シャンティ国際ボランティア会の鈴木晶子広報課長
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公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(東京・新宿)は、アジアの子ども達へ教育支援や緊急救援を行う国際NGOだ。35年以上にわたりアジア7カ国で図書館の整備や学校建設に尽力しており、公平で質の高い教育の提供はSDGsの目標4に該当する。同NGOの鈴木晶子広報課長は企業のSDGs達成の取り組みについて、「企業は既存の取り組みをアレンジして継続するのではなく、いかに新しいイノベーションを起こすかが問われている」と指摘している。(松島 香織)
――シャンティは海外ではカンボジアやミャンマーなどで図書館運営や教員研修、学校建設事業をされています。日本ではどのような活動をされていますか。
鈴木晶子広報課長(以下、鈴木):
東北の地域支援と移動図書館活動をしています。各地の復興状況はそれぞれ違いますが、活動を徐々に現地に移譲し移動図書館は7月で終了しました。いずれも「本という軸」で自分の人生を取り戻すという姿を見て来た、アジアでの経験が生きました。
海外へ向けた取り組みとしては、絵本を届ける運動とクラフトエイド(自立支援)をしています。安定した収入が得られると子ども達が学校に行けるようになるので、現地の文化を大切にしたフェアトレード商品を日本で販売しています。
――絵本を届ける運動にはたくさんの企業が参加されていますね。
鈴木:200社が取り組み年々増えています。企業は社員参加型の社会貢献プログラムをいかに整えていくか考えています。絵本を届ける運動は取り組みやすく、継続もしやすい。「参加しやすい」から広がっているのだと思います。
絵本を届ける運動では、支援国の言語に翻訳したシールを絵本に貼っていただきますが、社員が家族と一緒に学べたり、自分の作ったものが現地で必要としている人に届くというやりがいや満足感があるため、10年以上継続して取り組んでいる企業が多いです。
小さな一歩無くして進まない
――NGOと企業の協働で、大切なことは何でしょうか。
鈴木:海外の学校建設事業では資金協力が多いですが、それだけでなく、お互いの強みを生かす本当の意味での協働事業を展開することが必要だと思っています。教育支援事業は毎回模索の連続です。学校の竣工式には企業のトップに来てもらい、現地の状況をきちんと見ていただく。そして今後どうするかを一緒に考えていきたいと思います。
絵本を届ける運動で届けた本は27万5千冊を超えた(2017年4月時点)
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――CSRの取り組みはトップや担当者が知っていても、他部署の社員は知らない場合が多いように思います。
鈴木:積極的に社内に発信していくことが必要です。CSR活動は主流になりづらく、担当者も悩んでいるようですが、大きなことをするにも小さな一歩が無いと進みません。周知や理解が広がらなければ、一過性で終わってしまいます。
NGOにプロボノで参加したいという人が増えていますが、「会社にいるとその会社のやり方がスタンダードになってしまう。それで本当に良いのか」と迷っている人が多い。他の会社ではどうなのか、自分は今の会社を辞めたらやっていけるのか、そう考える人が増えました。社会との接点をもっと増やしてほしいと思います。
SDGsは自分に置き換えて
――国際NGOとしてSDGsをどのように見ていますか。
鈴木:日本ではまだSDGsという言葉自体が浸透していませんが、世界が作った目標という認識でなく、自分に置き換えて考えなければいけません。SDGsはNGOにとっても大きなチャンスです。SDGsという共通言語で、社会の課題をより伝えやすくなりました。
――2015年にSDGsが国連で採択された時に、偶然ニューヨークにいらしたそうですね。
鈴木:6月から9月まで研修で滞在していましたが、大小さまざまなサイドイベントが開催されていました。国連機関だけでなく、大学、企業、市民グループ、宗教団体など多様な人たちが、自分たちの切り口からSDGsを発信していました。
12兆ドルの経済効果と4億人の雇用を生むSDGs
――企業として、SDGsを達成することにはどんな意義があるのでしょうか。
鈴木:「SDGsコンパス」でも言われていますが、SDGsに取り組むことで、企業の成長やビジネスチャンスにつながる可能性が高くなります。今年のダボス会議でも12兆ドルの経済効果があり、4億人の雇用を生み出す可能性があると報告されました。企業の文脈に盛り込みながら、いかに新しいイノベーションを起こすかが問われています。
日本を含め政情が不安定な国が増えてきていますが、市場が安定していないとビジネス展開はできません。社会を安定させるためにどうするか、さまざまな立場の人とどう協働できるか考えるきっかけがSDGsです。始めなければ、社会は良くなりません。
――SDGs17項目をすべて達成するためには、「教育」というキーワードが必要だと思います。
鈴木:その通りです。教育はすべての根幹です。教育が解決しなければ、ジェンダー格差が解消されたり、経済が成長することもないでしょう。
95%のサポートがSDGsを達成させる
――昨年のCSRレポートでは、自社の取り組みをSDGsに当てはめることが、トレンドになりました。
鈴木:取り組みの洗い出しとしてはよいですが、「今やっていることをアレンジして継続すること」はSDGs達成することにつながりません。変革、イノベーションが必要です。
ビジネス転換は5%の人しかできないと言われています。企業トップのことでなく、そういった発想や感覚を持っている人が社会をリードしていく、ということです。ですが、95%の人がSDGsを理解し決定事項をサポートしなければ、達成できないのです。まずは、理解を広めること必要です。
日本の若者の自己肯定感と浸透度
鈴木:SDGsを国内課題として向き合う時、29歳以下の若者が抱える「自己肯定感の低さ」や「職場満足度の低さ」は非常に心配な兆候です(※)。「参画すれば社会は良くなるか」については、良くなると答えたのは米国では5割以上ですが、日本ではわずか3割です。SDGsが広まらない原因のひとつかもしれません。
個々で取り組むよりみんなで取り組んだ方がインパクトは大きくなります。いかに連携するかを提示するのがNGOの役割だと考えています。
※内閣府「子ども・若者白書」平成26年度版
松島 香織 (まつしま・かおり)
サステナブルブランド・ジャパン デスク 記者、編集担当。
アパレルメーカー(販売企画)、建設コンサルタント(河川事業)、自動車メーカー(CSR部署)、精密機器メーカー(IR/広報部署)等を経て、現職。