• 足立 直樹
  • コラム
  • 公開日:2017.04.19
  • 最終更新日: 2025.03.02
第10回:未来の自動車は牛ふんで走る!?

    足立 直樹 (あだち・なおき)

    Image credit:Herry Lawford

    こんにちは、サステナブルビジネス・プロデューサーの足立です。この連載も10回目となりましたが、これまで紹介したブランドは海外のものばかりでした。日本にサステナブルなブランドはないのか? そういう声が聞こえてきそうですね。

    そこで今回は日本企業で、サステナビリティへの取り組みがブランドになっている企業ご紹介したいと思います。しかも、それは日本を代表するブランドです。

    こう言うと察しの良い方ならもうお分かりかもしませんが・・・。

    それは「トヨタ」です。トヨタが販売するハイブリットカーのプリウスは、環境に配慮したエコカーの代名詞になっていると言っていいでしょう。

    1997年12月に「21世紀に間に合いました」というキャッチコピーで、手塚治虫へのオマージュのように誕生したハイブリッドカーは、これまでのガソリン車のおよそ倍という驚異的な燃費でした。

    初代プリウスCM

    いま見るとちょっと古めかしく感じるCMですが、それもそのはずです。なにせ今年でちょうど20年になるのです。ハイブリッドカーは当初はエコカーという特別なジャンルの車でしかありませんでしたが、今やトヨタの稼ぎ頭になっており、また多くの自動車メーカーが後を追うようにハイブリッドカーを出しているのはご存知の通りです。

    一方でこの20年の間にはさまざまな技術が発達しました。そのため、アメリカのカリフォルニア州では、来年2018年からは、ハイブリッドカーがもはや低公害車とは認められなくなることが決まっています。

    そのような中、トヨタをはじめとする日本の自動車メーカーが力を注いでいるのが、燃料電池車(FCV)です。けれども、国や地域によっては、電気自動車(EV)を本命と考えているメーカーも増えてきています。

    FCVは、貯蔵性の良い水素を燃料とするため、クリーンであるだけでなく、航続距離が長いのも特徴で、日本では官民を挙げて開発と普及を進めています。トヨタが2014年に量産型として世界で初めて市場に投入したFCVは、その名も『MIRAI』です。いかにトヨタがFCVに車の未来を期待しているかが伝わってくるようですね。

    しかし米国では、新興自動車メーカーであるテスラが、スタイリッシュかつ高性能なEVを発売し、大変な人気を博しています。テスラは単にEVを作るだけではなく、太陽光パネルによるクリーンな「発電所」を米国中に作り、クリーンな電気でEVが走るという未来のエコシステムを描いて、ユーザーを魅了しているのです。

    技術競争だけならいいのですが、テスラのCEOであるイーロン・マスクは、「fuel cell(燃料電池)なんてクソだ、fool cell(馬鹿な電池)だ」、とこき下ろしました。紳士的とはとても言いがたい言動ですが、高価な水素ステーションの建設費やエネルギーの利用効率を考えれば、燃料電池は現実的ではないという主張です。

    トヨタもなぜそこまでこき下ろされなくてはいけないのか当惑したようですが、それに対抗して作ったのがこちらのCMです。

    Fueled by Bullsh*t Presented by Toyota Mirai

    トヨタの『MIRAI』であれば、どんなものからも燃料(水素)が作れるということを示すために、アメリカの牧場に大量に廃棄物として存在する牛ふんを使って『MIRAI』を走らせて見せたのです。

    このCMでエンジニアとして登場するのは、実際に燃料電池の研究を行なっている研究者だそうです。牧場主から牛ふんを引き取り、発酵させて水素ガスを発生させ、それを充填して『MIRAI』で颯爽と走って見せます。「牛のふん」も含めて、「なんでも燃料になる」というのは、なかなか明るい未来像と言えるのではないでしょうか。

    EVとFCVのどちらに軍配が上がるのかは、もう少し時間が経ってみないと分かりません。EVの方が現実的かな、と個人的には思うものの、やはりここは日本のブランドに頑張って欲しいところです。たとえEVが主流になったとしても、牛ふんなどを燃料とするFCVは一定の需要はありそうな気がしますしね。

    そして何より、辛辣かつ、かなり失礼な批判にユーモラスにわかりやすく回答しているこのCMは、もっと評価されてもいいのではないでしょうか。

    サステナブル・ブランドにとって重要なことは、未来をどうするつもりなのか、消費者に具体的に示し、想像させ、それについてきてもらうことです。当然その際には、わかりやすさが求められますし、ユーモアがあれば最高です。

    願わくば、日本国内でもこうしたサステナビリティを正面から語るようなコミュニケーションがどんどん増えるといいですね。サステナビリティは私たちの未来に関わる大きな問題なのですから。

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    written by

    足立 直樹 (あだち・なおき)

    サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー 株式会社レスポンスアビリティ代表取締役

    一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ理事・事務局長。東京大学・同大学院で生態学を学び、博士(理学)。国立環境研究所とマレーシア国立森林研究所(FRIM)で熱帯林の研究に従事した後、独立。2006年にレスポンスアビリティを設立し現在に至る。2008年からは企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長も兼務。

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