「レポートはタイムリー」と浜中裕徳・IGES理事長(4月11日、都内で)
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一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)と公益財団法人地球環境戦略研究機構(IGES)は、日本企業の「持続可能な開発目標(SDGs)」の取り組みについて共同で調査を行い、4月11日、レポートを発表した。日本企業のSDGsへの取り組みは、「企業理念や事業との整合性を判断するチェックリスト(棚卸し)として活用」、「一部の企業はSDGsを企業の理念や経営戦略へ取り込み、企業価値の向上を目指している」と分析している。(オルタナ編集部=松島 香織)
調査対象はGCNJの会員企業233社と、非会員企業や省庁など17社の延べ250社で、アンケートやヒアリングを行った。レポートは調査結果を分析し、LIXIL、オムロン、サラヤなど企業の先進事例を提示しながら考察を加え、企業などがSDGsを促進するための身近な手引きとなるよう作成した。
「SDGsはグローバル・ユニバーサル目標で、科学者・NGOなど全ての人に関わるが、企業の役割が一番大きいと思う。調査結果を分析して取り組みの実態が随分わかってきた。レポートは、貴重でタイムリーなもの」とIGESの浜中裕徳理事長は話した。
調査結果では、CSR担当者のSDGsの認知度は2015年の61%から84%に増加した一方、経営陣の認知度では20%(2015年)から28%と伸びは小さかった。レポートは日本企業の特徴として、ボトムアップで推進を図った後経営陣の認知度が高まりPDCAで回してトップダウンで構築、ステークホルダーに普及していくプロセスをたどっていると分析している。
有馬利男・GCNJ代表理事は「IRは変わり始めている」と話した(4月11日、都内で)
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IGESの森秀行所長は「ボトムアップとトップダウンの融合型アプローチが必要。PDCAを回せば社内での理解が進むだろう」と説明した。さらに「『社会のニーズ(SDGs)=ビジネス』という考え方は大変重要だと思う。欧米ではそういうスタンスで進めている。行政は明確なビジョンや実施体制の構築が必要で、自治体でもSDGsを総合計画へ取り込むべき」と、企業だけでなく、社会全体でSDGsを推進することを提言した。
GCNJの有馬利男代表理事は「経営トップは当然のことながら、業績を考える。SDGsに取り組まなければならないと、頭で分かっていても本気でやるところまでいっていないのかもしれない。だが、消費者や投資家のマインドは変わり始めており、将来性に関する質問が多く出てくるようになった。そうなると経営者も変わるだろう」と話した。
「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のPRI(国連責任投資原則)署名は、インパクトが大きかった。ESGを真剣に考える気運が出てきており、IRは変わり始めている」と有馬代表分析した。
GCNJ・IGES共同調査レポート
「動き出したSDGsとビジネス~日本企業の取組み現場から~」
松島 香織(まつしま・かおり)
サステナブルブランド・ジャパン ニュースサイトの立ち上げメンバーとして参画。その後2022年12月から2025年3月まで、デスク(記者、編集)を務める。