• 青木 茂樹
  • コラム
  • 公開日:2016.12.14
  • 最終更新日: 2025.03.28
G☆Local Eco!
「自転車推進活性化法」可決をどう活かすか?

    青木 茂樹 (あおき・しげき)

    Napa Valleyへのキャリア付き路線バス(2016年6月筆者撮影)

    [G☆Local Eco!第6回]12月9日、超党派の議員による「自転車活用推進議員連盟」が議員立法として提出していた「自転車推進活性化法」が参議院で可決され成立した。矢継ぎ早に可決される法案が多い中、1999年に連盟が結成されて以来、17年かけて成立に至ったことに敬意を表したい。

    来年度以降、様々な交通環境の整備が行われていくことと思われるが、強調すべきは、法案の目的として1)環境負荷の低減、2)災害時の機動性の高さ、3)国民の健康増進が明確にうたわれていることだ。オランダ、ドイツを始め欧米に広まっている自転車環境の整備が、ようやく日本でも本腰を入れはじめることになる。

    これは単に自転車専用のレーン(バイクレーン)を敷くとかレンタバイクを増設するだけではなく、まさにサステナブルな地域社会づくりが地球環境にも健康にも優しいという、サステナブル社会の象徴としてのパラダイム・シフトを期待したい。

    Berkleyへの地下鉄内の自転車置き場(2016年6月筆者撮影)

    法案の第8条12項には「自転車と公共交通機関との連携の促進」がうたわれている。欧米ではバスに自転車用のキャリアが付いていたり、電車内に自転車を置くスペースがあったりするのが普通である。日本の公共交通機関の多くは安全第一として、様々なリスクを考えてこれを排除してきた。時間帯や路線にもよるが、もっと柔軟な対応を求めたい。

    また、公共交通といっても都内と地方では大きく状況が異なる。都内、例えば人口89万人の世田谷区を例にとると、東急、京王、小田急は東西を結んでいるのに、南北の主たる電車ルートはない。バスが環七、環八を走るが交通渋滞で時間をあてにはできない。山手線内で始まったレンタバイクがこうしたエリアでも進められると面白い。例えば区内の10大学同士がレンタバイク共有すると単位互換などの連携事業も進むだろう。

    Berkleyの飲食店のサイクルスタンド(2016年6月筆者撮影)

    一方、少子高齢化・人口減少が進む地方では、路線バスや地方路線が日中は空箱で走っているものが多い。幹線としての公共交通と自転車やコミュニティバスなどをどう連携させるかという地域交通のデザインに可能性が見えてくるはずだ。路線バスも10年前までは路線維持の支持が多かったようだが、昨今は全く利用しないという人も増えてきている。他方、高齢者のマイカー事故が連日ニュースとなる。大きく地域交通のデザインを見直すタイミングにも来ているはずだ。

    環境負荷低減や健康増進のために、積極的対策をとっている国がある。人口72万人のオランダ・アムステルダムでは週3回以上、片道10kmの自転車通勤者は所得税が約3万7千円減税されている。人口の半分が自転車で移動しているとも言われるそうだが、石造りの街並みにしゃれた自転車が絵として溶け込んでみえる。

    人口28万人のドイツ・ミュンスターでは、サイクリストへのサービス総合ステーションを100箇所つくっている。人口の34%が自転車移動、21%が徒歩であるため、街中の自動車の時速制限を30kmにしている。

    来年以降、日本でも各地方公共団体でこの法案対応した動きが見られると思うが、「環境対応、健康増進、災害リスク」に対応した地域交通デザインとして、サステナブルな都市計画へとつなげて頂きたい。

    written by

    青木 茂樹 (あおき・しげき)

    サステナブル・ブランド国際会議 アカデミック・プロデューサー 駒澤大学経営学部 市場戦略学科 教授

    1997年 慶應義塾大学大学院博士課程単位取得。山梨学院大学商学部教授、 University of Southern California Marshall School 客員研究員、Aalborg University Business School 客員研究員(2022年4月〜2024年3月)などを歴任。 多くの企業の新規事業の立ち上げやブランド構築に携わる。地方創生にも関わり、山梨県産業振興ビジョン策定委員、NPOやまなしサイクルプロジェクト理事長。人財育成として、私立大学情報教育協会FD/ICT活用研究会委員、経産省第1回社会人基礎力大賞を指導。やまなし大使。

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