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  • 公開日:2017.03.13
  • 最終更新日: 2025.03.26
ユヌス氏「東京をソーシャル・ビジネス・シティに」

    森 摂 (もり・せつ)

    インタビューを受けるモハメド・ユヌス氏=2月20日、舞浜アンフィシアターで

    ノーベル平和賞のモハメド・ユヌス氏がこのほど来日した。2月20日夕方に出演した「みんなの夢AWARD7」会場(舞浜アンフィシアター)内で、本誌オルタナとの単独インタビューが実現し、混迷するグローバル資本主義市場や社会課題の解決、ソーシャルビジネスの役割などについて聞いた。(オルタナ編集長・森 摂)

    ――昨年以来、英国のEU離脱やトランプ米大統領の当選など、グローバル資本主義に大きな影響を与えかねない事例が続いています。

    ユヌス:これらは、まだ兆候です。中間層のフラストレーションや怒りはさらにひどくなる。政治家は、外国人がわれわれの仕事を奪い去ると説明します。仕事が中国やメキシコに取られると嘆くが、本当はもっと根が深いのです。

    それは資本主義そのものの問題なのです。巨大な富が一部に集中する仕組みです。いま1%の富裕層が99%の富を独占していると言われますが、明日には『1%以下』が『99%以上』を独占するかもしれません。これは非常に危険なシステムです。

    これにより今後も政治的対立や、敵意や怒りが激化するでしょう。この対立を止めるためには、富の偏在のスピードをできるだけ遅くし、いつかはゼロにし、さらにはその動きを逆戻りさせ、富の偏在が解消される方向に向けなければなりません。

    ――富の偏在という社会課題の解決において、ユヌスさんは楽観論者ですか?それとも悲観論者でしょうか。

    ユヌス:私は圧倒的な楽観論者です。人間にはそれを解決する力がある。人々に力を与えてあげれば必ず解決します。それにはまず、問題の特定から始めなければなりません。

    なぜ、私たち英国民はEU離脱を選んだのか。なぜ、私たち米国民はトランプ氏を大統領に選んだのか、と。EUという枠組みは理想的な未来社会の形と見られていました。それがある日突然、壊れたのです。

    ――いま先進国の中間層の問題と、発展途上国での貧困や食糧の問題が並行して起きています。これは同時に解決されるべきか、あるいは別個に対応すべきでしょうか。

    ユヌス:これは同時に解決することを目指すべきでしょう。富裕層の1%はいったいどこにいるのでしょうか。せいぜい6カ国です。つまり99%の富は、この6カ国に蓄積されています。それ以外の国の間で貧富格差はあまりないと言っても差しつかえはありません。

    解決のためには、人々に技術と資金が与えられるべきです。グラミン銀行のマイクロクレジットは、多くの人をアントレプレナー(起業家)にしてきました。若い人でも学生でもビジネスを始めることができるのです。

    ――いま、日本でも想定的貧困層の割合は16%とされています。日本でもマイクロクレジットが必要になってきたと言えますね。

    ユヌス:もちろんです。日本だろうが米国だろうが同じです。どこの国でも金融システムは貧しい人たちのためには機能していないのです。ですので、貧困層のために金融をデザインし直すことが重要です。

    ――金融といえば、日本では「休眠口座」の社会的活用が実現することになりました。ユヌスさんは以前から日本でも休眠口座の活用を提唱されていましたね。

    ユヌス:大変すばらしいことです。これを元にソーシャル・ビジネス・ファンドを創設するのが良いでしょう。これを、社会的課題を解決しようとしている企業やNGOに投資すればよいのです。

    ――ユヌスさんはこのようなソーシャル・ビジネス・ファンドの創設をどこかの国で経験されたのですか。

    ユヌス:英国で実現しました。社会起業家のためのファンドをつくりました。英国では慈善のための寄付や、NGOへの寄付などが入り混じっており、かえってそこが良くありませんでした。これからはソーシャルビジネスに特化したファンドにするのが良いです。

    ――明日(2月21日)、ユヌスさんは小池百合子・東京都知事と会われるそうですね。

    ユヌス:東京は、来たる五輪に向けて、『ソーシャル・ビジネス・シティ』を目指すべきと提言しようと考えています。五輪とソーシャルビジネスを組み合わせるのです。そして、東京五輪をソーシャリー・オリエンテッド(社会的志向)なものにしてはどうでしょう。

    例えば、1万2千人の選手のために選手村を作ります。五輪が終わって、選手村が空き家になった時に、競売(オークション)に掛け、それを社会的投資に回すのです。これは以前の五輪でも例があります。

    あるいは、最初から、住宅困窮者の利用を想定して選手村を作るというやり方もあります。ホームレス、低所得者、生活困窮者のために設計するのです。

    日本でも問題になっている食糧廃棄については、ソーシャルビジネス団体と連携して、選手向けの食糧の一部を低所得者に分配することも可能です。そうした仕組みを東京五輪までに確立して、その後も日本社会で活用していけばよいと思います。

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    森 摂 (もり・せつ)

    株式会社オルタナ代表取締役社長・編集長。

    東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。訳書に、パタゴニア創業者イヴォン・シュイナードの経営論「社員をサーフィンに行かせよう」(東洋経済新報社、2007年)がある。一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事。特定非営利活動法人在外ジャーナリスト協会理事長。

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