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NGOのブランディング戦略
今回とても印象的な話をしてくれたのは、コンサベーション・インターナショナル(CI)という米国はワシントンD.C.に本部を置く国際的な環境NGOの方です。CIは1987年設立とそれほど古くはないのですが、今では世界30ヶ国以上に合計1000人以上のスタッフを抱える、生物多様性の分野で世界的にとても影響力のあるNGOの一つです。
その理事長兼CEOであるピーター・セリグマンがビジネスフォーラムに登壇し、CIのブランディグについて話をしたのです。
CIは専門性も高く、業界ではとても有名なNGOですが、一般にはそれほど知られているとは言えないかもしれません。ですから、自身のブランドをどう高めるか、とても真剣に考えたのだそうです。知り合いの専門家にアドバイスを求め、彼が得た結論はというと…。
「ブランディング」とは「マーケティング」ではない、ということだそうです。ブランディングとは単に有名になるということではなく、ブランドとは自分たちのDNAであり、そもそも自分たちは何者であるのかだ、ということに気付いたのです。
そしてそれを整理した後に、自分たちは誰に対して、どのようなメッセージを発すべきなのか、それを真剣に考え、そのメッセージを込めていくつかの映像を作ったのです。その1つをご覧ください。
Mother Nature
これはCIの『Nature is speaking』というキャンペーンサイトで公開されている映像の一つなのですが、そこには有名俳優がさまざまな「自然」になって、「自然」の視点で語る映像がたくさん公開されています。
『Mother Nature(母なる自然)』ではジュリア・ロバーツが母なる自然となり、その視点から自然と人間を語ります。特に印象的なのは、「I don’t really need people. But people need me.(私は別に人間なって必要としていないわ。でも、人間は私を必要としている)」という台詞です。
もう一つ、これはいかがでしょうか?
The Ocean
海もまた、母なる自然と同じようなことを言っていますね。「Every living thing here needs me.(地球上のあらゆる生きものは、私を必要としている)」と。その後に、いろいろと人間に厳しい言葉が続き、さらに最後に、一度だけしか言わないからよく聞きなさい、と言っている言葉が痛烈です。
「If nature isn’t kept healthy, humans won’t survive. Simple as that. (自然が健康に保たれなければ、人間は生き延びることはできない。簡単なことだ。)」
とても説得力があるのは、ハリソン・フォードが渋い声で語っているせいだけではないでしょう。
美しい映像に、よくこれだけ集めたなと感心するほどの名優たち。ぜひNature is speakingのサイトでご覧いただきたいと思います。きっとなるほどな、と思うはずです。
ここでCIが一貫して訴えているメッセージは、「Nature doesn’t need people. People need nature.(自然は人間を必要としていない。人間には自然が必要だ。)」というシンプルなものです。しかし、これ以上力強く私たちを説得する言葉はないのではないでしょうか。実際、セリグマンの講演は、大変な喝采を浴びていました。
さて、それではあなたの会社は、どんなシンプルな、けれど力強いメッセージを発していますか?
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足立 直樹 (あだち・なおき)
サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー 株式会社レスポンスアビリティ代表取締役
一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ理事・事務局長。東京大学・同大学院で生態学を学び、博士(理学)。国立環境研究所とマレーシア国立森林研究所(FRIM)で熱帯林の研究に従事した後、独立。2006年にレスポンスアビリティを設立し現在に至る。2008年からは企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長も兼務。