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フロン類を用いた業務用の冷凍空調機器を使用する事業者が、機器から漏れたフロン類の量を国に毎年報告する制度が4月から始まる。機器の不良や劣化により無視できない量が漏洩しているためで、国は昨年4月に「フロン排出抑制法」を施行。世界的に気候変動対策が求められるなか、フロン類の製造から回収・破壊までを管理することで排出抑制を目指す。
報告の対象となるのは、機器から漏れたフロン類の量がCO2換算で年間1千トン以上の事業者。フロン類で500キロ程度に相当し、大型の小売店であれば数店で到達するとされる。
フロン類のうち、オゾン層を破壊するCFC(R12)、HCFC(R22)は「特定フロン」としてモントリオール議定書の規制対象となっている。CFCは1996年に全廃。R22も2020年に全廃予定だ。近年は特定フロンに代わる形で「代替フロン」(HFC)への切り換えが進む。
だが代替フロンも、特定フロンと同様に強力な温室効果を持つ。しかも冷凍空調機器の使用時に漏れる量が想定を上回ることが判明。その量は機器の廃棄時よりも使用時が多く、漏えい全体の6割に達することがわかった。
中でも使用時の漏えいが多いのは業務用の冷凍空調機器だ。経済産業省が2009年に実施した調査では、「別置型ショーケース」に充填した代替フロンが使用後約6年で抜け切ってしまった。業務用機器からの漏えい量が、20年にはCO2換算で2千万トン弱に達するとの予測もある。
「従来のフロン類規制はオゾン層保護が目的だったが、今後は温暖化防止が焦点となる。中長期的には冷凍空調機器の脱フロン化が目標。今ある機器は保守点検しながら使い続け、徐々に非フロン類使用機器に転換していくべきだ」
23日に環境省が都内で開いたフロン排出抑制法に関するセミナーで、群馬大学の西薗大実教授は漏えいフロン量報告制度の意義をこう語った。
フロン排出抑制法では、業務用の冷凍空調機器を使用する事業者に対して、3カ月に1回以上の割合で目視などによる簡易点検を義務付ける。専門知識を持つ者による定期点検も、一部を除き年1回以上行うよう求める。
これらの取り組みを通じて、国はCO2に換算した国内のフロン類使用見通し量を、現状の約5千万トンから25年までに3650万トンへと抑制する考えだ。
斎藤 円華(さいとう・まどか)