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  • 公開日:2016.07.06
  • 最終更新日: 2025.03.21
欧州から見た、日本のネオニコ系農薬規制緩和

    羽生 のり子 (はにゅう・のりこ)

    写真提供:UNAF Christel Bonnafoux

    2015年から、日本でネオニコチノイド系(以下、ネオニコ系と簡略)農薬の規制緩和が進んでいる。2015年5月には、クロチアニジンとアセタミプリドの残留基準値が大幅に緩和された。12月には新規にフルピラジフロンが承認され、今年6月には、チアメトキサムの残留基準値が緩和された。

    グリーンピースなどの環境保護団体は、「ネオニコ系農薬はミツバチの大量死を招く。ヒトの神経系統にも影響を及ぼす。規制緩和は、規制強化の世界の潮流に逆行している」と反発している。

    規制の厳しい国でも問題がある。欧州連合(EU)は、欧州食品安全機関(EFSA)の勧告を受け、2013年4月に、3種(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)を規制した。農家による使用の一部規制、これらの農薬で加工した種子の販売禁止、非農家の使用禁止である。

    しかし、規制を受けているのは春まきの穀物で、秋まきの小麦などの穀物は対象外。果樹の開花後の散布も対象外のため、全面禁止にしてほしいとの要求が欧州の市民団体から出され、120万人の署名が集まった。

    フランスの農家の反応は分かれている。若手農家の組合「青年農業者」は「全面禁止になると、他の農薬を空中散布しなければならないので、環境にとってより危険」と反対だ。養蜂農家も会員に多い「農民同盟」は、全面禁止に賛成だ。

    日本では白菜やホウレンソウなど、野菜に多く使われているが、フランスでは主に穀物と果樹に使用されており、野菜には少ない。欧州がより禁止の方向に向かえば、日本はますます世界の潮流から遠ざかるだろう。

    written by

    羽生 のり子 (はにゅう・のりこ)

    環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。

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