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  • 公開日:2017.07.07
  • 最終更新日: 2025.03.21
SB国際会議2017デトロイト ハイライト(4)
    • ホープ・フリードマン

    消費者・インフルエンサー視点でグッド・ライフを再定義

    Raphael Bemporad Images credit: Albert Chau/Sustainable Brands

    「グッド・ライフを再定義する」。これはブランド広告のキャッチコピーでもなく、自己啓発本のタイトルでもない。これは、世界中で開催されるサステナブル・ブランド国際会議で3年間かけて話し合われ、取り組まれるテーマなのだ。(翻訳:寺町幸枝)

    では、一般的にどういう意味なのだろうか。どうすれば消費者は、このコンセプトに価値観を揺さぶられ、魅了されるのだろうか。

    サステナブル・ブランドと米世論調査機関ハリス・ポールは5月末、米国の消費者が「グッド・ライフ」にどのようなイメージを抱いているか調べた調査結果を公表した。「グッド・ライフ」について、そしてブランドが「グッド・ライフ」にどう貢献できるかについて調査した。

    調査は2つの手法を使って実施された。まずは定性的手法を取り、アメリカ人に「グッド・ライフ」を自分の言葉で定義して貰った。そして次に、定量的手法で、最初の方法で集めた言葉を重要だと思うもの順にランク付けして貰うよう1000人に調査をした。

    「グッド・ライフ」を再定義するために、二つの大きな課題を調査することから始めた。

    1)「グッド・ライフ」が消費者にとってどんな意味を持つかを再定義すること。そして、2)世界中のブランドがどのようにして3年間で「グッド・ライフ」を再定義し、リデザインし、実践していくのかを再定義した。

    どう「グッド・ライフ」は再定義されるか

    企業の平均寿命は短くなっている。S&P グローバル・レーティング500にランク付けされる企業の平均寿命を比較すると、1960年には60年だったものの、現在では12年だそうだ。さらに、消費者の動向に文化的シフトが起きており、外見的な魅力といった付帯的価値よりも信頼といった本質的価値を基準にしてブランドを選ぶ。消費は、マインドレスからマンドフルネスにシフトしているのだ。

    「グッド・ライフ」の捉え方は世代間で大きく変化している。調査対象者のうち71%は、「グッド・ライフ」の定義が親世代と比べて異なると答えている。また、45%が自分の子どもたちの世代とも異なると考えている。

    現在の世界で、「グッド・ライフ」を再定義する要素は4つある。覚えておいてもらいたいのは、これらの要素は年齢と支持政党によって異なるということだ。

    ・ バランスのとれた生活:シンプルさ、バランスがとれていること、健康、幸せ
    ・ 意味のあるつながり:人、コミュニティ、環境
    ・ パーソナルゴール:キャリア、教育
    ・ 経済的な自立:お金、そしてそれを楽しむ能力

    こうした要素は、人々がどう自己管理をし、どう働くかということに大きく影響している。「グッド・ライフ」を構成する要素として、「豊かさ」は優先順位として高くない。現代では、成功するということはお金を持っていることではないのだ。不安定な経済状況が続き、人々が目指すのは高い給与が得られる仕事ではなく、自分にとって価値ある仕事を見つけることなのだ。

    「グッド・ライフ」はブランドにとって絶好の機会

    では、米国の消費者が「グッド・ライフ」を送るために、ブランドは何ができるだろうか。消費者が求めているのは、自分たちの望みとビジネスのあり方が一致することだ。

    調査対象者のうち51%は、企業は消費者の「グッド・ライフ」を考えてビジネスを行っていると考えていると答えている。しかしながら、どの製品もサービスも「グッド・ライフ」を達成するレベルには達していないと65%の人が答えている。消費者も指摘するだけでなく行動すべきたと考えているが、どうすれば良いか分かっていない。

    チャンスは、事業を通して本物の価値を消費者に提供し、消費者の期待を実現することで生まれるのだ。本物の価値というのは、例えば心身ともに健康で、人と人とのつながりを生み出し、世界を良くするといったことを指している。

