勇気と改革と情熱で、「グッドライフ」を再定義する
![]() パション・マレー氏 Images credit: Albert Chau/Sustainable Brands
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わくわくするようなセッションが満載のサステナブル・ブランド国際会議2017デトロイトが2017年5月22日―25日、米ミシガン州・デトロイトで幕を開けた。デトロイトをはじめ各地から集まったパネリストは、「グッドライフ」を再定義しようと取り組むオピニオンリーダーや研究者、チェンジメーカーたちだ。(翻訳:寺町 幸枝)
復活を遂げた街「デトロイト」で、地元起業家が開催宣言
サステナブル国際会議が、2013年に財政破綻したデトロイトで開催されることは必然だったと言っても良いだろう。この街こそ、まさに「グッドライフ」をどう再定義するかについての事例となる場所だからだ。
開会宣言をしたのは、地元の起業家であるパション・マレー氏だ。彼女はここデトロイトで食品廃棄物問題に取り組むため、堆肥製造会社デトロイトダートを創設した。
マレー氏は自身の幼い頃の経験から、サステナビリティについて一定の理解があったと話す。ミシガン州西部のグランドラピッズで育った彼女は、父親と一緒にゴミ処理所に行った経験があるそうだ。
「ゴミ処理所に何度か行ったという経験が、こんなにも私の人生に大きな影響を与えるとは思いもしなかった。ただ、父に『ここにずっと捨て続けるつもりなのか』と聞いたことを覚えている」と彼女は振り返った。
時が過ぎ、マレー氏はゴミ問題の中でも大きな問題である「食品廃棄物」に取り組む会社を立ち上げた。マレー氏は、聴衆に対して、彼女と共同創設者がどのようにして一から組織を作り上げ、デトロイトにとって「良い」ことを続けているかについて語った。そして、デトロイトの食料廃棄物をゼロにするためにどんな計画を立てているかについて説明した。
グローバル・サステナビリティ・リーダーの視点から見た「グッドライフ」
![]() マーク・リー氏(左)とエリック・ウァン氏(右)
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続いて登壇したのは、コンサルティング会社サステナビリティのマーク・リー氏と国際世論調査機関グローブスキャンのエリック・ウァン氏。この2社とサステナブル・ブランド国際会議は「サステナビリティリーダー調査2017」と題する合同調査を実施。サステナブルビジネスに取り組むリーダーたちの認識や見通しに関する最新の動向を発表した。
今回は、20周年を迎える「サステナビリティリーダー調査」を振り返り、どういう進展があったかに的を絞ったプレゼン内容だった。
両氏は、2017年3月から4月の間に、世界80カ国のサステナビリティに関する企業やコンサルタント、教授などの専門家1035人のから集めた定量的な調査結果について話した。
・まず、リオで開催された1992年の地球サミット以来、国家ではない組織が持続可能な開発に大きく貢献してきた。大きく二つに分けると、NGOと社会起業家だ。両者の実績を評価した調査では、前者は59ポイント、後者は48ポイントの評価を得ている。一方で、政府については評価が最も低く、たった9ポイントだった。
・SDGs(持続可能な開発目標)はどちらかといえば進捗が遅いが、国連は実質的な進歩を見せている。
・サステナビリティをビジネス戦略に取り入れることを当然として捉えている企業の間で、リーダーシップを認識する傾向が強まっている。例えば昨年は、ユニリーバがその筆頭だった。それに続くのがパタゴニアで、他には、インターフェースやM&S、テスラ、イケア、ナチュラ、ナイキ、GEやBASFなどが挙げられる。
世界的なリーディングカンパニーが、サステナビリティをビジネス戦略に取り入れる一環として、「理念」を明確に掲げる傾向が高まっているようだ。「理念」とは、こういう考えの企業が販売する製品だからこの商品を購入しようと消費者の動機につながる主張のことだ。
これには、企業の事業活動が、「ビジョン」と「ゴール」に基づいているかどうかが重要な鍵となる。またサステナブルなリーディングカンパニーを特徴づける3大要素には「ビジョン」と「パフォーマンス」、「信頼」が挙げられる。
最新の世論調査によると、「サステナビリティ統合戦略(ビジョン)」「イノベーション(ビジョナリー)」と「透明性・信頼性」が企業のサステナビリティリーダーシップにおいて最も高く評価されている。
次世代のトレンドを作るリーダーになるのはどの企業だろうか。サステナビリティとグローブスキャンの2社は、今後10年で、サステナブルな組織の定義は、さらに一本化されていくと予測している。