• 山岡 仁美
  • コラム
  • 公開日:2016.08.22
  • 最終更新日: 2025.03.02
第2回: 高齢者を活かす好事例

    山岡 仁美(やまおか・ひとみ)

    女性活躍推進に注力も注目も偏りがちな、ダイバーシティ推進ですが、もちろん性別だけに取り組めばいいという訳ではありません。年齢・国籍・雇用形態・障害の有無を問わず、すべての人材が最大限の力を発揮するような環境を提供し、組織の力を高める努力が真のダイバーシティです。その中で、高齢者を活かし組織の活性や発展につなげた事例をご紹介しましょう。

    これから紹介する企業は、2013年経産省ダイバーシティ経営企業10選のベストプラクティスにも選定されたものです。しかし、決して大手や上場企業ではありません。私たちのごく身近に、ダイバーシティの鍵があることに、改めて気づく好例です。

    会社が期待をかけることにより、高齢者従業員が力を発揮し、組織力強化

    A社では、定年(60歳)後に再雇用する従業員に対しては定年を設けていない。豊かな経験と技能・技術を持った高齢者が職場にいる方が、集団として自然なあり方であるという考えのためだ。現在では、60歳以上の高齢者が全従業員のうち1割以上を占めており、多くは定年前に担当していた仕事をそのまま継続して担当している。

    社内には、「60歳で一区切りし、後はのんびり補助的な仕事でも」という雰囲気はなく、むしろ高齢者の主体的な仕事への取り組みが社内を活性化させている面すらある。

    定年後に正規従業員から嘱託社員となった場合、実際に給料が下がる。それにもかかわらず、そこまで主体的に働く原動力は何か。キーワードは「期待」と言えそうだ。

    まず、定年近くになった従業員にも研修を実施している。その研修のひとつは「場所的自己発見研修」と呼ばれ、自身の性格や仕事ぶりを他者に指摘してもらい客観的に自身を見直し気づきを促す内容となっている。

    定年後の従業員へのカウンセリングも充実させている。時間と費用がかかっても一人ひとり丁寧に話し合う場を設け、会社としての期待を伝える。それと同時に、個人の望む職務内容とのすり合わせを行う。カウンセリングは毎年徹底して実施している。

    これらの他にも、工場等の技術部門では、ベテラン従業員と若手従業員でペアを組ませる等、技術・技能の伝承にも腐心している。

    高齢従業員自身が自主的に前向きな活動を実施している。1点目は「憲章」を創設し、高齢従業員の進むべき方向性を示し、高齢従業員全員の意識を高めようとしていること。主な内容としては自ら率先垂範で若手の手本となる行動をとることや、地域への社会貢献等で構成されている。実際の活動事例として、オジさんたちによる本社ビル周辺の掃除活動等がある。

    2点目は「知恵袋」と呼ぶ、高齢従業員の得意とする技術や事業分野を図表にまとめたものを社内のイントラネットに掲載していることが挙げられる。

    これらの取り組みにより、次のような成果が得られた。たとえば高齢従業員にとって、あらためて自身を見直すチャンスが生まれた。自身が長年培ってきた性格や習慣は修正するのが難しいものの、周囲への気配りやおざなりになっていた挨拶に変化が見られる等、あらためて奮起を促すことができた。同時に、組織のコミュニケーションの向上につながる効果が表れている。

    他にも、若手従業員が業務上の相談や質問をしやすくなり、社内のコミュニケーション促進の一助となっている。これにより若手従業員の意識やスキルも向上し、組織力が強化されている。

    written by

    山岡 仁美(やまおか・ひとみ)

    グロウス・カンパニー+ 代表取締役

    航空会社勤務を経て、人材派遣会社の研修企画担当に。その後、人材育成への意欲から、大手メーカー系列のコンサルティング会社に移り、人材育成に関する開発・販促・広報などのマネジャー職から企業研修部門の統括部長までを務める。1000社ほどのコンサルに携わった後、独立。ビジネスフィールドの豊富なキャリアで様々な人材や組織づくりと関わり続け、自身の出産・育児との両立での管理職・起業などの経験から、多様性を活かす着眼点が持ち味である。 コンサルタント、研修講師、講演と多方面で活躍中。そのテーマは「課題解決」「リーダーシップ」「アサーション」「ネゴシエーション」「キャリアデザイン」「ダイバーシティ」「リスクマネジメント」など幅広い。

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