• コラム
  • 公開日:2016.11.11
  • 最終更新日: 2025.03.02
いま静かに進む「ESG革命」
    • 森 摂

    株式会社オルタナ/オルタナ総研は2015年12月7日、「IR/CSR担当者のためのESG講座」を開きました。ゲストスピーカーには社会的責任投資フォーラム最高顧問・サステナビリティ日本フォーラム代表理事の後藤敏彦さんをお招きしました。

    後藤さんは、これまで25年以上にわたり、環境、CSR、サステナビリティ、SRI(社会的責任投資)などの分野において、わが国で主導的な立場におられた方です。その発言内容は、実に衝撃的なものでした。いわく、「私が環境・CSR業界に関わってから25年の中で最大の変化が、これから起きようとしている」。それが「ESG革命」でした。

    CSR担当者には釈迦に説法ですが、「ESG」とは「環境・社会・ガバナンス」の3分野で、これら非財務情報を基準にした投資が「ESG投資」です。

    そのESG投資において、日本でエポックメイキングな出来事が3つ続きました。
    第1に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年9月、国連の「責任投資原則」に署名したことです。

    第2は、トヨタ自動車が2015年10月、2050年の新車CO2排出量を90%削減するという「環境チャレンジ2050」を策定し、発表したことです。

    世界最大規模の自動車メーカーが、「CO2の90%削減」という、これまでにない大胆な目標を掲げたことで、日本や世界の自動車メーカーや部品メーカーが追随する可能性は高いです。このトヨタの発表も、ESG投資を加速させる大きな動きです。

    第3のファクトは、SRIやESG投資で腰が重かった国内生保大手が、ここにきてようやく、ESG投資に動き始めたことです。

    第一生命保険も国連原則への署名を決めたほか、太陽生命は株式や不動産に投資する際にESGの各項目を点検、点数が低ければ投資を見送ることにしました。このほか、明治安田生命は300億円規模のESGファンドを立ち上げたほか、日本生命は使途を環境関連に限るグリーンボンドへの投資が500億円を超えました。

    では、投資を受ける側の企業はどう動けばよいのでしょうか。大きくは、

    1)ESG情報の開示
    2)投資家との対話
    3)経営における中長期(10-50年)視点の導入
    4)上記に基づいたトップ・コミットメントーーが挙げられます。

    1)のESG情報の開示は、「原則主義」(形式主義ではない)であり、情報開示の価値判断は企業に委ねられるといいます。この点が日本企業にとって難しいところですが、まずは「ガバナンスコード」に基づく情報開示(73項目)が望ましいと思われます。そして、中長期的視点に基づいた長期的なゴールを定めることが重要です。

    この「ゴール」については、日本語で言うところの「目標」ではなく、長期的な方向性を指し示すことが望ましいと後藤氏は指摘しています。日本語での「目標」は英語では「ターゲット」と表現され、必達目標のニュアンスがありますが、ゴールは方向性を指し示すものです。

    ESG情報の開示については、次回以降でもさらに詳しく述べていきたいと思います。

    written by

    森 摂(もり・せつ)

    株式会社オルタナ代表取締役社長・編集長。

    東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。訳書に、パタゴニア創業者イヴォン・シュイナードの経営論「社員をサーフィンに行かせよう」(東洋経済新報社、2007年)がある。一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事。特定非営利活動法人在外ジャーナリスト協会理事長。

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