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  • 公開日:2017.07.20
  • 最終更新日: 2025.03.21
国産コーヒー豆を徳之島から――味の素AGFが生産支援
    • 吉田 広子

    左から徳之島コーヒー生産者会の吉玉誠一会長、鹿児島県大島郡伊仙町の大久保明町長、味の素AGFの品田英明社長、丸紅飲料原料部の梶原和幸部長

    味の素AGFはこのほど、鹿児島県奄美群島の徳之島でコーヒー豆生産を支援するプロジェクトに参画した。徳之島は国内でも数少ないコーヒー豆生産地の一つだが、生産拡大には台風や土壌の質、精選機や焙煎機の不足などの課題を抱えている。そこで、同社は味の素グループのASV(共通価値の創造)の一環として、コーヒー豆生産農家を支援するとともに、国産コーヒー豆を使った商品の企画・発売を目指す。(オルタナ編集部=吉田広子)

    徳之島は、奄美群島のほぼ中央に位置する小さな離島だ。約1万人が暮らしている。年間平均気温は21.6度と温暖で、サトウキビの栽培が盛んだ。

    「小さなころからブラジルの農業にあこがれていた。今から35年以上前、徳之島でキャッサバ(タピオカの原料)の葉が青々と茂っているのを見て、コーヒーも栽培できるのではないかと思った」

    こう話すのは、徳之島コーヒー生産者会の吉玉誠一会長だ。36年前に徳之島に移住し、無農薬のコーヒー栽培を始めた。

    吉玉会長は「栽培開始から4年後、初めて白い花が咲き、実がなったときは感動した。豆の焙煎技術を磨いて、『美味しい』と認めてもらえるコーヒーができるまで、7年ほどかかった」と振り返る。現在は自身が開いた喫茶店「コーヒースマイル」(鹿児島県伊仙町)で、徳之島コーヒーを提供している。

    コーヒー豆栽培を町の産業に

    2010年度には伊仙町の農家所得向上事業が立ち上がり、その一環で旧徳之島農業高校のハウスでコーヒー苗の試行栽培が始まった。その後、吉玉会長が中心となって徳之島コーヒー生産者会を設立。本格的にコーヒー豆の産地化に取り組むことになった。2012年に苗木を植え付け、2016年1月に初収穫を迎えた。

    吉玉会長は、「ブラジル原産の『ムンド・ヌーボ』を植え、黄色く熟した実を収穫した。みんなでやればできるものだ、と嬉しかった。焙煎して飲んだコーヒーは格別。徳之島はサトウキビ栽培が盛んだが、それだけでは夢がない。コーヒー豆の栽培で島を元気にしたい」と夢を語る。

    最大の課題は、島を襲う台風だ。数が多いだけでなく、台風は勢力が強い状態で上陸する。苗木を植えても、強風で倒れてしまうことが多いという。

    今回の支援プロジェクトでは、味の素AGF、伊仙町役場、徳之島コーヒー生産者会、丸紅飲料原料部の4者が契約を締結。支援期間は2020年までの3年間だ。

    コーヒー豆の輸入などを手掛ける丸紅は、強風に強い品種を探したり、物流・保管管理を支援したりする。味の素AGFは、専用農園(ビニールハウス)の設置や苗木の供給などを行う。日本の水に合うコーヒーと和菓子を組み合わせるなど、「ジャパニーズコーヒー」ブランドを掲げる味の素AGFは、徳之島産コーヒー豆の商品化を目指している。

    2016年の徳之島コーヒー生産者会の栽培本数は約600本で、収穫量は約70キログラムだった。これを5年後までに栽培本数1万本、収穫量10トンに増やすことが目標だ。

    written by

    吉田 広子(よしだ・ひろこ)

    株式会社オルタナ オルタナ編集部 オルタナ副編集長

    大学卒業後、ロータリー財団国際親善奨学生として米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。2007年10月に株式会社オルタナに入社、2011年から現職。 「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。

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