![]() |
甲州市勝沼の風景 (2014年12月 筆者撮影)
[G☆Local Eco!第4回(2)]勝沼もワイナリーだけではなく、こうした景観を楽しむワインツーリズムとこれを支える観光ボランティア、これに呼応して景観条例をつくりワイン・リゾート構想を展開する行政、地元食材をつかったレストランや古民家をリノベーションした宿泊施設などの民間の事業参入など、複合的な連携により、個性的で持続的な地域づくりが始まっている。グローバル・ニッチが求められる時代には、その狭さと深さの魅力こそが世界中から顧客を惹きつけ、結果として広い世界市場を形成するのだ(図表2参照)。
図表2)グローバル企業とグローバル・ニッチ企業の市場獲得 筆者作成
![]() |
さらには、社会的課題を主軸として企業活動を再構築する「Social Out」も考えられるであろう。高齢化、少子化、消滅可能性都市、温暖化etc.と、これらはすべてがソリューション課題であり、ニーズの顕在化であるとも考えられる。これをどのようなビジネス・デザインで応え得るのかが問われている。これらの解決しようとしているNPOやNGOの声に徹底的に耳を傾け、解決策を絞り出すのもSocial Outと言えよう。
様々な事業領域を持っている大企業こそ、Social Outに面として対応して事業参入ができる可能性がある。事業のSeedsからProduct Out的に広がった大企業の事業部体制を、Social Outの観点から事業再編成できる機会とも考えられるだろう。日立、東芝、三菱電気などの総合電機メーカーは、街の社会インフラから情報システム、各家庭での家電に至るまで私たちの生活者を囲んでおり、Social Outとのタッチポイントを活かせるはずだ。
自動車メーカーや公共交通機関は、自動運転のみならず、ヒトやモノの移動に関わるすべての活動をどのように効率的に安全にアレンジメントできるかの生活動線のデザインが勝負だ。これらは地域課題解決を事業目的に取り込むことで、総合的にPartnering(連携)を組むこととなるだろう。
または、IT関連の企業が企画して、ITを使ってプログラマーやクリエイター、デザイナーらが集い、社会問題解決を提案するハッカソン(Hackathon:Hack+Marathon)というイベントが各地で開かれている。昨年、富士通が企画し、高知県をいかにブランディングするかがテーマの1泊2日のイベントを見学した。高知県の抱える課題を県庁が説明し、この要望にクリエイターたちが提案していくというSocial Outなイベントであった。
もちろん不確定な未来への投資である限り、事業ポートフォリオを確立し、今日の糧を稼ぐ収益事業と、明日の糧をつくるSocial In事業やSocial Out事業とをバランスよく組み合わせていることが企業としては必要だろう。

青木 茂樹 (あおき・しげき)
サステナブル・ブランド国際会議 アカデミック・プロデューサー 駒澤大学経営学部 市場戦略学科 教授
1997年 慶應義塾大学大学院博士課程単位取得。山梨学院大学商学部教授、 University of Southern California Marshall School 客員研究員、Aalborg University Business School 客員研究員(2022年4月〜2024年3月)などを歴任。 多くの企業の新規事業の立ち上げやブランド構築に携わる。地方創生にも関わり、山梨県産業振興ビジョン策定委員、NPOやまなしサイクルプロジェクト理事長。人財育成として、私立大学情報教育協会FD/ICT活用研究会委員、経産省第1回社会人基礎力大賞を指導。やまなし大使。