「ほぼ日刊イトイ新聞」主宰の糸井重里さんは、地方創生は何もないと思うことから始まると考える。地方が抱える課題を起点に考えてしまうと、「責任」や「義務」というニュアンスが先行してしまうからだという。従来の発想にとらわれず、あえて否定から始まる糸井さんの「地方創生」について聞いた。(聞き手・オルタナS編集長=池田 真隆)
インタビューを受ける糸井さん=5月9日、飯田橋グラン・ブルーム(東京・千代田)で
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――糸井さんは地方創生の動きについてどう見ていますでしょうか。
糸井:マーケティングの時代なので、しょうがないかもしれませんが、みんな「答え」ばかり求めているように見えます。「シャッター商店街をどうすれば活気づけられるのか」、「高齢化にどう対応するのか」などという社会問題を解決できる策を考えています。まるで答案用紙に間違わないように「答え」を書いているようです。
企業のCSR/CSV活動としても地方創生は行われていますが、社会への「責任」や「義務」、「宣伝」というニュアンスが先行し、その活動に純粋に楽しさを感じることが難しいように思います。
――例えば、国連が採択したSDGs(持続可能な開発目標)が定める項目や社会的課題を起点にビジネスモデルを考える傾向にありますが、糸井さんはどのようにすればCSR/CSV活動は盛り上がるとお考えでしょうか。
糸井:むしろ、「答え」を追いかけるのではなく、「問い」を投げかける側になることで、気付きを与えることができるのではないでしょうか。
何かとコンプライアンスといわれる世の中ですが、企業のトップが「やりたいことはやろうよ」と、誰に頼まれるわけでもなく動くことが理想的ですね。
そうした動きは責任感や義務から発生したものではないので、答案用紙に答えを埋めることではなく、何もない白紙の状態から考えていけます。
――このほど、糸井さんはご自身の出身地である群馬県前橋市に岡本太郎の作品「太陽の鐘」を移設するというまちづくりプロジェクトに関わりました。このプロジェクトも白紙の状態から考えたということでしょうか。
糸井:地方創生は課題を起点に考えるので、どうしてもネガティブな話から始まります。負傷した箇所をどのような治療法で治していくのか、マイナスな状態を0(ゼロ)に戻すようなものが多い印象を受けますが、今回は0にすることを飛び越して、一気に「体操しよう!」というような考え(気持ち)で呼びかけてみました。
前橋市の広瀬川沿いの市有地に太陽の鐘を移設しますが、芸術ではなく岡本太郎を置きたかったという思いがあります。つまり、価値のある何かを飾るように置いているわけではありません。
![]() 5月9日に行われた発表会では前橋市に移設する太陽の鐘のジオラマも展示された。移設は今年11月を予定している
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太陽の鐘を見て感じて、岡本太郎の生き様を見出してほしいです。昔、ご本人に、「芸術とは何ですか?」と聞いたところ、「何だこれは?と思うことが芸術だ」と答えてくれました。この太陽の鐘が前橋に移設したら、子どもも大人も「何だこれは?」と思うはずです。なかには、何でこんなところに建てたのか?と悪く言う人だっているかもしれません。でも、この太陽の鐘がきっかけで多くの人が前橋のことを気にしてくれるようになることを期待しています。
また、今回は前橋市に拠点を置く企業24社が支援団体「太陽の会」(会長 田中仁・ジンズ代表取締役社長)を結成して、太陽の鐘の修復費用約3000万円全額を出しました。がんばればこんなことができるんだという全国の地方都市のモデルになってくれたらうれしいと思っています。
池田 真隆 (いけだ・まさたか)
株式会社オルタナ オルタナ編集部 オルタナS編集長
1989年東京都生まれ。立教大学文学部文芸思想学科卒業。大学3年から「オルタナS」に特派員・インターンとして参画する。その後、編集長に就任し現在に至る。オルタナSの編集及び執筆、管理全般を担当。企業やNPOなどとの共同企画などを担当している。 「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。