• 細田 悦弘
  • コラム
  • 公開日:2016.09.16
  • 最終更新日: 2025.03.02
第5回: ビジネスと社会課題解決の両立(1)

    細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

    ~ ビジネスと社会課題解決を両立させ、「らしさ」で競争優位を創り出す!待望の戦略メソッド ~

    経済的価値と社会的価値は『トレード・オン』!

    今回のテーマは、昨今脚光を浴びている「事業による社会課題解決」です。

    「CSRブランディング」の独自のフレームワーク(3つの輪の図)における、青と緑の重なった「2番」のゾーンです。「事業活動」×「CSR(現代社会からの期待)」を意味し、価値共創型CSRやCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)と称されるコンセプトとなります。

    経済的価値を創出しながら、社会的ニーズに対応することで社会的価値も創出するというアプローチです。とかくCSRは、事業の負荷やコストといったトレード・オフで認識されがちですが、「先進のCSR」で高次に捉えれば、『トレード・オン』が成立します。

    時代が求める『いい感じの企業』

    CSR元年が2003年と言われますが、当初は、CSRに対して、義務的・受動的に取り組む企業が散見されましたが、最近では、CSRを味方につけて競争力につなげている『いい感じの企業』が目立ってきました。反面、『今どき、そんなことをやっているのか。今どき、そんなこともやっていないのか』と酷評されてしまう企業が明白になってきました。後者に位置づけられますと、企業価値を毀損し、時に企業存亡の危機に陥ります。

    現代社会の『要請や期待』に応える

    社会的責任の国際規格 ISO26000における、グローバル標準の CSRの定義を確認してみると、「企業の意思決定と事業活動が、社会や環境に及ぼす『影響』に対する責任」とされています。企業がこの世に存在し、事業を営めば、地球や社会に必ず影響を及ぼします。その『影響』 には、ポジティブとネガティブ、正の影響と負の影響があります。この『影響』が、キーとなります。

    まずは、自社のビジネスが人権・労働、消費者や環境などに悪影響を与えるのを防ぎ、緩和することが要請されています。その上で、自社の強みを活かした社会課題の解決などの良い影響は、いっそう醸し出してほしいと期待されている、ということがポイントです。

    これにより、企業と社会の共通価値の創造が可能となります。『要請』に対応するのが「基本的CSR」、そして、『期待』に応えるのが「価値共創型CSR」や「CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)」と捉えることができます。ともすると、「CSRからCSVへ」という声が聞こえますが、まずは、自社の事業プロセスや製品・サービスが環境・社会に及ぼす影響に関わる責任である「基本的CSR」をきちんと担保し、その上で、事業を通じて社会課題を解決する「価値共創型CSR」に取り組むことが要諦です。

    今日、「基本的CSR」は、ビジネスのファンダメンタルズと言っても過言ではありません。前者はMust、後者はShouldといえましょう。CSRの眼目は、企業が「現代社会の要請や期待」に応えることにあります。それぞれ、端的には下記のとおりです。

    ・要請…やってもらっては困る。やってもらわないと困る ⇒ 基本的CSR
    ・期待…やってもらえたら、うれしい ⇒ 価値共創型CSR、CSV

    企業が『期待に応える』には、On Business とOff Businessの側面があり、いわゆる「社会貢献活動」は後者に位置づけられます。まだまだ経営層では、1990年代の米国由来のフィランソロピー文化に根ざした「企業市民」的な概念も根強く、「CSRとは社会貢献」という認識が多いようですが、先進のCSRにおいては、『本業における要請や期待への対応力』が求められています。

    CSRは、マーケティングそのもの

    企業には、先ずもってgoing concern、すなわち 『事業を継続させ、持続的に成長させていく』という社会的使命・責任があります。そのためには、『現代社会への対応力』を中核におき、時代にふさわしい形で存在意義を発揮することが至上命題となります。

    CSRの本質には、変わり行く現代社会の要請や期待にしなやかに応えるということがあります。まさに、マーケティングの真髄といえます。キヤノンマーケティングジャパングループでは、「CSRは、マーケティングそのもの」をキーメッセージとし、経済的価値と社会的価値を同時に実現するアプローチとして、「Business with CSR」というスローガンを掲げ、企業と社会の持続的な相乗発展を目指しています。

    written by

    細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

    公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師 一般社団法人日本能率協会 主任講師

    1982年 中央大学法学部卒業後、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン) 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や教育・研修機関等での講演・講義と共に、企業ブランディングやサステナビリティ分野のコンサルティングに携わる。ブランドやサステナビリティに関する社内啓発活動や社内外でのセミナー講師の実績豊富。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」を持ち味とし、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。 Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト、経営品質協議会認定セルフアセッサー、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。 ◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史 ◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、公益社団法人日本監査役協会「月刊監査役」(2023年8月号) / 東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。

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