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ダイバーシティのある働き方のためには、管理職の裁量を拡大するような、根本的人事評価の見直しが必要です。ただし、その際に現場のマネジメントまで管理職が行ってはいけません。現場に任せれば当事者意識が生まれ、チームとして生産性を上げることができます。マネジメントすることにこだわらず、しなやかに裁量することが大切です。
前回、人事評価制度の抜本的な見直しについてお話いたしました。職場のダイバーシティを進めるためには、フルタイム従業員など制限のない人財と、時短など制限のある人財を同じ土俵に乗せるスケール設計が必要です。しかし、先日、複数企業の管理職の方たちと懇談した際に、ハッとさせられたことがありました。
各社とも、日本を代表する大手企業。もちろん、それぞれ、人事評価制度を導入し、ダイバーシティや女性活躍推進にも注力をしていらっしゃいます。育休復帰者や時短勤務者の話題で、やるべきタスクをやり残した際の本人のモチベーションや、誰がそれを補うのか。管理職としては神経を使う、と誰もが発言している中で、ある方が「そこで管理職がマネジメントしてはダメ」とおっしゃいました。管理職がAさんのフォローや、BさんとCさんのサポートをし、更にチームとしてサポート体制化を図ることをしていては、弊害が出るというご意見でした。
ならば、どうするのか?
育休復帰者、時短勤務者、プロパー勤務者含め、全員にやり方を委ねることです。ただし、それが一部のスタッフに負担がかかる偏りや、お互いに寄りかかり過ぎて生産性に影響が出るなどした際には、管理職が介入するのです。
委ねられるということは、育休復帰者、時短勤務者を含む忙しいチームにとって、面倒なことなのかもしれません。しかしそれは、全員がダイバーシティへの当事者意識をもつことに繋がります。それぞれの立場で相手の事情や課題を自分事として捉え、チーム力も上がり、モチベーションも生産性も向上されるのです。
考えてみれば私自身でも、日常業務の中で当たり前のように委任や委譲をしています。それは、人財育成のコンサルティングや研修などの中で、クライアント各社様にも推奨し続けてきたことでした。
ダイバーシティや女性活躍は、その推進に向けて、特別なマネジメントや手法を駆使することに力を注ぐのではなく、日常で当たり前化することが大きなポイントになるのです。
会社が作った人事評価制度をいち管理職が変えることはできません。でも実際に評価をするのは管理職です。時短だから評価がマイナスになるのではなく、時間内での仕事の質はもちろんのこと、時短勤務者の委譲のしかたを評価するべきなのです。
プロパー勤務者も同じように、残業量の多さを評価するのではなく、当人の仕事の質を評価します。自分で処理することに加え、他のスタッフに再委譲する力量、重複するタスクとのプライオリティの見極め方など、委譲されたことをどう進めたのかも含めて判断することが必要です。
マネジメントに固執せずに会社の制度や仕組みを使いこなす、しなやかな裁量が、管理職に求められる最大の要件の一つと言えます。

山岡 仁美(やまおか・ひとみ)
グロウス・カンパニー+ 代表取締役
航空会社勤務を経て、人材派遣会社の研修企画担当に。その後、人材育成への意欲から、大手メーカー系列のコンサルティング会社に移り、人材育成に関する開発・販促・広報などのマネジャー職から企業研修部門の統括部長までを務める。1000社ほどのコンサルに携わった後、独立。ビジネスフィールドの豊富なキャリアで様々な人材や組織づくりと関わり続け、自身の出産・育児との両立での管理職・起業などの経験から、多様性を活かす着眼点が持ち味である。 コンサルタント、研修講師、講演と多方面で活躍中。そのテーマは「課題解決」「リーダーシップ」「アサーション」「ネゴシエーション」「キャリアデザイン」「ダイバーシティ」「リスクマネジメント」など幅広い。