• 細田 悦弘
  • コラム
  • 公開日:2017.03.16
  • 最終更新日: 2025.03.02
第11回:ある牧場主に学ぶ「ブランディング超入門」 (2) ロゴマークは『太鼓判』

    細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

    ~ ビジネスと社会課題解決を両立させ、『らしさ』で競争優位を創り出す!待望の戦略メソッド ~

    180年前のヨーロッパのラグジュアリー・ブランドも、500年前の日本の羊かん屋さんも、戦後に大発展を遂げた著名なメーカーも、ブランディングに際して、はじめの一歩は『らしさ』の探求です。『らしさ』は、現代企業の命運を左右する、無形の競争優位の源泉です。そして、そのシンボルとなるのが、「ロゴマーク」です。今回も、牧場主・Aさんのブランド戦略をモチーフに、「ロゴ」がどれほど重要であるかを解説します。

    『ロゴマーク・A』の意味

    Aさんは、真摯な『想い』と『こだわり』を持って、自分ならではの育て方や製法で、格別の牛肉を提供します。自分が誇りと責任を持って提供できる牛肉だけに、ロゴマーク「A」をつけ、包み紙や店頭などで、自分の『想いやこだわり』をメッセージとして発信します。

    もちろん、マークは商標登録済です。この「想い」「こだわり」「ならでは」こそが、『らしさ(Brand Identity)』なのです。『らしさ』は、表層的なイメージだけでなく、「自分(自社)とはいったい何者なのか」という自己の存在意義に関わる問いかけに対して、その答えとして深層から湧き出る概念です。

    顧客や社会は、「A」というシンボルマークを見て、その『らしさ(Brand Identity)』に期待をしてきます。ブランド・アイデンティティ(Brand Identity)とは、ブランドの基本コンセプト、すなわち、企業が顧客やステークホルダーの頭や心の中に何を築きたいのか、どんな約束をしたいのか、ということです。

    その『約束』の目印が、ロゴマークです。お客様やステークホルダーは、「A」というシンボルマークを見て、その『らしさ(Brand Identity)』に期待をしてきます。「『A』って、○○だよねー!」という期待に応え続けられれば、「A」というマークは、単なる記号ではなく、「信頼と愛着」のシンボルとして機能します。「Aといえば、○○」「○○といえば、A」という『ブランドの約束(ブランド・プロミス)』が堅持されます。

    ヨーロッパのラグジュアリー・ブランド等が、模倣品や偽物に対して、あれほどナーバスなのは何故でしょう?自社の売上に響くこともあるのかもしれませんが、何より、自社の『命』とも言える「ロゴマーク」を冠せられてしまった粗悪品が出回ることによって、『約束(ブランド・プロミス)』が守れなくなることが痛手になるという見方は重要です。「最近、○○ブランドって、今イチだよねぇ」といった風評が立つのが最も脅威だといっても過言ではありません。

    ロゴマークは、『太鼓判』

    ブランド意識の高い企業の社員の方は、何かと「うちのブランド部門は、ロゴの扱いに厳しいなあ」と、よくぼやきます。なぜ厳しいのか、そのわけを解説します。

    社標・商標などの「ロゴマーク」には、2つの側面があります。「知的財産」として管理する側面と、シンボルマーク、シンボルカラーといった、ブランドの象徴として目に見える形にして、企業のイメージを統一された印象を与える「VI(Visual Identity)システム」の運用の側面があります。

    社名の表記やロゴマークは、それ自体が『品質保証書』のようなものであり、企業の顔であり、財産です。社員の精神的支柱にもなります。したがって、ロゴを付する限りは、実体として、自社ブランドにふさわしいかどうかを厳格に判断し、付けるべきところにはきちんとつける、そうでない時は、毅然とした姿勢でオペレーションする。

    企業にとって、ロゴマークは、ステークホルダーに示す『太鼓判』であり、お客様からは、信頼と愛着の目印となります。お客様にとっては宝であり、社員の誇りの旗頭です。そして、ブランドマネジメント部門は、その番人です。

    だからこそ、VIシステムの運用ルールは厳格に定める必要があるのです。これに基づき、ブランドマネジメント部門は、ブランドのコンセプトや約束、シンボルマーク等を効果的、効率的に制御・管理します。

    シンボルマークは、視覚的にブランドの価値を強く訴えるものであり、会社の信頼性や品質、企業としての品格や個性などのイメージにつながります。そして、付けるべきと判断したら、どのような場面でも一貫した印象を与えるようマネジメントすることが重要です。ブランドの肝は、「一貫性(consistency)」です。

    ロゴマークの扱いは、「貼ってはいけないところには、絶対に貼ってはいけない」「貼るべきとことには、きちんと繊細に貼る」というのが鉄則です。

    とかく、「うちは、BtoB企業だから」「うちは中小企業だから」と、ブランドなんて関係ない、ブランド戦略なんてムリだ、といった声を聞くことがあります。ブランド戦略の真髄は、「顧客をはじめとする社会(ステークホルダー)からの支持を獲得し、中長期かつ安定的に利益を確保し、持続的成長を果たすこと」にあります。

    あらゆる企業にとって、顧客や社会からの支持が経営基盤であり、競争優位の源泉です。そして、多くの企業が「ロゴマーク」を掲げており、そのもとにビジネスが行われているはずです。規模の大小・業種業態に関わらず、「ロゴマーク」は大変重要です。ロゴマークの扱われ方を見れば、その企業のブランディングへの意志入れが推し量れます。

    Credibility&Visibility に立脚したオペレーション

    本コラムの主題の「CSRブランディング」は、顧客や社会から「信頼と愛着」を獲得し、持続的成長・中長期の企業価値向上を目指す戦略メソッドです。そのためには、実体(Credibility)の信頼感をCSRで担保し、見え方(Visibility)で、自社らしい魅力を醸し出す。Credibility&Visibility の両輪に立脚したマネジメントが必須となります。

    ブランドは、企業にとって顧客をはじめとするステークホルダーへの『約束』であり、ロゴマークは『信頼と愛着の旗印』です。期待に応える、ブレのない一貫性ある事業活動を続けた成果がロゴマークに蓄積され、顧客や社会にとっては、そのロゴマークが約束の証であり、象徴となります。

    written by

    細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

    公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師 一般社団法人日本能率協会 主任講師

    1982年 中央大学法学部卒業後、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン) 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や教育・研修機関等での講演・講義と共に、企業ブランディングやサステナビリティ分野のコンサルティングに携わる。ブランドやサステナビリティに関する社内啓発活動や社内外でのセミナー講師の実績豊富。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」を持ち味とし、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。 Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト、経営品質協議会認定セルフアセッサー、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。 ◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史 ◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、公益社団法人日本監査役協会「月刊監査役」(2023年8月号) / 東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。

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