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  • 公開日:2017.05.21
  • 最終更新日: 2025.03.29
デロイト、プロボノでNPOと連携し社会課題を解決
    • 松島 香織

    「ソーシャル・イノベーション・パイオニア」プログラムの意義について語る デロイト トーマツ コンサルティングの 金山亮 執行役員

    「社会課題解決型イノベーション」を推進する金山亮・執行役員に聞く

    デロイト トーマツ コンサルティングは昨年、「ソーシャル・イノベーション・パイオニア」プログラム(SIP)を立ち上げ、特定の課題分野で高いビジョンを掲げ、社会課題解決が期待できる2団体をプロボノで支援した。支援は3~4ヵ月続き、コンサルタント2人がフルタイムで従事したという。積極的な社会課題への取り組み、NPO・NGOとの連携のあり方など、金山亮 執行役員に話を聞いた。(松島 香織)

     

    ―積極的に「社会課題への取り組み」にアプローチされていますが、その背景について教えて下さい。

    金山執行役員(以下、金山):コンサルティングファームとして経営者の課題を解決していくのが私たちの仕事ですが、従来からのビジネスの領域での課題解決だけに目を向けていても、根本的な経営のブレークスルーや革新は起きづらい時代になっていると思います。

    いまは、「社会課題解決」が企業に求められていることでもあり、そこから私たちが企業変革・事業転換のお手伝いをしなければ意味が無いのではないか。そう考え、「経営アジェンダ」の枠を超えた「社会アジェンダ」に注目して、戦略的に課題解決することを考えました。

    「社会課題解決」を推進する「エコシステム」を自腹でつくる

    ―「社会課題解決」につながる「エコシステムの創出」といった地盤づくりにも、注力されています。

    金山:ルール作りや政策形成など、官・学をも巻き込んだ「エコシステム」(生態系システム)を作りながら、企業を呼び込んでいきたいと考えています。何もないところに企業は入っていけませんから、収益が見込めるシステムが必要です。

    産業エコシステムがあれば、産官学民が連携し、ビジネスの枠が広がります。その結果、社会課題を解決できるような世界を作りたい。システムづくりは、当社が投資と割り切りやっていくべきことだと考えています。

    ―2011年の東日本大震災を受けて、近藤聡社長自らがソーシャル(社会課題の解決)に目に向けた、お聞きしています。

    金山:当時、私は在籍しておりませんでしたが、311をきっかけに、全社事業戦略のテーマになったと聞いています。ですが、社内でもその業務に携わっているコンサルタントでなければ、「社会課題の解決を当社でやる意味」が理解できません。社員に理解してもらうこと、求心力のある「社会課題への取り組み」の中のひとつとしてSIPがあります。

    社会課題解決には、ソーシャルセクターの強化が必要

    ―「ソーシャル・イノベーション・パイオニア」プログラム(SIP)について教えて下さい。

    金山:社会課題への取り組みの注力テーマである「Sustainability」と「Opportunity」からそれぞれ、「サプライチェーン全体を視野に入れた持続可能でエシカルな生産・消費の実現」と「女性、若者、外国人を含む多様な人々の就業・経済的自立支援」の2つを公募テーマとしました。対象はいずれかの分野に取り組んでいる非営利団体です。

    NPO独自の知見やノウハウが社会課題解決につながると考え、組織・経営基盤を強化するお手伝いをし、このプログラムを通じてともに特定の課題を解決する中長期的なパートナーを見つけ、課題解決を加速させることを目標にしています。

    ―「プロボノ」で支援していますね。

    金山:もともと当社では、CSRとしてNPO支援をプロボノで実施していました。SIPでもプロボノで実施していますが、それはあくまでも手法であり、「社会課題解決」が起点です。

    社会課題解決には、ソーシャルセクターの強化が必要です。NPOを組織的に強くすることで社会的インパクトとなり、消費者に声が届き、世論を作ることで、企業や行政を動かすきっかけになります。そうしてビジネスにつながればNPOの収益が上がり、社会的認知度は高まっていく。このサイクルが回っていけば、社会の本質が変わると思います。

    NPOとの関わり方も、プログラムが終了したらそれで終わり、というわけではありません。「For NPOからWith NPOへ」、つまり従来のプロボノよりもっと踏み込んで、NPOとの中長期的な関係を結び、私たちのクライアントとの連携が出来るような関係性を築きたいと考えています。

    SIPで若手社員が成長

    ―SIPを通じてコンサルタントの生産性が上がった等、組織としてプラスになったことはありますか。

    金山:SIPの対象となった各団体には3~4ヵ月の期間にコンサルタント2人が従事しました。従来のプロボノは限られた部署のみで実施していましたが、SIPでは取り組みの間口を広げるため、全社に参加を呼びかけました。コンサルタント2人はフルタイムでしたから、他の業務を抱えながら片手間にやったわけではありません。本業と同じスキームで進め、評価基準も一般業務と同様にしています。

    選定させていただいたNPOの代表者は、他社からの支援を受けたりして目が肥えています。経営者ですから、高度な要求もされます。そういう緊張感の中で仕事をしていくことはコンサルタントにとって、とてもチャレンジングだったようです。

    若手は特に、社会課題に対して敏感で、企業の目先の収益を超えたところで、社会に対して自分がどう関われるかを考えています。やりがいや貢献できた達成感から、次もやりたいと言っています。

    まだ、プログラムは1回目が終了したばかりですが、2、3回と実施し、参画する団体のすそ野を広げていきたいと考えています。今年は5月25日に公募を開始します。説明会は6月20日に予定していますので、NPOと企業との連携とは何なのか、関心のある方に広くご参加いただきたいです。

    interviewee
    金山 亮

    デロイト トーマツ コンサルティング執行役員

    ブランド、サステナビリティ、ビジネス主導の社会課題解決型イノベーションの促進に向けたコミュニケーションを統括する。

    written by

    松島 香織(まつしま・かおり)

    サステナブルブランド・ジャパン ニュースサイトの立ち上げメンバーとして参画。その後2022年12月から2025年3月まで、デスク(記者、編集)を務める。

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