自分の役割を果たし
    この循環を成長し続けさせ、
    森を健全に保つ。
    そして木がある。
    このストーリーを語る木が。

    一つの簡単な行動が、大きな影響を持つのです。
    FSCロゴが付いている製品を探して、
    私たちの森がこれからもずっと
    健康であり続けることを応援してください。

    (FSC: One Simple Actionより引用)

    大きな影響を生み出すのは、あなたの小さな行動なのです、ということをシンプルに、美しく、そして印象深く伝えていますね。

    このキャンペーンを行っているのはFSC(森林管理協議会)とWWF(世界自然保護基金)というよく知られたNGO、そしてHP、P&G、キンバリークラーク、マクドナルド、ウィリアムズソノマ、パタゴニアなど、日本でもお馴染の企業です。

    もちろんいずれの企業も「ブランド」としては有名なところばかりですが、もしかしたら「この企業がそういうことにも配慮しているのか!」とちょっと意外なところもあったのではないでしょうか。問題はまさにそこです。

    企業としては、自分たちがきちんとした配慮をしていることを消費者にまず知ってもらいたいですし、それに加えて、できれば購買というアクションをして欲しいのです。

    この映像ではそのことをきちんと伝えるために、“あなた”のそういう小さな行動が、この循環を成長させ、そして森を健全に保つのですよと訴えています。

    もちろんそれを企業や企業連合が言っても、消費者はあまり信じてくれないかもしれません。また宣伝か、と思われてしまうかもしれないのです。なので、このキャンペーンは、FSCやWWFという知名度も信頼性も高いNGOと共同で行ったのでしょう。

    もちろんNGOにしても、単に消費を煽るようなキャンペーンには賛同してくれません。問題の解決に真剣に取組んでいる企業だからこそ、一緒に活動してくれるのです。

    なぜなら、こうした取り組みをする企業が増えれば、そしてその企業のシェアが増えれば、それは確実に「大きな影響」となり、問題を解決するからです。特に原料を持続可能なものに切り替えることは、本質的な問題解決につながる重要な活動です。

    日本でもぜひ、信頼されるNGOと共同で、企業は消費者にこのような積極的な呼びかけをして欲しいですね。

    ちなみに、日本でももうこんなにたくさん、FSCのマークが付いた商品があります。

    FSC® – Forests For All Forever 未来のために、森と生きよう。

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    written by

    足立 直樹 (あだち・なおき)

    サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー 株式会社レスポンスアビリティ代表取締役

    一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ理事・事務局長。東京大学・同大学院で生態学を学び、博士(理学)。国立環境研究所とマレーシア国立森林研究所(FRIM)で熱帯林の研究に従事した後、独立。2006年にレスポンスアビリティを設立し現在に至る。2008年からは企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長も兼務。

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