• 足立 直樹
  • コラム
  • 公開日:2016.10.19
  • 最終更新日: 2025.03.02
第4回:なぜコカ・コーラは女性を支援するのか?

    足立 直樹 (あだち・なおき)

    こんにちは、サステナブルビジネス・プロデューサーの足立直樹です。第4回の今回は、前回に続き世界で最も有名なブランドと言うべきコカ・コーラを取り上げたいと思います。

    前回はコカ・コーラが「前向きでハッピーな気持ちを味わえるひとときをもたらすこと」をミッションとして、それに従った活動を世界中で広げていることをご紹介しました。もちろんこれだけでも十分に素晴らしいのですが、一方でこれのどこがサステナビリティなのかと思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。

    人が幸せを感じられるということはそれだけでサステナブルですし、人がそう感じられるような状態こそサステナブルな社会であると私は思います。しかし、一般にサステナビリティの活動と言った場合、それを実現する様々な条件を満たすような活動を企業が行なうことを期待する方が多いかもしれません。そこで今回は、コカ・コーラがいわゆるサステナビリティの領域においてどのような活動をしているのか、それをご紹介したいと思います。

    実はコカ・コーラのグローバルのウェブサイトを見ると、コカ・コーラはSDGs(持続可能な開発目標)の17の目標のそれぞれに対して何らかの貢献をしているということがわかります。

    しかしその中でも特に自分たちの事業と関係が深い3つのテーマに注力しています。3Wと呼ばれるこの3つのテーマは、Well-being(健康)、Women(女性)、Water(水)の3つです。

    ちなみにこれは同社のサステナビリティのフレームワークである、me(個人)、we(地域社会)、world(環境) という3つのレベルにそれぞれ対応しています。つまり、個人については健康で、地域社会には女性で、環境には水で貢献するというわけです。

    それでは、なぜこの3Wなのでしょうか? コカ・コーラは飲料会社ですから、水に注目するのはごく当然のことであり、わかりやすいと思います。健康に注力するのも、飲料会社としてお客様の健康や生活習慣について積極的に考える必要があることからよく理解できます。それでは、女性に注力するのは何故なのでしょうか?

    実はコカ・コーラのサプライチェーンをよく見てみると、様々な場所でたくさんの女性が働いていて、女性の力なしではコカ・コーラのサプライチェーンが機能しないということがまず挙げられるでしょう。

    ところがSDGsの目標5に「ジェンダー平等を達成し、すべての女性および女子のエンパワーメントを行う」というものがあることからもわかるように、世界中の多くの地域において、女性は差別を受けたり、男性に比べて不利な状況に置かれていることが多いのです。

    そこでコカ・コーラは、女性の経済力の向上を支援するプログラムを提供することを通じて、世界中で2020年までに500万人の女性を支援し、サステナビリティの向上に貢献しようと考えているのです。同社はこのプロジェクトを「5 by 20」(5 million by 2020)と呼んでいます。

    具体的にはどのような支援をしているのでしょうか? それがまたなかなかユニークなのです。一例として、まずはこの動画をご覧ください。

    この動画は、インドのまだ開発があまり進んでいない、どちらかと言えば貧しい地域にあるコカ・コーラを売る小さなお店が舞台になっています。コカ・コーラはこのお店にソーラーパネルを導入し、それで冷蔵庫を使えるようにしました。冷たいコカ・コーラを売ることができるようにしたのです。商売上有利になるのはもちろんとして、なぜこれが女性の支援になるのでしょうか? あなたは不思議に思ったかもしれませんね。

    このお店は、動画に出てくる女性が切り盛りしています。冷たく冷えた飲み物を売れば、売り上げは上がり、彼女の収入も増えるでしょう。しかし収入が増えたとき、男性であればそれでお酒を飲んでしまったり、賭け事に使ったりと浪費されてしまうことも多いのです。しかし女性は多くの場合、それを子供の教育に費やすのです。

    したがって女性を経済的に支援することは、単にその女性が経済的に自立できるようにすることや、その女性の家族の暮らし向きを良くするだけではなく、子供たちの将来をも明るくするのです。そのような効果を狙うためにも、男性ではなく女性を支援した方が効率が良いと言うわけです。

    しかもこの太陽光発電の効果はそれにはとどまりません。太陽光発電のおかげで、近所の人たちは携帯電話を充電しに、あるいはLEDランタンの明かりを求めて、このお店に集まるようになります。お店が、地域の拠り所になるのです。売り上げが増えるだけでなく、この女性は地域の拠り所である店を経営してるということで、地域の人たちから信頼も得ることでしょう。

    こうしたことを通じて、自分の家族の暮らし向きだけではなく、子供たちの将来、そして地域全体の持続可能性も高まっていくのです。

    しかし、もちろん世界中のどこでも同じことが求められているわけではありません。ですのでコカ・コーラによる女性支援のプログラムは、地域によって内容は異なります。

    たとえば、フィリピンの活動はこんな風です。

    フィリピンには、いわゆるスラム街が多くあり、そこに住む人々は仕事にも恵まれず、ゴミ捨て場からゴミを拾い集めてなんとか糊口を凌いでいます。そうした女性たちに地元のNGOはまず、商品の作り方を教えたのです。

    コカ・コーラの空き缶には限らないでしょうが、空き缶のプルリングを使ってアクセサリーやバッグを作る方法を教えたのですね。この商品を見出したコカ・コーラは、リサイクルしたプルリングのアクセサリーを世界に紹介しました。カラフルなデザインのアクセサリーは大変な人気となり、これを作る女性たちは新たな、そして安定した収入源を得ることに成功しました。彼女たちの楽しそうな表情を見れば、それがどれだけ意味のあることかわかるでしょう。

    このようにそれぞれの地域の事情やニーズにあった形で、また自社のサプライチェーンとも関係がある形で、コカ・コーラは世界中で2020年までに500万人の女性の経済的自立を支援しているのです。

    もちろんこれは開発途上国に限られたものではありません。日本でも行われています。ちなみに日本のプログラムでは、同社の製品の原材料である農産物を作る女性の支援として、持続可能な農業の研修会などを行なっているそうです。

    それでは、水や健康に関するプログラムは…それは、またどこか別の機会にご紹介しましょう。

    written by

    足立 直樹 (あだち・なおき)

    サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー 株式会社レスポンスアビリティ代表取締役

    一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ理事・事務局長。東京大学・同大学院で生態学を学び、博士(理学)。国立環境研究所とマレーシア国立森林研究所(FRIM)で熱帯林の研究に従事した後、独立。2006年にレスポンスアビリティを設立し現在に至る。2008年からは企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長も兼務。

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