    「あるべき製品が消費者の手にはまだ届いていない。ブランドと消費者の関係は、目指すべき姿よりもずっと形式的なものだ。消費者が本当に望むものを形にすることで、ブランドが成長するチャンスはさらに増えるだろう」とパーカー氏は見解を示した。

    グローバルな視点で「グッド・ライフ」を再定義する

    BBMGとグローブスキャンも同じく、「グッド・ライフ」を再定義するために世界的調査を行った。BBMGのラファエル・ベンポラード氏は、支配的な対立構図が広がる世界情勢において、根本的なつながりを認識するものの見方が台頭してきていると話した。調査結果から、「グッド・ライフ」が個人や家族、そしてコミュニティの考えや望みを反映したものだということが分かった。

    今回の調査は、都市部に暮らす人にも地方に暮らす人にも行った。調査対象者数は16000人で、全員が「あなたにとって『グッド・ライフ』とは何か」という質問に回答している。

    グローブスキャンのクリス・コルター氏は、「グッド・ライフ」を構成する4つの要素を紹介した。

    ・ 健康であり、幸福であること
    ・ 経済的に安定し、良い仕事に就いていること
    ・ 意味のある人間関係を築いていること
    ・ 目的意識があること

    サステナブル・ブランドとハリス・ポールの調査結果に非常に似ていて、世界的にも、個人の安定と、人間関係、集団的なつながりなどが「グッド・ライフ」を構成する要素に挙がった。具体的に、ヨーロッパでは、バランスをとることと共に何かするということが重要な要素だった。ブラジルでは安定が必要不可欠な要素で、アフリカでは集団的な協力。メキシコでは、生活する上で必要なものがきちんとあることが選ばれた。米国では、自己自立。4つの要素は、文化の違いを超えて、どの地域でもランクインしているのだ。

    南アメリカ:・健康&幸福(40%)、経済的な安定(36%)、意味のある人間関係(12%)、目的意識(12%)
    アジア:・健康&幸福(33%)、経済的な安定(31%)、意味のある人間関係(19%)、目的意識(17%)
    ヨーロッパ:・健康&幸福(36%)、経済的な安定(36%)、意味のある人間関係(16%)、目的意識(13%)
    北アメリカ:・健康&幸福(33%)、経済的な安定(29%)、意味のある人間関係(19%)、目的意識(19%)

    では、地球上の多くの人が共通のものを求めているにも関わらず、なぜすんなり世界は良くならないのだろうか。何が問題なのだろうか。

    ベンポラッド氏は、資源問題や格差、差別や不平等などの社会的課題が信頼の欠如につながっていると指摘する。現代は、約束された安定がなく、人を気遣い支え合うことに疑問を持っている時代だ。

    そんな中で、人々の「グッド・ライフ」を実現するために企業やブランドができることは数えきれないほどある。「グッド・ライフ」を再定義する一環として、以下の方法で、ヒューマニティ(人間性)をブランドの根幹に置くべきだろう。

    1)意思決定の中心に人を置く(共感が大きな尊敬を生む。お互いについて、お互いの視点に立って考えよう)
    2)目的のある製品をつくる(製品の利益を増やすことよりも、高い目的を重視する。資源の有限性を理解した上で、「グッド・ライフ」を築き上げるためにブランドとしてできることは全力で行う)
    3)重要な課題に新たな視点を加える(消費者が重要と考える価値観に対して、ブランドが提供できることは山ほどある)
    4)全員で参加をする(世界で起きている問題は複雑で簡単に解決できるものではないが、すべての人が力を合わせ、人類の叡智によって問題を解決する必要がある。もっと色々な声を出し合おう)

    ベンポラッド氏は最後にこう付け加えた。

    「ブランドは、人によって、人のために作られたものだ。ブランドには、社会的・環境的な問題を解決するための重要な変化を起こす力がある。ブランドには今、『グッド・ライフ』の実現を妨げる障害を取り払うことが求められているのだ」

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