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  • 公開日:2016.06.28
  • 最終更新日: 2025.03.21
銀座とともに「ソーシャル」な発信を -ギンザのサヱグサ
    • 今井 麻希子

    長野県栄村のコシヒカリ「小滝米」をワインの瓶に詰めたギフト商品

    老舗子ども服ブランド「ギンザのサヱグサ」は、店舗を活用したエコ活動から、大自然に囲まれた農村地域での子ども向け自然体験プログラムの展開まで、子ども服ブランドならではの強みを活かしたCSR活動を展開している。「銀座を、サステナブルでソーシャルな街という新しいブランドとして発信したい」という想いもあり、ウェブメディア「Ginza Official」で銀座企業のCSR情報の発信にも携わっている三枝亮・ギンザのサヱグサ社長に話を聞いた。

    子どもの未来に向き合うことは、子ども服を扱う企業の使命

    CSRとは何か。

    友人との議論や勉強会への参加を通じて、三枝社長は「将来を担う子供たちのために大人の責任として社会課題を解決すること」という答えに辿り着いた。

    「子ども服専門店として、子どもたちに環境の大切さを教えていきたい」

    2012年に「Earth for Children」というコンセプトを提唱し、「SAYEGUSA GREEN PROJECT」の立ち上げと、店舗を活用した「Thinking Green」キャンペーンに着手した。

    グリーン電力を導入し、緑で溢れた空間を演出して、子ども向けの環境ワークショップを開催した。さらに、特設サイトを開設し、森に住む小さなふくろう王子を主人公としたウェブ絵本を展開して、親子で環境について考えるきっかけを提供。2013年には、CSR活動を事業に継続的に位置づけるために、売り上げの1%を環境保全活動に充てる「1% for GREEN」を打ち出した。

    「本物」を届けることへのこだわり

    SAYEGUSA Green Magicサマーキャンプに参加した子ども達

    2014年には活動の場を社外に広げ、子ども向け自然体験プログラム「SAYEGUSA Green Magic」をスタートした。フィールドとして選んだのは、長野県栄村。2011年3月12日に発生した長野県北部地震の被災地でもあるこの地での、地域復興に取り組む地元の人々との出会いが、きっかけとなった。

    「栄村は、原風景の残る、本物の里山暮らしが体験できる場所。本物にこだわるサヱグサの想いにも通じるものを感じました」

    親と離れ、豊かな自然と向き合い、地元のおじいちゃん、おばあちゃんたちから里山での暮らしを学ぶ経験は、子どもたちに自立心や、創造性、協調性を育むことにつながる。2016年からは、親子を対象にした田植えや稲刈りの体験プログラムも展開している。

    さらに、この地域の産業復興にも貢献したいと、自社の販売ノウハウを活かして、地域に伝わる希少なコシヒカリ「小滝米」を再ブランディングして、ワインの瓶に詰めたギフト商品として展開した。ストーリーある商品への反響は大きく、2014年のテスト販売では1週間で1000本が完売、2015年には「Kotaki Rice & Future」を立ち上げて、本格的な販売を展開するに至った。

    サヱグサを通じて小滝を訪れた人の多くがファンとなり、交流人口の増加につながった。地域との絆も着実に育まれている。

    CSR活動がもたらした、新たなブランド価値

    こういった活動は次第にサヱグサのブランド価値の向上にもつながった。

    「驚いたことに、スタッフの採用面接では必ずといっていいほど、CSR活動についての質問を受けるようになりました」

    今後はさらに、社員が本業を通じて日常的にCSRに携われる場を見つけたいと考えており、三枝社長は現在、店舗を活用した子ども服リユースの仕組み作りを検討している。

    「高品質でつくりの良いサヱグサの服は長持ちするため、昔は、家族や親戚の間でリユースされていましたが、現在は少子化が進んでいます。例えば、まだ利用価値があるのに行き場のない子ども服を引き取り、何度かのリユースを経て土に還るまで活用する仕組みを作る。そうすることで、「もったいない」という気持ちの軽減だけでなく、環境負荷を減らすことにもつながると考えています」

    銀座を、本物の「豊かさ」を発信する街に

    三枝社長が携わる、銀座の公式ウェブサイト「Ginza Official(ギンザオフィシャル)」では、CSR活動を伝えるコーナー「銀座×CSR」を開設し、これまで20社以上の取り組みを紹介してきた。

    「銀座は、日本を代表する文化の街。日本の誇りであり続けて欲しいと思っています。そのためには、華やかさや豪華さに加えて、これからは『環境』『ソーシャル』といった視点を、街づくりに盛り込んでいくことも必要です」

    「銀座の街は、ずっと変化し続けてきた「攻める街」です。銀座にある何千もの店が力を合わせて行動を起こせば、とても大きな力が生まれ、そのような活動から、新しい銀座の姿を思い描いていきたいです」

    三枝亮(さえぐさ・りょう)
    1869年創業の子供服の名店、ギンザのサヱグサ代表取締役社長。
    銀行員を経て29歳でサヱグサに入社。2011年、5第目社長に就任。本業のかたわら、今後の銀座を牽引する旦那衆のひとりとして、地域の活動にも積極的に携わる。

    written by

    今井 麻希子(いまい・まきこ)

    編集・ライター

    外資系IT企業等に勤務の後、2010年に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(CBD-COP10)にNGOの立場で参加したことを契機に、環境やソーシャルの分野に仕事の軸をシフト。生物多様性やSDGs、ダイバーシティをテーマに、インタビューや編集・執筆、教育プログラムの開発に携わる。また、オリジナルの手法を導入した対話型カウンセリング・セッションを手がけている。執筆協力に『希望をつくる仕事 ソーシャルデザイン』(宣伝会議)『シャプラニール流 人生を変える働き方』(エスプレ)等。鎌倉市在住。

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